ChatGPTが金融業界のさまざまな場面で活用されていることを知っていますか?
ChatGPTとはOpenAIが開発した自然言語処理モデルの一つであり、人間のような応答を生成できるのが特徴です。金融業界においてもChatGPTは大活躍していて、ChatGPTを活用した先進的な取り組みを始めている企業が多くあります。
この記事では、金融業界においてChatGPTはどのように活用できるかや、ChatGPTを使用する際の注意点と対処法を解説します。
ChatGPTが金融業界でできること

ChatGPTとは、OpenAIが開発したチャット型AIサービスです。大規模言語モデルを活用して人間のように自然な対話ができるため、金融業界のさまざまな場面において幅広く活躍できます。
例えば、財務情報をもとに融資の判断に必要な資料を作成したり、金融トレンドのリサーチに役立つ手がかりを与えたり、ファイナンシャルアドバイザーの質問に回答したりしています。他にも、稟議書作成や基本的なコードの作成などの業務でも活用されているのです!
ChatGPTを使用することで、作業にかかる時間や手間を削減でき、その分の時間を他の作業に使えるようになります。競争が激化する中でも、ChatGPTを活用して業務効率化を図ることで優位に立てるのです!
ChatGPTを金融で活用するメリット
金融業界におけるChatGPTの導入は、さまざまなメリットがあります。ここでは、その主な利点を紹介します。
メリットを理解することで、AI技術をうまく取り入れ、競争力を高められるでしょう。
業務効率化
ChatGPTは膨大な金融データを素早く処理し、人間が見逃しがちなパターンや異常を検出します。この処理スピードのおかげで、融資申請や財務報告書の作成といった定型業務の自動化が進み、スタッフはその他の仕事に集中できるようになるでしょう。
顧客からの問い合わせに対する対応も効率化され、業務時間が短縮され、人的ミスも減ります。結果として、金融機関全体の生産性が向上し、競争力を強化に繋がります。
顧客ニーズに沿ったサービスの提供
ChatGPTを活用したデータ分析により、顧客のニーズや希望を正確に把握でき、最適なアドバイスを提案できます。具体的には、顧客の取引履歴や資産状況、リスク許容度を分析して最適な投資プランなどが提案できるでしょう。
ChatGPTは顧客の行動パターンを学習し、将来のニーズを予測も可能です。細かなサービス提供によって新規顧客の獲得にも効果を発揮するかもしれません。
リスク管理の強化
ChatGPTは過去の取引データを分析し、不正行為のパターンを学習します。この学習データにより、リスクの早期発見とスピーディーな対応が取れるようになります。
ChatGPTを活用してストレステストや将来のシミュレーションを行えば、さまざまな状況に備えられるため、金融機関の安全性や顧客からの信頼感の向上にもつながるでしょう。
コスト削減
ChatGPTを使うことで、事務作業の負担が減り、コストを抑えられる可能性があります。請求書の処理や会計業務など、毎回同じ手順を繰り返す作業を自動化すれば、スタッフは他の仕事に時間を使えるようになります。
また、データを細かく分析できるので、投資の判断材料が増え、より適切な決断がしやすくなるでしょう。顧客のニーズに沿った新しい金融商品のアイデアも考えやすくなり、結果的に売上アップにもつながるかもしれません。
コンプライアンス対応の効率化
金融業界では、法律や規制が頻繁に変わるため、常に最新の情報を把握しなければなりません。ChatGPTを活用すれば、こうした変更を自動でチェックし、重要なポイントをすぐに把握できます。
新しい規制が導入されたときも、社内のルールを見直すタイミングを逃さずに済むでしょう。不正な取引が行われていないかを早めに察知し、リスクを抑える仕組みを整えることも可能です。
コンプライアンスを徹底することで、金融機関の信頼性を高められるでしょう。
新しい金融商品の開発
金融商品の開発には、顧客のニーズを的確にとらえる必要があります。ChatGPTを活用すれば、顧客一人ひとりの資産状況やリスクの考え方に合わせた商品を提案しやすくなるでしょう。
投資の経験が浅い人にはリスクを抑えたプランを、積極的に運用したい人には成長が期待できる選択肢を提案できます。新しい金融商品を考えたり、市場の動きに応じてどのような成果が期待できるかを事前に検証できるのも大きなメリットでしょう。
こうした工夫を重ねることで、リスクを抑えつつ、より良いサービスの提供が実現できます。
