ギザの三大ピラミッドのひとつ「メンカウラー王のピラミッド」で、内部に「謎の空間」が新たに見つかったと報告されました。
エジプト・カイロ大学(Cairo University)の研究チームは、ピラミッド表面を傷つけない非侵襲のスキャン技術により、2つの空気で満たされた空洞が存在することを突き止めたのです。
この謎の空間は一体、何のために設けられたのでしょうか?
研究の詳細は2025年10月の学術誌『NDT & E International』に掲載されています。
目次
- これまで知られていなかった「謎の空間」が明らかに
- 謎の空間は「未発見の入口」か?
これまで知られていなかった「謎の空間」が明らかに
ギザの三大ピラミッドのなかで最小のメンカウラー王のピラミッドは、これまでクフ王の大ピラミッドに比べて研究が大きく遅れていました。
最後に本格的な調査が行われたのは、1906〜1910年のジョージ・ライスナーによる発掘であり、その後100年以上にわたって目立った研究は進んでいませんでした。
しかし近年、メンカウラー王のピラミッドの「東側の花崗岩の外装」に、他の部分と明らかに異なる研磨面が存在することが注目されました。
この磨き上げられた部分の形状は、北側の公式入口付近の外装ブロックと非常によく似ており、2019年には研究者が「東側にもう一つの入口がある可能性」を指摘していました。

入口の有無を確かめるためには外装ブロックを外す必要があり、従来の調査では文化財を損なう危険が大きすぎました。
しかし今回、カイロ大学を中心とする国際チームは、以下の3つの非侵襲技術を同時に用いることで、この難題に挑みました。
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ERT(電気比抵抗トモグラフィ):電流の通りやすさから内部の異常を探る
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GPR(地中レーダー探査):電波の反射で境界面や空洞を検出
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UST(超音波探査):音波反射から高精度で空隙を検出
3つの手法はそれぞれ得意・不得意が異なるため、データを統合(イメージ・フュージョン)することで内部の様子をより正確に推定できるのが特徴です。
この統合解析により、研究チームは東面の花崗岩直下に、チームが「A1」「A2」と呼ぶ2つの異常領域を検出しました。
それらは石材の隙間や亀裂では説明がつかず、空気で満たされた「空洞」である可能性が最も高いと結論づけられたのです。
謎の空間は「未発見の入口」か?
発見された空洞は以下のような特徴を持っています。
● 空洞A1(大)
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深さ:約1.35〜1.4メートル
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サイズ:約1.5 m × 1.0 m
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場所:台形の花崗岩ブロックの真後ろ
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傾斜した形状
● 空洞A2(小)
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深さ:約1.13メートル
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サイズ:約0.9 m × 0.7 m
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場所:東面左上側
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A1と同じく傾斜している
どちらも内部に石が詰まっているわけではなく、すべての調査方法で「空気」の挙動を示していました。
特に注目されているのは、A1空洞のある区画を覆う花崗岩の配置が、ピラミッド北側の公式入口の外装配置と非常に似ている点です。
これは、2019年に指摘された「東側に第2の入口がある」という仮説を強く後押しします。
ただし今回の手法では、空洞がどこまで続いているのか、通路なのか、意図的に造られたものなのかは判断できません。
スキャンの深度には限界があるため、論文では次のような追加調査が必要だとしています。
もし空洞が奥へと続いていることがわかれば、それはまさに「隠された入口」か、あるいは未確認の内部空間につながる大発見になる可能性があります。
参考文献
Voids Detected Inside Giza Pyramid May Be Signs of a Hidden Entrance
https://www.sciencealert.com/voids-detected-inside-giza-pyramid-may-be-signs-of-a-hidden-entrance
元論文
Detection of two anomalies behind the Eastern face of the Menkaure Pyramid using a combination of non-destructive testing techniques
https://doi.org/10.1016/j.ndteint.2025.103331
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

