夜間のSNS投稿は「メンタルヘルスを悪化させる」と判明

深夜、ついついスマホを手に取り、SNSを眺めたり投稿したりした経験はありませんか?

英ブリストル大学(University of Bristol)の最新研究により、こうした「夜中のSNSアクティビティ」が、私たちの心の健康、つまり、メンタルヘルスに悪影響を与えていることが明らかになりました。

寝る前のちょっとした投稿が、翌日の気分や幸福感にまで影響を及ぼしているかもしれません。

研究の詳細は2025年10月9日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • SNSは「いつ」使う?時間帯によるメンタルへの影響とは
  • 夜間投稿が「幸福感」を下げる科学的証拠

SNSは「いつ」使う?時間帯によるメンタルへの影響とは

SNSの利用は現代社会に深く根付いており、日中のみならず深夜にも多くの人がX(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどで情報発信を行っています。

しかし、SNSとメンタルヘルスの関係については、これまで「どれくらい使っているか(利用頻度)」ばかりに注目が集まり、「いつ使っているか」には十分な科学的検証がなされていませんでした。

そこで研究チームは今回、イギリスの大規模コホートを対象に、SNS投稿の「時間帯」と心の健康との関係を直接調べた新しい調査を実施。

具体的には、成人310人(18歳〜60歳以上)が2年間にわたり投稿した合計1万8,000件超のツイートデータと、うつ(SMFQ)、不安(GAD-7)、ウェルビーイング(WEMWBS)の自己記入式スコアを照合しました。

その上で、「直近2週間の全ポストの投稿時刻」を数理統計的に処理し、「平均的な投稿時刻」が各種メンタルヘルス指標とどのように関係するかを解析しました。

この解析では、年齢や性別といった基本属性も考慮した上で、夜間(23時〜5時)に積極的にSNS投稿する人たちと、昼間に主に投稿する人たちとで、心の健康にどんな違いが現れるかが検証されました

夜間投稿が「幸福感」を下げる科学的証拠

結果は驚くべきものでした。

夜間(23時〜5時)に平均して投稿していた人は、日中に投稿していた人と比べて、精神的ウェルビーイング(幸福感)のスコアが明らかに低いことが判明したのです。

この差は統計的にも、臨床的にも有意で、ウェルビーイングの尺度で「4〜8ポイント」下回っていました。

これは日常生活の満足度や自己肯定感の違いとして体感できるレベルであり、専門家が「注目すべき影響」と評価する基準(3ポイント差)を大きく超えています。

興味深いことに、「夜間投稿」はうつや不安症状との関連性は弱く、臨床的に意味のある差は認められませんでした。

つまり、「気分の落ち込み」や「不安」といった症状よりも、“毎日を前向きに過ごせる力”や“人生の充実感”のようなポジティブな心の健康が特に夜間SNS投稿によって損なわれるという結果です。

この関連性の強さは、「一気飲み」や「マリファナ喫煙」「運動習慣」など、健康行動とメンタルヘルスの結びつきと同程度かそれ以上であることも明らかになりました。

つまり「深夜のSNS投稿」は、私たちが思っている以上に日常の幸福感を下げてしまう行動であり、これが睡眠の質や量の低下によって引き起こされている可能性が指摘されています。

一方、性別や年齢層によっては、女性や高齢者でやや強い影響が出る傾向もみられ、今後は「特定の層に対する注意喚起」も重要になりそうです。

なお、この研究は参加者のほとんどが白人・成人で、調査時期もコロナ禍であった点は注意が必要ですが、それでも「夜間SNSアクティビティと幸福感の低下」の因果的な関連を示すエビデンスとして、国際的にも非常に価値が高いといえます。

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参考文献

Tweeting at night linked with worse mental wellbeing, new study finds
https://www.bristol.ac.uk/alspac/news/2025/nighttime-tweetingmental-wellbeing.html

元論文

Active night-time tweeting is associated with meaningfully lower mental wellbeing in a UK birth cohort study
https://doi.org/10.1038/s41598-025-14745-y

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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