秘密を守る封印だった「いにしえのパズル」3選

ゲーム

世の中には、さまざまなパズルが存在しています。

ポピュラーな「知恵の輪」「ジグソーパズル」だけでなく、数学パズルや言葉遊びなどもパズルに含まれるでしょう。

そんなパズルとは、人間が人間の知性に対して仕掛けた挑戦であり、それは古来より秘密を守る封印としても利用されてきました。

ゲームの世界ではいちいちパズルで鍵が掛けられていますが、実際古代の人々もパズルで大事なものに封印をすることがあったようです。

ここでは、何世紀にもわたって人々を悩ませてきた秀逸な謎たる「いにしえのパズル」を紹介します。

目次

  • 古代ローマの「パズルロック」
  • 中国の「悪魔のワークボール」
  • 世界最古の数学パズル「ストマキオン」

古代ローマの「パズルロック」

ドイツのライン川で発見されたパズルロック
ドイツのライン川で発見されたパズルロック / Credit: MASK PUZZLE PADLOCKS/COURTESY OF JERRY SLOCUM_The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls(2022 Atlas Obscura)

難しいパズルは解ける人が限られるため、錠前(錠と鍵)として利用できます。

約2000年前の古代ローマでは、パズル型の南京錠が利用されていました。

この指輪サイズの南京錠はブロンズ製で、表面にはローマ神話のヤヌスのモチーフが彫られています。

パズルロックの解除手順
パズルロックの解除手順 / Credit: MASK PUZZLE PADLOCKS/COURTESY OF JERRY SLOCUM_The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls(2022 Atlas Obscura)

この南京錠を開けるには指輪型の鍵が必要ですが、鍵穴に鍵をさすだけではロックを解除できません。

錠前には小さなプレートやスイッチが隠されており、それらを順番に動かすことで解除できるのです。

ちなみにこの「パズルロック」は、主に貴重品を送る際の「改ざん防止の封」として利用されました。

改ざん防止に利用された
改ざん防止に利用された / Credit: MASK PUZZLE PADLOCKS/COURTESY OF JERRY SLOCUM_The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls(2022 Atlas Obscura)

差出人と受取人だけが鍵と解除方法を共有することで、パズルロックありの袋の中身が誰にも改ざんされていないことを保証したのです。

あたかも現代のインターネットで使われる暗号鍵技術のようですね。

ちなみに、現存するパズルロックはどれも正常に作動しません。

しかしながら、レプリカが作られており、そちらでは従来のパズルを楽しめるようです。

中国の「悪魔のワークボール」

悪魔のワークボール
悪魔のワークボール / Credit: HERITAGE MUSEUM OF ASIAN ART_The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls(2022 Atlas Obscura)

18世紀の中国には、「悪魔のワークボール(devil’s work ball)」と呼ばれる彫刻がありました。

材料には象牙が使用されており、独特の色合いと繊細なデザインが特徴的です。

現在では象牙の商業取引が原則禁止となっているため、同様の物が新しく作られることはないでしょう。

さて、悪魔のワークボールは、これ以上分解したり組み立てたりすることができません。

しかし、多くの人はこれを「パズルボール」と呼んできました。

その理由は、その構造と作り方にあります。

18世紀の悪魔のワークボール。内側に8つのボールが含まれている
18世紀の悪魔のワークボール。内側に8つのボールが含まれている / Credit: RIJKSMUSEUM_The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls(2022 Atlas Obscura)

悪魔のワークボールは、彫刻の施されたボールの中に、別のボールが入っています

しかも内側のボールの中には、さらに別のボールが入っており、ある作品では合計9層にもなるのだとか。

そしてこのワークボールすべては、1つの象牙の塊を削って作られています。

カプセルのように、半球を接着して内側にボールを閉じ込めるのではなく、9層すべてをただ削るだけで作り上げているのです。

では、どのように9層のボールを彫刻するのでしょうか?

この「彫刻プロセスの謎」こそが彫刻家にとってのパズルであり、現存する悪魔のワークボール自体が「パズルが完成した」ことを証明しています。

全層の穴をそろえる
全層の穴をそろえる / Credit:The Puzzle Museum

専門家によると、パズルボールの彫刻方法は、次の手順で行われるようです。

  1. 象牙の塊をボール状に削る
  2. その後、中心に向かって円錐型の穴を開ける
  3. L字型の特殊な彫刻刀を使い、内側をくりぬくようにして、外層から内側のボールを切り離す
  4. 同様の作業を繰り返し、複数の層をつくる
  5. それぞれの層の表面に彫刻を施す

言うだけなら簡単ですが、実際に作業を行える人はほとんどいないでしょう。

ちなみに、「完成品の穴を全層そろえる」というパズル的な遊び方もできるようです。

とはいえ作品自体が非常にもろいため、この方法で遊ぶ人はいません。

彫刻家が完成させたパズルとして、見て楽しむのが最善のようです。

世界最古の数学パズル「ストマキオン」

ストマキオン
ストマキオン / Credit:Hagen von Eitzen(Wikipedia)_Ostomachion

ストマキオンは紀元前287年ごろに生まれたギリシャの数学者アルキメデスに起因する作品だと考えられています。

これは、さまざまなピースを組み合わせて特定の形をつくる「シルエットパズルです。

シルエットパズル自体は現在でもポピュラーなパズルゲームの1つですが、ストマキオンは記録に残っているシルエットパズルの中で最も古いものです。

そのため世界最古の数学パズルとして多くの人に知られてきました。

さてストマキオンでは、14ピースを組み合わせて正方形になるようチャレンジします。

536パターンの解答
536パターンの解答 / Credit: Maths Careers_The Stomachion – The world’s oldest maths puzzle(2019)

上は正解例のパターンを並べたものです。

遊んでみると分かるとおり、ストマキオンを正方形にするパターンはいくつもあります。

実際2003年には、ある数学者が536パターンの答えを提出しました。

皆さんは何パターンの答えにたどり着けるでしょうか?

ぜひストマキオンの画像を拡大印刷して、世界最古のパズルにチャレンジしてみてください。

きっといにしえのパズルの奥深さを味わえるはずです。

全ての画像を見る

参考文献

The Fashion and Mystery of Ancient Roman Puzzle Locks
https://www.atlasobscura.com/articles/fashion-mystery-roman-puzzle-locks-rings-jewelry-money

The Mind-Boggling Artistry of China’s Ivory Puzzle Balls
https://www.atlasobscura.com/articles/puzzle-balls-from-guangzhou

The Stomachion – The world’s oldest maths puzzle
https://www.mathscareers.org.uk/the-stomachion-the-worlds-oldest-maths-puzzle/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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