はじめに:あなたの会社の「見えないコスト」、放置していませんか?
レンダリングの進捗バーを眺めるだけの時間。巨大なデータセットの読み込みを待つ時間。これらは、現代のプロフェッショナルな現場で日常的に発生する「待ち時間」です。高性能なCPUやGPUに多額の投資をしても、ストレージの速度が追いついていなければ、その能力は宝の持ち腐れ。この「待ち時間」は、高価な機材と専門人材の時間を浪費する、目に見えない継続的なコストに他なりません。
従来、ストレージの増強策であるRAIDは、ディスク故障からデータを守るための「守り」の技術として認識されてきました。しかし、最新規格「PCIe 5.0」の登場により、RAIDは今、ワークフローのボトルネックを解消し、生産性を飛躍的に向上させる「攻め」の構成として注目を浴びています。
本稿では、RAIDの真価を改めて問い直し、皆様の業務から「待ち時間」を少なくする、具体的なソリューションをご紹介します。
目次
RAIDの基本:「守り」だけでなく「攻め」の選択肢
RAIDとは、複数のディスク(HDDやSSD)を束ね、あたかも一つの高性能なドライブとして利用する技術です。その構成(RAIDレベル)によって、得られる効果が異なります。
- RAID 1(ミラーリング):データを完全に複製し、1台のディスクが故障しても業務を止めない「守り」の構成。
- RAID 0(ストライピング):データを分散して読み書きし、ディスクの台数分だけ速度を向上させる「攻め」の構成。冗長性はありませんが、圧倒的な速度が手に入ります。
そして、このRAIDを実現する方法には、OSの機能を使う「ソフトウェアRAID」と、専用カードを用いる「ハードウェアRAID」があります。プロの現場で最高のパフォーマンスと安定性を求めるなら、CPUに負荷をかけず、独立して高速処理を行うハードウェアRAIDが必須の選択肢です。
PCIe 5.0 RAID 0がもたらす異次元の速度
なぜ今、RAIDが「攻め」の構成になるのか。その答えが、PC内部のデータ転送規格の最新版「PCIe 5.0」です。
PCI(PCI-Express)とは、グラフィックボードやネットワークカードなど、パソコン内部で高性能な周辺機器を接続するための、高帯域幅のシリアル拡張バス・インターフェース規格です。世代やレーン数(x1, x4, x16など)によって転送速度が決まり、次世代の規格では各世代の2倍の速度が実現されるなど、高速データ転送を実現するために進化しています。
従来のPCIe 4.0の2倍の帯域を持つ、複数のPCIe 5.0対応のNVMe SSDを、ハードウェアRAIDカードが複数台束ねることで、その性能を向上させるのです。
下の表が示すように、PCIe 5.0のRAID 0構成は、従来のストレージとは比較にならないパフォーマンスを実現します。
ストレージの種類 | 4台でのRAID 0 転送速度 (目安) |
---|---|
SATA SSD | 約2,200MB/s |
PCIe 4.0 NVMe SSD | 約28,000MB/s |
PCIe 5.0 NVMe SSD | 約56,000MB/s |
現場はどう変わる?クリエイティブとAI開発の未来
毎秒56,000MBという速度は、実際の業務にどのような変革をもたらすのでしょうか。
For Creators:待ち時間を創造の時間へ
- 8K/12K映像のリアルタイム編集:面倒な「プロキシファイル」の作成が不要に。撮影した素材をそのまま、ストレスなく編集できます。
- レンダリング時間の大幅短縮:巨大なテクスチャや3Dアセットの読み込みが瞬時に完了。試行錯誤のサイクルを高速化し、作品のクオリティ向上に直結します。
For AI & Data Scientists:高価なGPUを遊びにしない
- GPUの遊休問題を解決:AIの学習中、GPUはストレージからデータが来るのを待っている時間が多く発生します。超高速RAIDはGPUを待たせることなくデータを供給し続け、学習時間を劇的に短縮。高価な機材の稼働率を限りなく100%に近づけます。
超高速ストレージを活かすデータ転送術「FastCopy」
せっかく超高速なRAID環境を構築しても、ファイルをコピーする手段が遅くては意味がありません。実は、Windows標準のエクスプローラーでは、PCIe 5.0 RAIDの性能を十分に引き出せないのです。
そこでお勧めとなるのが、高速ファイル・コピーツール「FastCopy」です。
FastCopyは、ストレージの性能を限界まで引き出すように設計されており、Windows標準のコピーとは比較にならない速度でデータ転送を実行します。特に、SSD-RAID環境向けに並列動作を最適化する設定があり、設定変更によるチューニングも可能。FastCopyは、大量のデータ転送を毎日のように行うクリエイターとって、最高のパフォーマンスを引き出すための必須ツールと言えるでしょう。
アスクが推奨する最新ソリューション
株式会社アスクは、皆様の課題を解決するため、クラス最高のPCIe 5.0対応ソリューションをそれぞれの環境に合わせてご提供します。
RAIDカード:HighPoint Rocket R7608A、Areca ARC-1689-8N
HighPoint Rocket R7608Aと、Areca ARC-1689-8Nは、いずれも最先端のPCIe 5.0 x16 NVMe RAIDアダプターであり、最大8台のNVMe M.2ドライブをサポートします。両製品は、要求の厳しいワークロードにおける極めて高いストレージ帯域幅の必要性に応えるため、Broadcom PEX89048 という共通の強力なICを搭載しています。
HighPoint Rocket R7608Aの詳細はこちら
NVMe SSD:Samsung 9100 PROシリーズ
RAIDカードの能力を最大まで引き出すには、単体において転送速度の速いNVMe SSDが不可欠です。圧倒的な単体性能と高い耐久性を兼ね備えたSamsung 9100 PROは、要求の厳しい業務用途にも安心して使用できる、最高峰のNVMe SSDです。
CPU(プラットフォーム):AMD Ryzen Threadripper Pro&AMD WRX90
AMD環境(特にRyzen Threadripper PRO)は、PCIe 5.0 RAIDカードのフルポテンシャルを解放する上で、アーキテクチャ的に優位な選択肢です。このプラットフォームが提供する圧倒的な数のPCIe 5.0レーンは、RAIDカード、複数のGPU、およびその他の高性能アドインカードを同時に、帯域幅の競合なしで運用することを可能にします。
AMD Ryzen Threadripper Proの詳細はこちら
アスクオリジナルカスタムモデル:Lenovo ThinkStation P8カスタム
株式会社アスクでは、HighPoint社製RAIDカード、Samsung 9100 PROを組み合わせたオリジナルカスタムモデルの販売も行っております。
まとめ
これまで当たり前のように受け入れてきた「待ち時間」は避けられない課題ではありません。
高性能ストレージへの投資は、単なるIT経費ではなく、企業の最も価値ある資産である「人材」と「時間」の価値を最大化する戦略的投資といえるでしょう。
皆様のワークフローをいかに変革し、ビジネスを加速させることができるか、ぜひ一度、株式会社アスクの専門スタッフにご相談ください。
監修者:株式会社アスク 大竹 諭
※ 記載されている会社名および商品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。