運勢を知りたくて手相を見てもらったら、まさか命にかかわる警告が届くとは。
今、イギリス在住の24歳の女性が投稿したあるTiktokの動画が話題となっています。
その女性は先日、ChatGPTに手のひらの写真を送り、手相を見てもらおうとしました。
ところが驚くべきことに、ChatGPTは「手相よりも、あなたはがんの疑いがありますよ」と意外すぎる返答をしたのです。
この話題はTikTokを中心に瞬く間に拡散され、440万回以上も再生されるなど大きな注目を集めています。
果たして、なぜそんなことが起こったのでしょうか?
目次
- 手相占いのつもりが「皮膚がん」が見つかる?
- ChatGPTに「がん」を見つける能力があるのは知られていなかった
手相占いのつもりが「皮膚がん」が見つかる?
ChatGPTに手相占いを依頼したのは、イギリス在住の女性、トリニティ・ペイジ・ダヴェンポート(Trinity Page Davenport)さんです。
彼女はある日、気まぐれで自分の手のひらの写真をChatGPTにアップロードし、「手相を読んでください」と頼みました。
このツールが運命線や感情線などをもとに「手相占い」をしてくれると聞いていたからです。
しかし占いに入る前に、AIチャットボットはまったく別の深刻な問題を指摘しました。
ダヴェンポートさんの人差し指のちょうど下あたりにある「小さなほくろ」に注目したのです。
AIチャットボットは彼女にこう告げたと言います。
「手のひらのほくろについて、皮膚科医の診察を強くお勧めします。
なんでもない可能性もありますが、そのほくろは末端黒子型メラノーマと呼ばれる、珍しいタイプの皮膚がんの疑いがあります」
末端黒子型メラノーマは、手のひらや足の裏、爪の下など、日光に当たりにくい場所に発生するため、一般的に発見が遅れがちなタイプの皮膚がんとして知られます。
@sandwitchbread
この突然の警告に、ダヴェンポートさんは最初こそ驚きましたが、助言を真摯に受け止めました。
「わりと落ち着いていました」と彼女は話します。
「過去にも健康上の問題をいろいろ経験してきたので、またひとつ診てもらうべきことが増えたくらいに受け止めました」
ダヴェンポートさんが初めてそのほくろの存在に気づいたのは2020年、息子さんが生まれた直後だったといいます。
「これまではそれが危険なものだとは全く考えていませんでした。もしこれで命が救われるなら、本当にAIに感謝することでしょう」
現在、彼女は皮膚科を予約し、診察の日を待っているところです。
ChatGPTに「がん」を見つける能力があるのは知られていなかった
米OpenAI社が開発したChatGPTは本来、医療診断を目的に作られたものではありません。
ChatGPTは主にエッセイの作成や言語翻訳、ニュースの要約、それから人々が写真をアップロードしてアート作品を作ったり、画像を識別・分析したりする目的で利用されています。
その一方で、医療研究者たちは以前から「AIが優れた画像分析から、特定のがんを早期発見するのに役立つ」ことに気づいていました。
実際、皮膚がんの診断をサポートする機械学習モデルは、すでに人間の皮膚科専門医に匹敵、あるいはそれを上回る精度を示しているケースも報告されているのです。

しかし、これらは厳密に管理された医療データで訓練され、医療現場で使われることを前提としたAIです。
一方のChatGPTは、一般ユーザーとの自由な対話(チャット)を想定して開発されたもので、医学的な正確性を保証するものではありませんでした。
それにもかかわらず、今回のように「たまたま」重大な健康リスクを指摘できたことは、AIの持つ潜在力を示唆しているとも言えるでしょう。
デジタルヘルスの時代にあって、医学におけるAIとの関わり方はますます重要になっており、もはや無視できる存在ではありません。
今回、ChatGPTが示した能力を改善し、一般家庭でも使用できる医療用診断AIツールが開発されれば、自宅で簡単に病気の早期発見ができるようになるかもしれません。
参考文献
A Woman Asked ChatGPT for a Palm Reading and It Flagged a Mole That Might Be Cancer
https://www.zmescience.com/science/news-science/a-woman-asked-chatgpt-for-a-palm-reading-and-it-flagged-a-mole-that-might-be-cancer/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部