西オーストラリアの海で、頭に海綿をちょこんと乗せて泳ぐイルカたちが発見されました。
その姿は、まるで海の紳士たちが「帽子」をかぶってパーティーに向かうようにも見えます。
しかし、この不思議なファッションには、彼らなりの深い理由が隠されていたのです。
科学者たちが明かす「イルカの帽子」の真相とは?
目次
- 海綿帽子の正体とは?
- 本当の目的は「恋のアピール」だった?
海綿帽子の正体とは?
この奇妙な行動が観察されたのは、西オーストラリア州の北部沿岸、ダンピア諸島付近です。
西オーストラリア州生物多様性・保全・観光局(DBCA)の研究チームが、オーストラリアウスイロイルカ(学名:Sousa sahulensis)のオスが頭に様々な形や色の海綿をかぶり、ゆったりと泳ぐ姿を撮影しました。
実際の画像がこちら。
一見すると、ただの偶然か、海中のごみや漂流物が頭に引っかかっただけのようにも見えます。
しかし研究チームは詳細な観察を通じて、この“帽子”が意図的に選ばれていることを明らかにしました。
イルカたちは自分で海綿を採取し、丁寧に頭の上に乗せていたのです。
この「海綿帽子」行動が確認されているのは、現時点では西オーストラリアのごく一部の沿岸のみ。
しかも、主にオスのイルカだけがこの行動を見せている点も興味深いポイントです。
本当の目的は「恋のアピール」だった?
では、なぜイルカたちはわざわざ海綿を頭にかぶるのでしょうか?
研究チームは「オスのハンプバックイルカは、海綿を“贈り物”として頭に乗せ、メスにアピールしている」と説明します。
つまり、イルカ社会における“花束”や“アクセサリー”のようなもので、恋愛行動の一部なのです。
この行動は他の場所では報告例がなく、イルカの“おしゃれ”と“恋”が結びついたユニークな文化現象といえます。
人間がデートに花を持っていくように、イルカは海綿で自分を飾ってメスの関心を引こうとしているのです。
一方、過去にはシャチが死んだサケを頭に乗せて「サーモン帽ファッション」を楽しんだ例もあり、海洋哺乳類には独自の“流行”や“トレンド”が生まれることが知られています。
海の動物たちも、思った以上にクリエイティブで個性的な一面を持っているようです。
参考文献
Dolphins Spotted Wearing Sea Sponge Hats to Try Woo The Ladies
https://www.sciencealert.com/dolphins-spotted-wearing-sea-sponge-hats-to-try-woo-the-ladies
Male Humpback Dolphins Spotted Wearing Sea Sponge “Wigs” To Woo The Ladies
https://www.iflscience.com/male-humpback-dolphins-spotted-wearing-sea-sponge-wigs-to-woo-the-ladies-81313
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

