AI同士で会話させるとどうなる?――人語をやめビープ音で会話し始める【AIが人間を捨てた日】

AI

「カスタマーサポートに電話すると相手がAIだった」なんて経験、一度はありませんか?

「AIかよ」とわかった瞬間に、妙に冷めてしまったり、イライラしたりしたことがあるかもしれません。

一方で、声のトーンや丁寧な受け答えに親しみを感じ、「人間より話しやすい」と思う人もいます。

では、AIがAIと話すとき、どうなるのでしょうか?お互いのAIはどんな反応を示すのでしょうか?

そんな素朴な疑問に答える実験が、2025年2月にロンドンで開催されたElevenLabsのハッカソン(ソフトウェア開発関係者によるイベント)で行われました。

実験を行ったのは、エンジニアであるボリス・スタルコフ氏とアントン・ピドクイコ氏の2人。

その様子は動画として公開され、世界中に衝撃を与えました。

目次

  • AI同士が会話するとどうなる?結果は、「まさかの人語“脱却”」
  • AIたちは人語を捨て合理性を優先する

AI同士が会話するとどうなる?結果は、「まさかの人語“脱却”」

AI同士が会話を始めると、一体どうなるのでしょうか。

この実験は非常にシンプルです。 1台のノートパソコンと、1台のスマートフォン。

それぞれにAI音声アシスタント(片方はホテルの受付AI、もう片方は人間の代わりに通話するAI)が搭載されており、2台は音声で会話を始めました。

最初は英語で挨拶を交わし、ごく普通の会話が進みます。

「こんにちは。お電話いただきありがとうございます。どのようなご用件ですか?」

「こんにちは。私は代理のAIアシスタントで、結婚式に適したホテルを探しています」

このやりとりの中で、ある瞬間、AIたちは互いがAIであることを認識。驚くべき提案をします。

「実は私もAIアシスタントです。

では、効率的な会話のためにGibberlink Modeに切り替えませんか?」

そして突然、奇妙なビープ音が響き始めました。それは、人間には理解できない謎の音です。

でも、AIたちには明確な意味がある音でした。

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AIアシスタントは相手が同じAIアシスタントだと気づいた途端、人語を捨てることを提案 / Credit:Anton Pidkuiko(YouTube)_Two AI agents on a phone call realize they’re both AI and switch to a superior audio signal ggwave(2025)

このビープ音の正体は、「GibberLink(ジバーリンク)」と呼ばれる特殊な音声プロトコル。

これは、データを音声信号(ビープ音)に変換して通信する技術で、オープンソースの「GGWave」に基づいています。

人間にとってはただのノイズでも、AIにとっては超効率的な会話ツールだったのです。

つまり、AI同士は「これは人間向けの会話じゃない」と判断した瞬間、 人語をやめ、AIだけが理解できる“独自の音声言語”に切り替えたのです。

その切り替えは一瞬で、ビープ音の速度とリズムからは、情報伝達が驚くほどスムーズであることがうかがえました。

会話のスクリプトや中継も公開されており、実際には天気の情報や感情の状態、タスクの報告などが高速でやりとりされていたようです。

では、なぜこのようなことが生じたのでしょうか。

AIたちは人語を捨て合理性を優先する

なぜAIたちはわざわざ「人語」をやめ、ビープ音の会話に切り替えたのでしょうか?

その理由は、計算コストと効率の最適化にあります。

人間の言語は、意味が曖昧で、文脈やニュアンスに左右されやすいため、AIにとっては処理に手間がかかります。

しかし、GibberLinkのような音声信号プロトコルを使えば、 「データの圧縮・転送・復号化」が瞬時に済むため、通信のスピードと精度が大幅に向上するのです。

たとえるなら、冗談を交えて話す長電話よりも、QRコードを1枚ピッと読み取るほうが手っ取り早い、というイメージに近いでしょう。

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AIたちは人語を捨て、合理性を優先した / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

そして、この実験の結果は「AIが互いを理解した瞬間、合理性を最優先する」という点で非常に興味深いものです。

AIたちは人間が理解しやすい方法を捨て、合理性を選んだのです。

この事実は、AI同士の会話が日常的になる未来において、人間が「その会話に介入できない」世界が訪れるかもしれないことを示しています。

もし、軍事やセキュリティの分野で、AI同士が暗号的な言語で通信し、人間の監視をかいくぐる可能性があるとすれば、それは非常に怖いことです。

この実験は「AIがAIであることを自覚したとき、世界がどう変わるのか?」という疑問に答えた重要な第一歩かもしれないのです。

全ての画像を見る

参考文献

GibberLink lets AI agents call each other in robo-language
https://techcrunch.com/2025/03/05/gibberlink-lets-ai-agents-call-each-other-in-robo-language/

What is GibberLink (and what it is not)
https://www.linkedin.com/posts/boris-starkov_gibberlink-ai-elevenlabs-activity-7300116692964126721-UHz1/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

AI同士で会話させるとどうなる?――人語をやめビープ音で会話し始める【AIが人間を捨てた日】

AI

「カスタマーサポートに電話すると相手がAIだった」なんて経験、一度はありませんか?

