【史上初】自然にミイラ化したチーターの遺体を発見

ミイラ

驚きのミイラが見つかりました。

サウジアラビア北部の洞窟から、世界初となる「自然にミイラ化したチーター」の完全な遺体が発見されたのです。

ミイラ化といえば、古代エジプトのピラミッドや猫のミイラが思い浮かびますが、チーターのような大型ネコ科動物が「自然に」「完全な形で」ミイラ化して見つかるのは、科学史上初とのことです。

研究の詳細は2025年8月31日付でプレプリントサーバ『Research Square』に公開されています。

 

目次

  • 洞窟で見つかった“奇跡”のミイラ
  • ミイラ化したチーターの種類は?

洞窟で見つかった“奇跡”のミイラ

今回、発見の舞台となったのは、サウジアラビア北部に広がるラウガ洞窟ネットワークです。

サウジアラビアの野生生物ナショナルセンター(NCW)の研究チームがこの洞窟の奥深くで発見したのは、7体もの「自然ミイラ化したチーター」の遺体、さらに54体分に相当する骨格、そして彼らが食べていたと考えられる獲物の骨でした。

最も古い骨格は約4223年前、最も新しいミイラ個体でも約127年前のものでした。

ミイラ化した遺体は、肉や皮膚がほぼ完全な形で保存されており、まるで昨日まで生きていたかのようなリアルさです。

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発見されたチーターのミイラ/ Credit: Ahmed BOUG et al., Research Square (2025) CC BY 4.0

この保存の秘密は「洞窟環境」にあります。

乾燥していて温度や湿度がほぼ一定という特殊な条件が、細菌による腐敗を防ぎ、偶然にもミイラ化をもたらしたのです。

洞窟の中では、現在でもオオカミが出入りしている様子がカメラトラップで確認されていますが、チーターのような大型ネコ科が洞窟を使う例は、現生の個体ではほとんど報告がありません。

では、なぜチーターたちは洞窟に入り、そして出られなくなったのでしょうか?

滑りやすい急斜面を降りて洞窟内に入り込み、そのまま出られなくなって命を落とした可能性が考えられています。

今回の発見は、絶滅種を含むチーター類の生態の多様性や、環境適応力の一端を示す貴重な証拠となりそうです。

ミイラ化したチーターの種類は?

かつてアラビア半島全域に広く分布していたチーターは、人間による開発や狩猟の影響で、すでにこの地から姿を消してしまいました。

その生息域は歴史的に見ても98%以上が失われていると推定されています。

今回のミイラ個体や骨格からは、DNAの全ゲノム解析も実施されました。

その結果、最も古い個体は「ノースウェスト・アフリカチーター(学名:Acinonyx jubatus hecki」系統に近い遺伝的特徴を示し、比較的新しい個体は「アジアチーター(学名:A. j. venaticus)」に近いことが分かりました。

これはアラビア半島がさまざまなチーター系統の交差点だったこと、そして単一の遺伝子系統だけでなく、複数の祖先集団が存在していたことを意味します。

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絶滅危機にあるアジアチーター/ Credit: en.wikipedia

この知見は、近年注目されている「リワイルディング(野生復帰)」計画にとっても極めて重要です。

アジアチーターは現在、イランにごくわずかしか生息しておらず、絶滅寸前の状態です。

これまで、アラビア半島でのチーター再導入には「アジアチーターの遺伝子にこだわるべきか」が大きな課題でしたが、今回の発見は「北アフリカ系統など他の遺伝的に近縁な個体群」も候補にできる可能性を示しました。

また、洞窟が「古代生物多様性の保存庫」として機能していたことも明らかになりました。

アラビア半島の乾燥地域では、過去の動物遺体がこれほど良好な状態で発見されることは極めて珍しく、これが絶滅動物の研究や野生動物管理、そして生態系復元の“ヒント”になるかもしれません。

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参考文献

Perfectly Mummified Cheetahs Are The First Naturally Mummified Big Cats Ever Found
https://www.iflscience.com/perfectly-mummified-cheetahs-are-the-first-naturally-mummified-big-cats-ever-found-80991

元論文

Mummified cave Cheetah inform rewilding actions in Saudi Arabia
https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-7168185/v1

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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