「いつまでも、健康な脳を保っておきたい」
そのための予防策として、重要な食品群が明らかになりました。
最新の研究で、「葉物野菜」「ベリー類」「魚」を中心とした食事が、記憶の衰えを遅らせ、脳の萎縮を防ぐ効果があることが判明したのです。
研究は中国・広州市の花都区人民医院の研究チームが行い、2025年9月24日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- 脳を守る「食事パターン」とは?
- 脳を守る「3つの食品グループ」とは?
脳を守る「食事パターン」とは?
研究チームは今回、地中海式食事とMIND(マインド)食という2つの食事法が、長期的な脳の健康にどう影響するかを調べました。
地中海式食事は長年にわたり、心臓や脳への健康効果で評価されており、果物、野菜、魚、オリーブオイル、そして適度なワインの摂取を重視する食事法です。
より新しいMIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)は、地中海式食事の要素を取り入れつつ、葉物野菜、ベリー類、ナッツ、全粒穀物など、脳を守ると考えられる食品に重点を置いています。
どちらの食事法も赤身肉や加工食品の摂取を控える点で共通しています。
対象は50〜75歳の1500人で、健康な人750人とアルツハイマー病患者750人を含む大規模調査です。
参加者の食事内容はアンケートやアプリを使って5年間追跡され、記憶力や思考力を測るテストも定期的に実施されました。
さらに、血液や脊髄液からアミロイドβやタウ蛋白など、アルツハイマー病の指標となる物質も分析されました。
MRIによる脳スキャンでは、海馬の体積や大脳皮質の厚みといった、脳の“萎縮度”も詳細に測定されています。
その結果、次のことが明らかになりました。
①地中海式食事もMIND食も、認知機能の低下を緩やかにする
両方の食事法をよく守っていた人は、記憶テストでより高い成績を示し、アルツハイマー病関連の有害なタンパク質が少ない傾向にありました。
②脳の萎縮が遅くなる
特に食事の遵守度が高い参加者ほど、海馬の縮小が遅く、大脳皮質の薄化も少ないことがわかりました。
つまり、脳の老化のスピードそのものを食事が変える可能性があるのです。
脳を守る「3つの食品グループ」とは?
研究チームによると、2つの食事法の中でもとくに重要なのが、次の3つの食品グループです。
1. 葉物野菜(ほうれん草・ケールなど)
抗酸化物質やビタミンB群が豊富で、神経細胞をストレスから守ります。
MIND食では「毎日食べるべき食品」として最重要カテゴリーになっています。
2. ベリー類(ブルーベリー・イチゴなど)
ポリフェノールが脳の炎症を抑え、記憶形成に関わる神経回路を保護すると考えられています。
複数の研究で「最も認知機能と関連の強い食品」として注目されています。
3. 魚(特に青魚)
魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、神経細胞の膜を安定化させ、高齢期の認知機能維持に関連しています。
研究でもオメガ3の摂取量が多い人ほどテスト成績が良好でした。
加えて、全粒穀物やナッツ類も脳の保護に寄与する食品としてMIND食に組み込まれています。
研究では遺伝の影響も調べられましたが、アルツハイマー病リスクを高める遺伝子を持つ人でさえ、これらの食事を守ることで脳機能の低下が緩やかになる傾向が確認されました。
つまり、遺伝的リスクよりも、毎日の食事のほうが脳を守る力を持っている可能性があったのです。
脳を守る最良の方法は、サプリでも脳トレでもなく、毎日の食事にあるのかもしれません。
参考文献
New study links leafy greens, berries, and fish to better cognitive health
https://www.psypost.org/new-study-links-leafy-greens-berries-and-fish-to-better-cognitive-health/
元論文
The long-term neuroprotective effect of MIND and Mediterranean diet on patients with Alzheimer’s disease
https://doi.org/10.1038/s41598-025-17055-5
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