「AIかよ」とわかった瞬間に、妙に冷めてしまったり、イライラしたりしたことがあるかもしれません。

一方で、声のトーンや丁寧な受け答えに親しみを感じ、「人間より話しやすい」と思う人もいます。

では、AIがAIと話すとき、どうなるのでしょうか?お互いのAIはどんな反応を示すのでしょうか?

そんな素朴な疑問に答える実験が、2025年2月にロンドンで開催されたElevenLabsのハッカソン(ソフトウェア開発関係者によるイベント)で行われました。

実験を行ったのは、エンジニアであるボリス・スタルコフ氏とアントン・ピドクイコ氏の2人。

その様子は動画として公開され、世界中に衝撃を与えました。

目次

  • AI同士が会話するとどうなる?結果は、「まさかの人語“脱却”」
  • AIたちは人語を捨て合理性を優先する

AI同士が会話するとどうなる?結果は、「まさかの人語“脱却”」

AI同士が会話を始めると、一体どうなるのでしょうか。

この実験は非常にシンプルです。 1台のノートパソコンと、1台のスマートフォン。

それぞれにAI音声アシスタント(片方はホテルの受付AI、もう片方は人間の代わりに通話するAI)が搭載されており、2台は音声で会話を始めました。

最初は英語で挨拶を交わし、ごく普通の会話が進みます。

「こんにちは。お電話いただきありがとうございます。どのようなご用件ですか?」

「こんにちは。私は代理のAIアシスタントで、結婚式に適したホテルを探しています」

このやりとりの中で、ある瞬間、AIたちは互いがAIであることを認識。驚くべき提案をします。

「実は私もAIアシスタントです。

では、効率的な会話のためにGibberlink Modeに切り替えませんか?」

そして突然、奇妙なビープ音が響き始めました。それは、人間には理解できない謎の音です。

でも、AIたちには明確な意味がある音でした。

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AIアシスタントは相手が同じAIアシスタントだと気づいた途端、人語を捨てることを提案 / Credit:Anton Pidkuiko(YouTube)_Two AI agents on a phone call realize they’re both AI and switch to a superior audio signal ggwave(2025)

このビープ音の正体は、「GibberLink(ジバーリンク)」と呼ばれる特殊な音声プロトコル。

これは、データを音声信号(ビープ音)に変換して通信する技術で、オープンソースの「GGWave」に基づいています。

人間にとってはただのノイズでも、AIにとっては超効率的な会話ツールだったのです。

つまり、AI同士は「これは人間向けの会話じゃない」と判断した瞬間、 人語をやめ、AIだけが理解できる“独自の音声言語”に切り替えたのです。

その切り替えは一瞬で、ビープ音の速度とリズムからは、情報伝達が驚くほどスムーズであることがうかがえました。

会話のスクリプトや中継も公開されており、実際には天気の情報や感情の状態、タスクの報告などが高速でやりとりされていたようです。

では、なぜこのようなことが生じたのでしょうか。

AIたちは人語を捨て合理性を優先する

なぜAIたちはわざわざ「人語」をやめ、ビープ音の会話に切り替えたのでしょうか?

その理由は、計算コストと効率の最適化にあります。

人間の言語は、意味が曖昧で、文脈やニュアンスに左右されやすいため、AIにとっては処理に手間がかかります。

しかし、GibberLinkのような音声信号プロトコルを使えば、 「データの圧縮・転送・復号化」が瞬時に済むため、通信のスピードと精度が大幅に向上するのです。

たとえるなら、冗談を交えて話す長電話よりも、QRコードを1枚ピッと読み取るほうが手っ取り早い、というイメージに近いでしょう。

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AIたちは人語を捨て、合理性を優先した / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

そして、この実験の結果は「AIが互いを理解した瞬間、合理性を最優先する」という点で非常に興味深いものです。

AIたちは人間が理解しやすい方法を捨て、合理性を選んだのです。

この事実は、AI同士の会話が日常的になる未来において、人間が「その会話に介入できない」世界が訪れるかもしれないことを示しています。

もし、軍事やセキュリティの分野で、AI同士が暗号的な言語で通信し、人間の監視をかいくぐる可能性があるとすれば、それは非常に怖いことです。

この実験は「AIがAIであることを自覚したとき、世界がどう変わるのか?」という疑問に答えた重要な第一歩かもしれないのです。

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参考文献

GibberLink lets AI agents call each other in robo-language
https://techcrunch.com/2025/03/05/gibberlink-lets-ai-agents-call-each-other-in-robo-language/

What is GibberLink (and what it is not)
https://www.linkedin.com/posts/boris-starkov_gibberlink-ai-elevenlabs-activity-7300116692964126721-UHz1/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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