24時間365日のサポート提供
金融サービスでは、困ったときにすぐ相談できる環境が大切です。ChatGPTを活用したチャットボットを導入すれば、24時間いつでも顧客対応が可能になります。
夜間や休日に口座の利用状況を確認したい場合や急なトラブルが発生した際にも、すぐにサポートを受けられます。また、海外の顧客や時差のある地域に住む人にも対応しやすくなるでしょう。
人手に頼らず、スムーズに対応できる仕組みを整えることで、顧客満足度の向上にもつながります。
ChatGPTの金融業界における活用事例

金融業界で各企業がChatGPTをどのような目的で活用しているのか解説します。
この情報は、みなさんの会社でChatGPTを導入する際の参考になるでしょう。具体的な事例を知ることで、より明確な判断ができるようになるはずです。
ぜひ、自社に活用できないか検討する判断材料にしてみてください。
三菱UFJ|大手金融機関で初めて金融関連データの分析や将来予測に活用
三菱UFJフィナンシャル・グループは、OpenAIと連携し、各種業務にChatGPTの活用を進めています。※1
大手金融機関で初めて金融関連データの分析や将来予測にChatGPTを活用しているほか、Webブラウジング機能を使った情報収集等もおこなっています。
大手金融機関がこうした動きを見せることで、金融業界におけるChatGPTの活用が益々進みそうですね!
ふくおかFG|融資業務の稟議書作成を効率化
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、DX推進本部内に「AI戦略グループ」を新設し、融資業務におけるChatGPTの活用を始めています。※2
稟議書作成を支援するPoC(概念実証)を開始し、融資担当者が資金使途などをまとめる際に、業務負担を軽減するための取り組みを実施しているのが特徴です。
また、日本IBMと連携し、CRMやExcelから融資先の財務情報や営業日報を収集し、生成AIに最適な指示文を自動で作成するシステムを試作したとのこと。
まずは、銀行業務におけるフロント・ミドル・バックエンド業務でChatGPTを活用し、将来的にはマーケティングなどでも活用していく姿勢を示しています。
佐賀銀行|規定検索や文書翻訳
佐賀銀行は、行内業務の効率化を目指し、ChatGPTの導入を進めています。※3
行内規定の検索や企画立案、外国語文書の翻訳などをAIでサポートする体制を、2024年秋までに整える予定です。
たとえば、領収書の提出期限を尋ねると「出張後2週間以内に該当部署へ提出」といった具体的な回答を即座に得られます。
2023年7月にはシステム部とDI本部の若手行員によるプロジェクトチームも立ち上がり、実用化に向けた検討が進められています。※3
大和証券|書類作成業務を効率化して外部委託を削減
大和証券は、全社員9000名に「Azure OpenAI Survice」を利用したChatGPTを導入しました。※4
情報収集のサポートや資料作成の外部委託にかかる時間の削減、各種書類や企画書等の文章・プログラミングの素案作成に用いることで効率化が図られています。
また、英語資料の確認や外部委託業務の削減にも貢献し、社員が本来注力すべき業務に集中できる時間を生み出しているとのことです。全社的な活用により、さらなる利活用の可能性も模索されています。
東京海上日動火災保険|保険の補償内容の回答を自動作成
東京海上日動火災保険は、対話型AI「チャットGPT」を活用した独自システムを6月から試験運用を開始しています。※5
このシステムは保険の補償内容や手続きなどの照会に対する回答案を自動生成します。
この導入により、顧客からの問い合わせに対する迅速な対応や、業務効率化が期待されています。
なお、金融業界以外に導入している企業について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

日本でChatGPTの導入状況
2023年12月現在、個人だけでなく企業でも導入されることが増えましたが、それでも日本企業のChatGPT利用率はわずか7%です。
その中で業種別の利用状況を見ると、一番多いのは情報通信業が最も多く32.8%でトップです。金融業界は、13.5%で4番目に利用率が多い業種となっています。
順位 | 業種 | 利用率 |
---|---|---|
1 | 情報通信 | 32.8% |
2 | 製造 | 19.2% |
3 | 卸売・小売 | 14.3% |
