国立成育医療研究センター(NCCHD)などの研究グループは、日本全国の約4万7千人の女性を対象に、出生体重とその後の生殖機能との関係を大規模に調査。
その結果、低体重で生まれた女性ほど、生殖可能な期間が短くなっていることが明らかになったのです。
これまで「低出生体重」は将来の高血圧や糖尿病リスクと関連すると考えられてきましたが、「女性の生涯にわたる生殖能力」をも左右しているのかもしれません。
研究の詳細は2025年10月5日付で学術誌『Journal of Epidemiology』に掲載されています。
目次
- 出生体重と生殖機能の関係
- 低出生体重になる原因とは?
出生体重と生殖機能の関係
今回の研究は、2011~2016年に秋田県・岩手県・長野県など全国7県に住む40~68歳の女性、約4万7千人を対象に実施されました。
参加者は、自分の出生体重と、初経年齢(初めての生理がきた年齢)、閉経年齢(最後の生理の年齢)、生理不順の有無などについて回答。
出生体重は「1500g未満」「1500~2499g」「2500~2999g」「3000~3999g(基準群)」「4000g以上」の5つに分けられ、それぞれのグループごとに生殖アウトカムの差が分析されました。
すると、低出生体重児(2500g未満)で生まれた女性は、標準体重(3000~3999g)で生まれた女性と比べて、初経が約2カ月遅く、閉経が約3~7カ月早いという傾向が認められました。
この結果、「生殖可能な期間」が約5~8カ月短縮される計算になります。
また、出生体重が小さいほど「生理不順を経験したことがある」人の割合も高いことがわかりました。
さらに興味深いのは、この傾向が「1948~1959年生まれ」の年長世代で強くみられ、「1960~1977年生まれ」の比較的若い世代ではやや弱まっていたこと。
これは食生活や医療環境の変化など、時代の影響も関係している可能性があると考えられます。
低出生体重になる原因とは?
この結果を受けて、研究チームは「出生体重は単なる数字ではなく、将来の健康や人生設計に大きく関わってくる」と指摘します。
低出生体重になる主な原因には、母親の妊娠前のやせ型・喫煙・栄養状態などがあります。
日本は先進国の中でも「若い女性のやせ型」が多いことで知られており、母体の健康状態が胎児期の成長だけでなく、将来の子どもの生殖機能や健康にも影響を与える可能性があるのです。
今回の研究は、日本人女性を対象にした最大規模のコホート調査として、出生体重と生涯の生殖アウトカムを包括的に示した初めての成果です。
これまで欧米の研究では「影響あり」「関係なし」など意見が分かれていましたが、日本人では「小さく生まれた女性ほど、将来の生殖機能に影響が出やすい」ことが裏付けられました。
また、40~68歳の閉経世代を中心に調べることで、人生全体を俯瞰したデータが得られたことも大きな意義です。
ただし、今回の調査は「自己申告による出生体重」や「1977年以前生まれの世代」が中心のため、今後は若い世代でも同様の傾向が見られるか、さらなる検証が必要とされています。
参考文献
低出生体重で生まれると、生殖可能年齢が短くなる傾向に ~出生体重と成人期の生殖アウトカムの関連が明らかに~
https://www.ncchd.go.jp/press/2025/1006.html
元論文
Association Between Women’s Birth Weight and Reproductive Characteristics in Adulthood: The JPHC-NEXT Study
https://doi.org/10.2188/jea.JE20240305
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部