CO2増加に伴い「アマゾン最古の木々」が成長していた

CO2の排出量が増え、気候変動が地球規模の問題として日々取り上げられる中、意外な発見が報告されました。

それは「アマゾンの原生林で、最も古くて大きな木々が、CO2濃度の上昇に伴い、いまもゆっくりと成長し続けている」というものです。

この驚きの成果は、イギリスのバーミンガム大学(University of Birmingham)など世界60以上の大学・研究機関、約100人の研究者の国際共同研究によるものです。

研究チームはアマゾン全域188か所の原生林を30年以上かけて観測。

その結果を、2025年9月25日付けで科学雑誌『Nature Plants』で発表しました。

目次

  • 地球の肺「アマゾン」の木々は気候変動でどんな影響を受けているのか
  • アマゾンの古い木々は、CO2増加に伴って年々太くなっている

地球の肺「アマゾン」の木々は気候変動でどんな影響を受けているのか

地球最大の熱帯林であるアマゾンは、「地球の肺」とも呼ばれ、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収して蓄える、重要な炭素貯蔵庫です。

森林がCO2を取り込むことで、地球温暖化の進行を食い止める役割を果たしているのです。

一方で、アマゾンでは近年、気候変動による気温上昇や干ばつ、雷や強風などの極端気象が増え、森の健康や炭素吸収機能が失われるのではないかという不安も高まっていました。

とりわけ、樹齢数百年を超えるような巨大な木々は、環境ストレスの影響で最初に死にやすいという仮説もありました。

また、近年の研究でアマゾンの森林全体が「炭素吸収源(カーボンシンク)」として機能していることは知られていましたが、「森の中でどの木がどう変わっているのか」「大木・小木・中木のどれがどんな影響を受けているのか」はほとんど分かっていませんでした。

そこで研究チームは、「アマゾンの森の構造が過去数十年でどのように変化してきたのか?」「大気中CO2の増加や気候ストレスが、木のサイズや成長にどう影響してきたのか?」を明らかにすることを目的に大規模な長期観測を実施しました。

調査は、南米9カ国にわたる188の長期観測プロット(それぞれ約1ヘクタール)で行われました。

調査チームは1本1本の木の直径を地道に測り続け、合計で数十万本に及ぶ木の成長記録を集積。

これらの観測データは、世界有数の熱帯林モニタリングネットワークであるRAINFORにより統合されました。

このようなスケールと緻密さでアマゾンの木の成長とサイズ構造を追跡した研究は、世界でも初めてです。

アマゾンの古い木々は、CO2増加に伴って年々太くなっている

では、この30年でアマゾンの木々には何が起きていたのでしょうか?

研究の結果、アマゾン全域の木の「平均的な太さ(幹断面積)」は10年ごとに約3.3%増加していました。

特に注目すべきは、幹の直径が40センチを超えるような巨大な大木は、10年ごとに約5.8%というさらに速いペースで太くなっていたということです。

こうした変化はアマゾン全域で一貫して観察され、森全体で「ごく一部の巨大な木が主役となる」構造へとシフトしていることがわかりました。

この「太り続ける」現象の主な要因は大気中のCO2増加だと考えられます。

CO2が増えることで、木は同じだけの光を受けていても、より効率よく光合成し、成長できるようになります。

この影響は、大木にも、暗い林床で生きる小木にも現れ、「大木がより有利になる」効果と、「小木も生き残りやすくなる」効果が同時に起きていることが示されました。

気候変動による高温や干ばつが「大木を先に殺す」という仮説もありましたが、少なくともこの観測期間では、大木の死亡率が増える兆候は見られませんでした。

特に、大木は全体の炭素吸収量の多くを担っていることが、これまでの研究でも指摘されてきました。

研究チームも、「最も大きな1%の木々が、森林が貯蔵・吸収する炭素量の約半分を占めている」と述べています。

ただし、アマゾンの巨大な木々が太くなる傾向が未来永劫続く保証はありません。

木がCO2を取り込み成長できるのは、土壌にリンやカリウム、カルシウムなどの栄養分が十分あることが前提です。

アマゾンでは植物、微生物、菌類、昆虫などあらゆる生物が同じ資源をめぐって競争しており、今後栄養分の限界でCO2効果が頭打ちになる、あるいは逆転するリスクも指摘されています。

さらに、「大木」はたとえ森を再生して植え直しても、すぐには戻りません。

古い森の大木は数百年も生きてており、一度失えば、再植林しても、同じ炭素吸収力や生物多様性を短期間で取り戻すことはできないのです。

この研究は、「成熟したアマゾンの原生林を守ること」がいかに地球温暖化対策にとって不可欠か、そして私たちの世代で失えば二度と戻らない価値がそこにあることを改めて示しています。

アマゾンの森は、気候変動にも負けず、CO2増加のもとで“太り続けて”きましたが、永遠ではありません。

古い森を守ることこそが、地球の未来を守るためにも欠かせないのです。

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参考文献

The Amazon’s Oldest Tree Are Bulking Up As CO2 Levels Rise
https://www.zmescience.com/ecology/climate/amazon-old-trees-growing-bigger/

The fattening forest: trees of the Amazon are getting bigger 
https://www.eurekalert.org/news-releases/1099393

元論文

Increasing tree size across Amazonia
https://doi.org/10.1038/s41477-025-02097-4

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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