4 | 金融・保険 | 13.5% |
5 | 不動産 | 12.7% |
金融業界では主に、文書作成や書類作成、情報収集などで活用されています。
金融業界では、契約書やレポート、分析資料など書類作成が頻繁に行われるため、ChatGPTの導入は大きな効果をもたらすと考えられています。
具体的には、ChatGPTを利用することで文書や書類をより迅速にかつ正確に作成することが可能になり、結果として全体の業務効率が向上する可能性が高いです。さらに、行員がより高度な業務に集中できるようになるため、企業全体の生産性も向上するでしょう。
ChatGPTの最新活用トレンド
金融業界でのChatGPT活用は、急速に進化しており、最近では新たな活用方法が続々と登場しています。ここでは、金融サービスの質を大きく向上させる可能性を秘めた最新の活用トレンドを紹介します。※6
リアルタイム市場分析の高度化
ChatGPTを使って、ニュースやソーシャルメディア、経済指標などのデータをリアルタイムで分析する取り組みが進んでいます。この取り組みにより、市場動向をより早く正確に予測できるようになり、投資判断に役立つ情報が提供できます。
これまでの方法よりも速くて広範囲な分析が可能になり、金融機関や投資家にとって競争力が高まるでしょう。
AIによる個別化された資産運用サービス
ChatGPTは、個人の資産状況やリスクの許容度、ライフプランを細かく分析し、最適な資産配分を提案するサービスにも活用されています。より柔軟に顧客のニーズに応じた資産運用アドバイスが可能になる、ロボアドバイザーの進化版と言えるでしょう。
市場環境の変化にもすぐに対応できるため、より効果的な資産管理が期待できます。
対話型金融教育プログラムの開発
金融リテラシーを向上させるために、ChatGPTを活用した対話型学習プログラムが開発されています。
このプログラムは、ユーザーの理解度や関心に合わせて金融教育コンテンツを提供。ユーザーが質問をすると、すぐにわかりやすい説明が返ってきて、効率的に金融知識を学べるようになっています。学びながら楽しめるという点でも注目されています。
三井住友FG|従業員のための対話ソフトを独自開発して資料作成を効率化
三井住友FGは従業員を支援する対話ソフトを独自開発し、業務に導入することを発表しました。※7日本マイクロソフトと協力して開発していく方針です。
対話ソフトを使用することで、特定の企業の融資判断に必要な資料を効率よく作成できます。AIが企業の財務情報などをもとに草案を作成してくれるので、資料作成の手間が大きく削減されるのです!
ブルームバーグ|市場レポートの自動作成ができる金融チャットボットを開発
金融業界の大手ブルームバーグが、AI技術を駆使した画期的な金融チャットボット「BloombergGPT」を開発しました。※8
BloombergGPTは、膨大な金融データを学習して金融研究の新たな方法を提供しています。SEC(米国証券取引委員会)提出書類の初期ドラフト生成や市場レポートの自動作成など、さまざまな用途が考えられています。この金融チャットボット、まさに金融業界に革命をもたらすこと間違いなし!
現時点では一般公開されていませんが、デモ利用の申込みは可能です。金融業界もAIの波に飲まれつつある現代、今後の進化が楽しみですね!
Lemonade|AI保険チャットボットで顧客満足度を向上
インシュアテック企業のLemonadeが、顧客サポートを劇的に向上させている事例が話題沸騰中!ChatGPTを使ったチャットボットが、顧客からの問い合わせやクレームを迅速に対応可能に。※9
その結果、Lemonadeは顧客満足度を向上させると同時に、待ち時間の短縮やカスタマーサポートチームの負担軽減に成功しました。今後もLemonade社のような先進的な取り組みが広がっていくことで、顧客にとっても業界にとっても、さらなる進化が期待できることでしょう!
JPモルガン・チェース|AIで政策変更を予測
JPモルガン・チェースでは、ChatGPTベースの言語モデルの使用によって過去25年のFOMC声明と講演内容から政策シグナルを検出し、ハト派・タカ派スコアで数値化する仕組みを構築しました。※10
このAIツールは、政策変更の予測と取引可能なシグナルの提供に役立つとされています。他にも、ChatGPTを使用することで、ニュースの見出しが株価にどのような影響を与えるかを判断できることも発表されています。
市場を読み取り分析するにあたって、ChatGPTは今後もさらに活躍の幅を広げていくでしょう!
