カフェインはプレッシャー下での「粘り強さ」を高めると判明

カフェイン

眠気覚ましや集中力アップのイメージが強いカフェインですが、米アマースト大学(Amherst College)の研究で、カフェインには難題に直面したときに粘り強く頑張る力を引き出す効果があることが明らかになりました。

しかもこの効果は、プレッシャーやストレスを感じているときほど強く表れるといいます。

コーヒーやエナジードリンクが、単なる気休めではなく「困難を乗り越える力」に本当に役立つかもしれない。

そんな科学的根拠が少しずつ見えてきました。

研究の詳細は2025年8月6日付で学術誌『Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental』に掲載されています。

目次

  • 「カフェイン=集中力アップ」だけじゃない?意外な「粘り強さ」効果
  • 「ストレス×カフェイン」であきらめない力がアップ?

「カフェイン=集中力アップ」だけじゃない?意外な「粘り強さ」効果

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Credit: canva

カフェインと聞くと、多くの人は「眠気覚まし」や「頭をスッキリさせる成分」といったイメージを持つでしょう。

確かに、カフェインは脳を興奮させて注意力や覚醒度を高める効果が知られています。

でも、カフェインの力はそれだけにとどまりません。

研究チームは今回、「困難な課題に挑むとき、カフェイン摂取が行動や気持ちにどんな影響を与えるのか?」を明らかにしようと考えました。

実験は大学生329人を対象に行われ、被験者は3つのグループに分けられました。

1つ目は「ガムなし」、2つ目は「カフェインなしのガム(偽薬)」、3つ目は「カフェイン入りガム」を噛んでもらうというものです。

カフェインの量は最初40mg(コーヒー半杯ほど)、2回目は100mg(コーヒー1杯分ほど)と変化をつけて検証されました。

被験者たちは「隠し絵タスク(複雑なイラストの中から物を探す)」や「アナグラム(並べ替え文字問題)」などに挑戦しました。

ただし、一部の課題には「絶対に見つからない物」や「絶対に解けない単語」が含まれており、途中で“行き止まり”にぶつかるよう工夫されていました。

ここで研究者が注目したのは「参加者が見つけられないものをどれだけ粘って探し続けるか?」という“粘り強さ”です。

要するに「もう無理!」と思って諦めるまでの時間や、諦めずに頑張る姿勢がカフェインでどう変わるのかを調べたのです。

結果、カフェイン40mg程度では明確な効果は見られませんでしたが、100mg(コーヒー1杯分相当)のカフェインを摂取したグループでは、難しい課題でも粘り強く探し続ける傾向が強まることが分かりました。

特に「答えが見つからないアイテム」に取り組む時間が、平均38%から52%にまでアップしていたのです。

しかも、この効果はタスクの種類によって差が出ることも確認されました。

つまり、すべての作業で「カフェイン=粘り強さアップ」とは限らないものの、少なくとも「難題に挑戦する時の持続力」を高める力があるのは確かなようです。

「ストレス×カフェイン」であきらめない力がアップ?

さらにチームは「ストレス状態」と「カフェイン摂取」が組み合わさるとどうなるか、という点も実験で検証。

このパートでは「冷水ストレステスト(氷水に手を浸し見られるという軽い緊張・ストレス)」を使い、実験参加者を「ストレス群」と「非ストレス群」に分けて、再びカフェインガムを噛んでもらいました。

この実験では、まずストレスを受けた人は「隠し絵タスク」の解答スピードがアップするという現象が観察されました。

そして最も注目されたのが、「ストレスを受けたうえでカフェインを摂取したグループ」は、そうでないグループに比べて「見つからないアイテム」を探し続ける時間や集中力が大幅に伸びていた点です。

一方で、ストレスを受けていない参加者の場合、カフェイン摂取による「粘り強さ」はむしろ若干下がる傾向が見られました。

この結果から、カフェインは「緊張やプレッシャーを感じている場面」でこそ、その真価を発揮しやすいと考えられます。

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Credit: canva

なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

研究者らは、カフェインが脳内のドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に働きかけるほか、「疲労感の低減」や「やればできるという気持ち(努力と報酬の見積もり)の変化」など、様々な仕組みで粘り強さを後押ししていると考えています。

ただし今回の実験には限界もあります。

たとえば「もともとコーヒーが好きな人」「普段からよくカフェインを摂っている人」と「そうでない人」では効果に差が出る可能性があることや、「粘り強さ」を測るタスクの種類によっても結果が変わる点などが挙げられます。

このため「カフェインを摂れば必ずどんな課題も諦めず頑張れる!」という単純な話ではありませんが、ストレス下で困難に直面したときにはカフェインが「もう少しだけ頑張ってみよう」という気持ちを高めてくれる可能性が十分にあるようです。

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参考文献

Study finds caffeine increases task persistence under pressure
https://www.psypost.org/study-finds-caffeine-increases-task-persistence-under-pressure/

元論文

Effects of Caffeine and Stress on Persistence and Performance in an Unsolvable Visual Search Task in Humans
https://doi.org/10.1002/hup.70014

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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