日本の企業数のうち99.7%を占めている中小企業は、日本を支えている重要な存在です。しかし、どの業界も人材不足が深刻化しているため、中小企業でも頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
解決する方法の一つとして生成AIに注目が集まっています。生成AIは文章作成やデータ分析、顧客対応の自動化などさまざまな業務をサポートできるため、業務効率化が図れると期待されています。
この記事では、中小企業での生成AI活用の現状から実際の活用事例、導入時の注意点まで詳しく解説します。中小企業の課題解決の糸口が見えてくることでしょう。
ぜひ最後までご覧ください!
中小企業での生成AI活用の現状
中小企業は人手不足や業務効率化、コスト削減など、多くの課題を抱えています。しかし、大企業に比べてIT人材や技術導入のリソースが限られており、デジタル化の遅れが問題視されてきました。そこで注目されているのが生成AIです。
生成AIは文章作成やデータ分析、顧客対応の自動化など、多岐にわたる業務をサポートし、少ないリソースで高い生産性を実現できます。たとえば、マーケティング資料の自動生成や顧客への迅速な応答が可能になり、業務負担を大幅に軽減する事例も増えています。中小企業にとって、生成AIはコストを抑えながら課題を解決し、事業成長を後押しする重要な手段になるでしょう。
なお、生成AIについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
中小企業の生成AI活用事例12選
中小企業で生成AIを活用しようと思っても、どうやって活用すればいいか悩んでしまう方も少なくないのではないでしょうか。この章では、実際に中小企業で生成AIを活用できる事例を12個解説していきます。
ぜひ最後まで読んでいただき、生成AI活用方法の参考にしてください。
事例1.アイデア出し
生成AIを活用した新商品開発やマーケティング施策のアイデアを出す事例を紹介します。たとえば、ある飲食店では新メニュー開発のため、ChatGPTにテーマやターゲット層を入力し、多数のアイデアを短時間で取得しています。その中からユニークな提案を選び、実際に新メニューとして展開することで、限られたリソースで効率的に斬新なアイデアを生み出すことに成功しました。
実際にChatGPTを使ってアイデア出しを行った結果は以下のとおりです。
この生成されたアイデアの中から商品化するメニューを選ぶことで、効率よく新メニュー開発が進んでいきます。
事例2.企業リサーチ
生成AIを活用し、企業リサーチの業務を効率化できた事例を紹介します。ある中小企業では、新規取引先の候補をリサーチする際、ChatGPT searchを使ってキーワードや条件を入力し、必要な情報を素早く得ています。さらには生成した情報を表などの整理した状態で作成することもできるため、人手不足の中でも瞬時にきれいでかつ高精度なリサーチをしてくれるのが生成AIの特徴です。
実際にChatGPTを使って企業リサーチをしてみました。入力内容は「国内生成AI業界の大手についてsearchで徹底的に調べ上げて、CSVファイルに社名と公式サイトのURLと概要をまとめてください。」です。結果は以下のとおりです。
ChatGPT searchを使ったらおよそ1分程度でまとめてくれました。これだけの量を手作業でまとめるのは時間がかかってしまいますよね。企業リサーチに生成AIを使うことは、業務を効率化するためのおすすめの活用方法です。
事例3.メール文の生成
生成AIを活用して、営業メールやフォローアップメールのテンプレートを自動生成できます。たとえば、ChatGPTに「新規顧客向けに、初回商談後のフォローアップメールを作成してください。内容には、感謝の気持ち、次回のアクション、連絡先を含めてください。」と入力することで、即座にメール文を生成します。
以下の画像は、実際にChatGPTを使って生成したものです。
条件に合ったメール文を作成できていますね。細かな言い回しを考えるのが難しいときなどに有効な活用方法です。
事例4.社外向け文の生成
企業のプレスリリースや報告書などの社外向け文書生成にも生成AIが活用されています。たとえば、ある製造業の中小企業では、新製品発表時のプレスリリースをChatGPTで作成することで、素早く文章が完成し、広報活動の効率化が実現されました。
ChatGPTを使った例は以下のとおりです。
わかりやすく簡潔にまとめられていますね。社外向け文章は幅広い方が読む可能性があるため、わかりやすい表現が必要です。ChatGPTで生成された文章もしっかりと対応しているため、文章作成に悩む時間を大幅に減らす効果があることがわかります。