Morgan Stanley|ファイナンシャルアドバイザーの質問に答えるチャットボットを開発
米国のMorgan Stanleyでは、ファイナンシャルアドバイザーの質問に答えるチャットボットを開発しています。※11
同社はこれまで蓄積してきた10万以上のドキュメントをもとにGPT-4を再学習させることで、より専門性の高い質問にも対応できるようにしているのです。
社内のナレッジとGPT-4を組み合わせることで、より効果的なナレッジマネジメントが可能になっている事例といえますね!
今後は、ファイナンシャルアドバイザーだけでなく顧客からの質問にも回答できるチャットボットになる可能性もあり、期待が高まっています!
ChatGPTを金融業界に使う際の注意点とその対策
ChatGPTを使う際には注意点もあります。もしよくない使い方をしてしまうと、大きな損害が起きるケースもあります。
ChatGPTを業務で活用する際は、以下で解説する注意点と対策を押さえてからがおすすめです。
情報漏洩のリスクがある
ChatGPTを使用する際には情報漏洩に注意する必要があります。ChatGPTは入力された情報をもとに学習していくため、個人情報であっても同じように学習してしまう可能性があるのです。
対策
情報漏洩を防ぐために、個人情報や機密情報は入力しないようにすることが重要です。もしものことがあったら不安という場合は、入力した内容を学習しない設定にも変更できます。
回答が正確ではない場合もある
ChatGPTの回答は必ずしも正確というわけではありません。情報が最新でない場合もあります。誤った情報を使用してしまうと、企業の信用問題にもつながるため注意が必要です。
対策
ChatGPTで文章を生成したら、その文章の情報が正確なのかを調べることが重要です。誤った情報を載せてしまうことがないように確認を怠らないようにしましょう。
顧客との接点が減る
ChatGPTの使用によって、顧客との接点は減ってしまうことが考えられます。AIとの会話は人と比べるとスムーズにいかない場面もあります。そのため、AIの対応で顧客に不安や不満を感じさせてしまう可能性がでてくるのです。
対策
自動化による業務効率化も大切ではありますが、顧客に不安を感じさせないように使いどころを考えるようにすると良いでしょう!また、ChatGPTでは解決できない場合に、人間との対話に移行するようなシステムをつくるのも大切です。
なお、ChatGPTを利用する際のリスクと対策方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

ChatGPTの金融業界での活用は広がっていく!
ChatGPTは自然言語処理モデルであり、金融業界で幅広く活用されています。
具体的な活用事例としては、三井住友ファイナンシャルグループが従業員支援の対話ソフトを開発し資料作成を効率化していたり、三菱UFJ銀行では稟議書作成に活用したりしています。
営業・事務分野のみならず、顧客対応・分析・ファイナンシャルアドバイスに至るまで、さまざまな分野で活用がなされています。
ただし、ChatGPTを金融業界で使用するにあたって、情報漏洩や正確性には注意が必要であり、顧客との接点削減にも配慮が求められます。
今後もChatGPTは金融業界での業務効率化や変革を推進する重要なツールとなり、利用は拡大されていくことでしょう。

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最後に
いかがだったでしょうか?
ChatGPTの活用は、金融業界の競争力向上に不可欠です。業務効率化、リスク管理強化、顧客満足度向上など、導入のメリットは多岐にわたります。
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- ※1:OpenAI 社との生成 AI を用いた金融業務の高度化・効率化の取り組み開始について
- ※2:ふくおかFGがAI活用の専門部署を新設、狙うは業務効率化の「先」
- ※3:佐賀銀行、規定検索や文書翻訳に生成AI活用 24年秋から
- ※4:大和証券、対話型AIの「ChatGPT」を導入し全社員約9,000人を対象に利用を開始
- ※5:東京海上日動火災が保険業界に特化した対話型AI開発 AIチャットbotのPKSHAと共同で
- ※6:金融業界におけるChatGPTの最新活用トレンド
- ※7:三井住友FG 従業員支援の対話ソフトを独自開発 業務に導入へ | NHK | AI(人工知能)
- ※8:Bloomberg Uses Its Vast Data To Create New Finance AI
- ※9:ChatGPT in Business: Exploring the Benefits and Limitations.
- ※10:JPモルガンのAI、FRBの見解25年分をタカ派ハト派で数値化 (msn.com)
- ※11:大規模言語モデルの金融業界へのインパクト ~ChatGPTの今後の展望と活用可能性~

【監修者】田村 洋樹
株式会社WEELの執行役員として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。
これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。