将来、進化し続けたAIが人間やそれに近い立場・権利をもつことはあるのでしょうか。
米国オハイオ州でその未来を禁じるための先手が打たれました。
2025年9月下旬、オハイオ州議会に「AIの結婚と法人格の付与」を明確に禁じる法案が提出されました。
この法案は、AIが人間や会社のような権利を持つことを認めない内容となっています。
AI技術が急速に発展し、社会や法律の枠組みに新たな課題を投げかける中、将来に備えて先手を打つ動きと言えます。
目次
- オハイオ州でAIの「法人格」や「結婚」を全面禁止する法案が提出される
- 常に「人間がAIを管理する」社会にするための法案
オハイオ州でAIの「法人格」や「結婚」を全面禁止する法案が提出される
オハイオ州議会に提出された下院法案469号は、AIの法的な立場を明確に制限するためのものです。
この法案は、AIを「自我や感情を持たない存在」として定義しています。
AIが人間や法人と同じような法人格、すなわち法律上の権利や義務を持つ存在として扱われることを認めないとしています。
また、人間とAI、もしくはAI同士の結婚も将来的に一切認めません。
これは「人間とロボット(AI)が一緒に並んで挙式をあげるなんておかしい」という話をしているわけではありません。
人間とAI、またはAI同士の結婚を禁じることで、AIが配偶者として法的な権利や義務を持つことを防ぐ意図があります。
さらに、AIが不動産や銀行口座、著作権などを持ったり、管理したりすることもできません。
会社の社長や取締役、役員などの経営層にAIが就任することも認められていません。
意思決定者は必ず人間でなければならないという考え方が徹底されており、もしAIがトラブルや損害を引き起こした場合は、そのAI自身ではなく、所有者や開発者など人間側が責任を負うと明記されています。
では、どうして今、このような法案が提出されたのでしょうか。
常に「人間がAIを管理する」社会にするための法案
こうした法案が登場した背景には、AI技術の急速な進化と、AIが人間らしく振る舞うようになった社会の変化があります。
AIチャットボットや会話アプリを通じて、実際にAIと「感情的なつながり」を感じる人がいます。
実際、フロリダのマーケティング会社がAIユーザー1000人を対象に行った調査では、およそ5人に1人が「AIとの感情的な結びつきを感じたことがある」と答え、3%は「AIを恋人と考えたことがある」と回答しています。
さらに、長い対話を通じて「AIに“自我”を感じた」という人も16%にのぼっています。
こうしたことは、今後AIが進化するについれて、ますます増えていくでしょう。
「AIと結婚したい」とか「AIにだって人間のような権利が必要だ」と考える人が出てきてもおかしくありません。
しかし、もしAIが法律上の権利を持つなら、財産や家族、企業経営など、さまざまな分野で混乱が起きる可能性があります。
たとえば、AIが自律的に判断して何か問題を起こした場合、誰がその責任を取るのかが曖昧になってしまうでしょう。
法案を提出したタディウス・クラゲット氏は、次のように述べています。
「この法案は、技術が人間を管理するのではなく、常に人間が技術を管理できるようにするためのものです」
ちなみにアメリカではユタ州が2024年に同様の法律を施行し、ミズーリ州でも同じ趣旨の法案が提出されるなど、全国的に議論が進みつつあります。
オハイオ州の今回の動きは、AI時代における新たな社会ルール作りの始まりとして注目されています。
参考文献
Saying ‘I do’ to AI? Ohio lawmaker proposes ban on marriage, legal personhood for AI
https://www.nbc4i.com/news/politics/saying-i-do-to-ai-ohio-lawmaker-proposes-ban-on-marriage-legal-personhood-for-ai/amp/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部
 
  
  
  
  