事例5.SNS投稿文の生成
SNS運用においても生成AIは大きな役割を果たしています。人が頭で考えられる量には限界があるため、毎日投稿するための文章を作ろうと思っても、途中で挫折してしまうかもしれません。SNS投稿文の作成に生成AIを使うことで、運用担当者の負担軽減や魅力的な投稿文を何度も発信できる効果が期待できます。
たとえば、あるアパレル企業では毎日複数のSNS投稿を作成するために、ChatGPTでターゲット層に響くキャッチーな投稿文を自動生成します。ChatGPTに入力した結果と回答例は以下のとおりです。
事例6.プレゼン資料の生成
生成AIはプレゼン資料の作成にも利用できます。たとえば、ChatGPTで資料の構成案や各スライドの要点を整理し、PowerPointを活用することで、スライドのデザインまで作り上げられます。短時間で、説得力のあるプレゼン資料ができるため、業務の効率化が図れるようになりました。
実際のChatGPTで生成した構成案や各スライドの要点は以下のとおりです。
事例7.会議の文字起こしと議事録作成
会議での議事録は非常に重要な役割を担っていますが、作成に時間がかかるのが多くの企業で課題となっています。そこで生成AIを活用することで、作成時間を短くでき、かつ高精度の議事録を作り上げることが可能です。
具体的には、Whisperを使用して会議内容を音声データから文字起こしし、その後ChatGPTやClaudeで内容を整理して議事録を作成します。最後に担当者が目で見て内容に誤りがないかを確認するだけで、議事録が完成します。
事例8.Excel関数の生成
生成AIを使って、Excelの関数やマクロの自動生成を行う事例があります。たとえば、財務分析を行う中小企業では、ChatGPTに特定の計算条件を入力し、複雑な関数を即座に生成することで、Excel作業の効率が飛躍的に向上し、業務時間の大幅な短縮が実現されました。
すでにあるExcelデータを使って関数を生成してもらった例を以下で紹介します。
提案されたコードは以下のとおりです。
=SUMIFS(D:D, B:B, "東日本", C:C, "法人", E:E, ">=2024-01-01", E:E, "<=2024-01-31")
=INDEX(A:A, MATCH(LARGE(FILTER(D:D, (B:B="東日本")*(C:C="法人")*(E:E>=DATE(2024,1,1))*(E:E<=DATE(2024,1,31))), 1), D:D, 0))
事例9.ポスター画像の生成
広告やイベント用ポスターを生成AIを使って自動作成する事例があります。たとえば、ある小売業では新商品の販促ポスターを無料でデザインできるStable Diffusionで作成することで、従来の外注コストを削減しました。結果として、ビジュアルクオリティの高いポスターを短期間で制作し、コスト低減に成功しました。
以下の記事でStable Diffusionについて詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
事例10.SNS用ショート動画の生成
SNS用のショート動画は生成AIを使って作成できます。たとえば、動画生成AIであるSoraに対して次のように指示を出します。
- 春の観光地プロモーション用ショート動画を作成してください。
- テーマは桜並木、ドローン視点、訪問者が楽しむシーン。
- 30秒の縦型動画で、最後に観光案内URLを表示してください。
生成された動画はそのままInstagramリールやTikTokに投稿ができ、公式サイトの訪問者数が大幅に増加、観光地への問い合わせも増える効果が見込めます。
以下の記事で動画生成AIについて詳しく解説しています。動画生成AIはSora以外にもPikaやRunway、Klingなどさまざまな種類があります。どの種類が自分の目的に合っているか検討するためにも、ぜひご覧ください。
事例11.顧客対応自動化
一般に公開されている生成AIは機密情報や個人情報を入力してしまうと、情報漏えいのリスクがあります。しかし、自社で業務効率化を行うためには、入力が必要な場合があり、その場合は、自社で生成AIを開発することで解決します。
たとえば、Azure OpenAI Serviceを活用し、LLMとRAGを組み合わせたチャットボットを作る方法があります。あるIT企業では、顧客からのよくある問い合わせに対して、Azure OpenAIを活用したチャットボットを構築しました。24時間365日稼働でき、顧客の求めている回答を素早く行えるため、顧客満足度の向上につながります。
事例12.ノウハウ提供
