ケーキやプレゼント、そして家族との控えめなお祝い。
これらは多くの高齢者が思い描く70歳の誕生日の光景かもしれません。
しかしNASAの現役最年長の宇宙飛行士であるドナルド・ペティ氏は、国際宇宙ステーション(ISS)での7カ月間のミッションを終え、地球へと帰還する宇宙船の中で70歳の誕生日を迎えました。
彼の節目の年は、壮大な宇宙の旅とともに祝われたのです。
目次
- 70歳の誕生日に地球に帰還!
- NASAの現役最年長の宇宙飛行士「ドナルド・ペティ」
70歳の誕生日に地球に帰還!
2025年4月20日、ドナルド・ペティ氏はISSでの7カ月にわたる任務を終え、ロシアの有人宇宙船「ソユーズMS-26」に乗り込み、地球へ帰還しました。
この日は奇しくも彼自身の70歳の誕生日にあたります。
彼とともに帰還したのは、ロシア人宇宙飛行士のアレクセイ・オフチニン氏とイワン・ヴァグネル氏でした。
ソユーズカプセルは、モスクワ時間の午前4時20分(世界標準時午前1時20分)にカザフスタンのジェズカズガン近郊に着陸。
NASAが公開した映像では、小さなカプセルが朝日を背にパラシュートで降下する姿が捉えられていました。
こちらが実際の映像です。(音量に注意して、ご視聴ください)
地上では救助隊が待機しており、宇宙飛行士たちはカプセルから救出され、医療用の仮設テントへと運ばれました。
ペティ氏は、やや疲れた様子ではありましたが、親指を立ててグッドサインを見せ、無事をアピールしました。
NASAは声明で「帰還後としては想定内の状態で、健康状態も良好」と発表しています。
ペティ氏たちは今回のミッションで、地球を3520周し、総距離9330万マイル(約1億5000万キロメートル)を移動しました。
ISS滞在中には、水の浄化技術や、異なる条件下での植物の成長、微小重力下での火災挙動に関する研究を行いました。
今回の7カ月間の滞在は、NASA宇宙飛行士ブッチ・ウィルモア氏とスニ・ウィリアムズ氏が9カ月間ISSに滞在した記録には及ばないものの、長期間にわたる重要な科学研究ミッションとなっています。
ペティ氏はカザフスタンのカラガンダ市に移動した後、NASAの専用機でアメリカ・テキサス州のジョンソン宇宙センターに帰還する予定です。
NASAの現役最年長の宇宙飛行士「ドナルド・ペティ」
ドナルド・ロイ・ペティ氏は1955年4月20日、アメリカ・オレゴン州シルバートンに生まれました。
1978年にオレゴン州立大学で化学工学の学士号を取得し、1983年にはアリゾナ大学で博士号(化学工学)を取得しています。
大学卒業後、彼はロスアラモス国立研究所で科学者としてキャリアをスタートさせました。
そして1996年、NASAの宇宙飛行士候補に選抜され、本格的な宇宙飛行士の道を歩み始めました。
宇宙飛行士としてのキャリアも輝かしいものです。
2002年から2003年にかけて、第6次長期滞在クルーの一員として6カ月間ISSに滞在。
その間に2回の船外活動(宇宙遊泳)を成功させました。
また、自主的に”Saturday Morning Science(土曜の朝の科学)”という科学実験シリーズを行い、宇宙環境での科学普及にも大きく貢献しました。
さらに南極探査にも参加しており、隕石探査を目的に6週間南極大陸に滞在した経験も持っています。
彼の宇宙での総滞在時間は、これまでに累計18カ月以上に及んでおり、まさにベテラン宇宙飛行士と呼ぶにふさわしい経歴を誇ります。

今回、70歳という節目を宇宙で迎えたペティ氏の姿は、多くの人に勇気を与えるものでしょう。
年齢に関係なく挑戦を続ける姿勢、そして科学への揺るぎない情熱は、私たちに”挑戦することの素晴らしさ”を改めて教えてくれます。
宇宙という過酷な環境に挑み続ける彼の歩みは、これからも多くの人々の心に響き続けるはずです。
参考文献
NASA’s oldest active astronaut returns to Earth on 70th birthday
https://phys.org/news/2025-04-nasa-oldest-astronaut-earth-70th.html
Nasa’s oldest astronaut celebrates 70th birthday with return to Earth
https://www.theguardian.com/science/2025/apr/20/nasa-oldest-astronaut-don-pettit-celebrates-70th-birthday-with-return-to-earth
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部