私たちは、友人や家族、恋人との関係が人生の幸福を大きく左右すると知っています。
そんな中、スウェーデン・ウメオ大学(Umeå University)の最新研究で、こうした人間関係の満足度を高める「性格特性」は、男女で異なることが示されたのです。
では、それぞれにどのような性格特性があると、周囲の人々とうまくやっていけるのでしょうか?
研究の詳細は2025年10月16日付で学術誌『Journal of Research in Personality』に掲載されています。
目次
- 恋人ができやすい「性格特性」は男女で真逆?
- 男女で異なる性格が人間関係を左右する
恋人ができやすい「性格特性」は男女で真逆?
研究チームは、性格を測る指標として広く使われる「ビッグファイブ」を用い、その中でも人間関係と強く結びつく
外向性・協調性・神経症傾向 の3つを中心に分析しました。
この調査では、オーストラリア・デンマーク・スウェーデンの成人3780人を対象にしています。
するとまず、「恋人がいるかどうか」という最も根源的な部分で、男女の結果が真逆に近いことが分かりました。
●男性にとって有利なのは「外向性」
まず、男性では外向性の高い人ほど恋人がいる確率が大幅に上昇しました。
自信や積極性は「男性らしさ」と重なる部分が多く、恋愛の場面では“求められやすい特性”として働いているようです。
しかし女性ではこの効果は弱く、外向的でも恋人の有無にはほとんど影響しませんでした。
●「神経症傾向」は男女で真逆の作用に
男性では神経症傾向が高いほど恋人がいない傾向が強く見られました。
不安定さや怒りっぽさは「男性が求められる情緒的安定」に反するため、恋愛面で不利に働くと考えられます。
ところが女性では逆で、神経症傾向が高いほど恋人がいる可能性が上昇していました。
感情を表に出しやすいこと自体が、女性に対する社会的期待と一致しているため、恋愛形成で不利になりにくいとみられます。
●協調性も男女で作用が異なる
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男性:協調性が高いほど恋人がいない傾向
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女性:協調性は中立〜ややプラス
思いやりや協力性は本来関係構築に良いはずですが、男性の場合「優しすぎる」「受け身すぎる」と見られやすく、合致しないと判断される可能性があります。
男女で異なる性格が人間関係を左右する
パートナーがいる人だけに対象を絞って分析すると、また別の男女差が浮かび上がりました。
●満足度を下げる最大の要因は「神経症傾向」だが…
すべての人に共通して「神経症傾向が高い=周囲の人々との関係満足度が低い」という強い傾向がありました。
しかしその影響は、男性のほうがはるかに大きいという結果に。
恋愛満足度でも家族関係でも、男性は「情緒の揺れ」により強く影響を受け、満足度が下がりやすいことがわかりました。
一方、女性では同じ性格特性を持っていても、満足度の落ち方は比較的ゆるやかでした。
●家族関係では「外向性の男性」と「協調性の女性」が有利
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外向的な男性は家族満足度が高くなりやすい
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協調的な女性は家族満足度が高い
男女で「評価されやすい振る舞い」が違うことが、家庭内での関係満足度にも影響している可能性があります。
●友情だけは男女差がほぼゼロ
友情満足度に関しては、外向性・協調性・神経症傾向のどれも男女差はほとんどありませんでした。
友人関係は恋愛や家族関係よりも社会的な性役割が影響しにくい領域であることが反映されていると考えられます。
このように、周囲の人々との関係性を有意義なものにするには、男女で重視すべき性格特性が異なるようです。
参考文献
Personality’s link to relationship satisfaction is different for men and women
https://www.psypost.org/personalitys-link-to-relationship-satisfaction-is-different-for-men-and-women/
元論文
The interplay between gender and personality in relationship outcomes: Satisfaction across domains and partnership status
https://doi.org/10.1016/j.jrp.2025.104674
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