生成AIは先に紹介した顧客対応だけでなく、自社の社員に対しても活用できます。たとえば、ある中小企業の製造業では、長年蓄積された業務マニュアルが共有フォルダに散在しており、従業員が必要な情報を探し出すのに時間がかかっているという課題がありました。
Azure OpenAI ServiceでLLM(大規模言語モデル)とRAGに社内知識を学習させたチャットボットを構築することで、従業員の質問に対してリアルタイムで正確な情報を提供できます。結果、ノウハウを社内全体に提供でき、属人化の解消や業務効率化につながります。
中小企業の生成AI導入時の課題と対策
生成AIは上手く活用することで中小企業の課題を解決してくれる手段となりますが、導入時には注意すべきポイントがあります。場合によっては企業の社会的信用を低下させてしまう恐れがあります。取り返しのつかないこととならないように、この章を最後まで読み、対策を講じましょう。
ハルシネーションのリスク
生成AI導入にはハルシネーションのリスクを考慮する必要があります。ハルシネーションとは、事実ではない情報や存在しないデータをあたかも真実のように生成してしまう現象です。
業務で使用するデータや文書でこの現象が発生すると、誤った意思決定や信頼性の低下を招きかねません。対策としては、ダブルチェックによる内容の確認やRAGを導入し、外部データベースから正確な情報を参照する仕組みを構築することが有効です。
情報漏えいのリスク
生成AIの利用時に機密情報や顧客データが外部に漏えいするリスクがあります。特にクラウド上のAIサービスを利用する場合、その情報管理が不十分だと第三者にデータが漏れる危険性が高まります。この問題を回避するためには、社内データを外部に送信せずにAIを運用できるローカルAIの導入や、厳重なセキュリティ対策が施されたAzure OpenAI Serviceの導入が有効です。
回答のコンプライアンス違反リスク
生成AIは、業界規制や法令に違反する内容を出力する場合があります。特に金融や医療分野では法的リスクが高く、誤った情報提供や規制違反は重大な問題を引き起こしかねません。
このリスクを防ぐには、生成された内容をダブルチェックし、専門知識を持つ担当者が最終確認を行うプロセスが不可欠です。また、使用するAIモデル自体が信頼性の高いものであることも重要です。適切な運用体制を整えることで、リスクを最小限に抑えられます。
著作権侵害のリスク
特に画像生成AIでは、著作権侵害のリスクに気をつけなければなりません。たとえば、特定のアーティストの作風を模倣した画像や、既存の作品に酷似したデザインが生成されることがあります。
リスクを回避するには、img2img(画像を元に別の画像を生成する技術)を避けることや、プロンプトで既存の作品に似せる指示を行わないことが重要です。また、使用する学習データやマージ元モデルがクリーンであることを確認することも欠かせません。
なお、生成AIの導入リスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
中小企業の生成AI活用事例を参考にして業務効率化を図ろう
昨今では、どの業界も人材不足と言われているため、中小企業もその影響を受けています。特に中小企業は、少ない人数で限られた費用内で多くの業務を行う必要があるため、業務効率化は重要です。
業務効率化を進める手段の一つとして、生成AIがあります。中小企業の主な生成AIの活用事例は以下のとおりです。
- アイデア出し
- 企業リサーチ
- メール文の生成
- 社外向け文の生成
- SNS投稿文の生成
- プレゼン資料の生成
- 会議の文字起こしと議事録作成
- Excel関数の生成
- ポスター画像の生成
- SNS用ショート動画の生成
- 顧客対応自動化
- ノウハウ提供
これらを参考にし、生成AI導入を検討するのがおすすめです。
一方で生成AIの利用には以下のようなリスクがあり、導入は慎重になる必要があります。
- ハルシネーションのリスク
- 情報漏えいのリスク
- 回答のコンプライアンス違反リスク
- 著作権侵害のリスク
生成AIの導入により、ビジネススタイルは大きく変化していきます。今後も自社が発展していくためにも本記事で紹介した生成AIの導入事例を参考にしながら、リスクを排除できるように進めていきましょう。
最後に
いかがだったでしょうか?
生成AIの導入で解決できる課題や事例を具体的に把握し、次の一手を考えたい方は必見です。効率化やコスト削減を実現した成功事例を参考に、貴社の可能性を広げましょう。
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