科学が教える「最高のハグ」とは?

あなたは最近、誰かとハグをしましたか?

海外ドラマや映画では、ごく自然にハグを交わすシーンが登場しますが、日本人にとっては「少し照れくさい」「なじみがない」ものかもしれません。

それでも「ハグで幸せを感じたい」「タイミングがあればスマートなハグをしたい」と思う人は少なくないはず。

そんなハグの魅力や“正解”について、ドイツのハンブルク医科大学(MSH)の心理学教授であるセバスチャン・オクレンブルク博士が教えています。

いくつかの科学的証拠から「最高のハグ」の条件が分かっているのです。

目次

  • 最高のハグには圧力や時間が重要
  • 相手に合わせると最高のハグに近づく

最高のハグには圧力や時間が重要

日本では、ハグは欧米ほど日常的な習慣ではありません。

親しい友人や恋人、あるいは親子のスキンシップとして行われることはあっても、挨拶やコミュニケーションの基本動作としての“ハグ文化”は根付いていません。

しかし近年、親子関係の向上や心の安定、自己肯定感を高める方法として、ハグの効果に注目が集まりつつあります。

もしハグをもっと自然に使いこなせたら、人間関係も人生も豊かになるのでは?

そんな思いから、“科学的に最高のハグ”について知りたい人も増えています。

セバスチャン・オクレンブルク博士が教える「最高のハグの6つのポイント」のうち、まずは前半の3つを詳しくみていきましょう。

1. しっかりとした圧力が「つながり」を生む

ただ軽く触れるだけのハグでは、実は“心のつながり”は強く生まれません。

2025年に発表された研究では、被験者が「重いブランケットによる深い圧力」と「軽い圧力」の2種類のハグ感覚を体験しました。

その結果、しっかりとした深い圧力のほうが、より強い安心感や社会的つながりを感じやすいことが明らかになりました(Damon et al., 2025)。

つまり、相手に対する気持ちをこめて、やさしく、でもしっかりと抱きしめることが「最高のハグ」の第一歩なのです。

ただし、力を入れすぎず、相手の反応に合わせるのも重要です。

2. ハグの時間は「5~10秒」がベスト

「どれくらいの時間ハグすればいいの?」という疑問にも、科学は答えを出しています。

ロンドンの研究チームが行った実験では、1秒、5秒、10秒のハグを比較した結果、5秒や10秒のハグが最も心地よいと感じられることが示されました(Dueren et al., 2021)。

さらに、友人同士の平均的なハグの長さは約3秒、恋人同士では約7秒というデータも得られています(Ocklenburg et al., 2025)。

つまり、1秒では短すぎ、10秒を超えると気まずくなることもあるが、5~10秒の範囲が多くの人にとって“ちょうどいい”と言えそうです。

3. ハグの型に正解はない

「どうやって抱きしめればいい?」という疑問にも、科学は明快な答えをくれます。

「クロスハグ」(お互いの肩と腰を交差して抱く)と「ネックウエストハグ」(一方が相手の肩、もう一方が腰を抱く)の2種類の抱き方を比較したところ、どちらも同じくらい快適で、優劣はありませんでしたDueren et al., 2021)。

つまり、「型」よりも大切なのは、“気持ち”や“シチュエーション”。

自分と相手にとって自然な形を選ぶのが、科学的にも正しい選択なのです。

相手に合わせると最高のハグに近づく

性格や感情、そして「誰とハグするか」に焦点を当てた後半の3ポイントを見ていきましょう。

4. 性格や気分に合わせて「距離感」を調整

「心配性」「神経質」といった性格傾向が強い人は、ハグでも少し距離をとりたがる傾向があります。

逆に「責任感が強く、社交的な人」はより密着したハグを好むことが分かっています(Ocklenburg et al., 2025)。

相手の性格や、その時の気分に配慮して「距離感」を調整することが、最高のハグを成立させるコツです。

5. 感情が高まると「左腕主導」が増える

ハグの際、多くの人は無意識に右腕から抱き始めるようです。

しかし、「とても感情が高まった」ハグでは、左腕を先に出す人が増えることが明らかになっています(Packheiser et al., 2019)。

これは、感情を司る右脳が左半身の動きをコントロールしているためと考えられています。

「思い切り気持ちを込めてハグしたい!」というときには、左腕から包み込むのは“科学的”な選択なのかもしれません。

6. 大切な人とのハグは特別な効果

日本の研究では、親子(親と乳児)でハグをすると、双方の心拍数が下がってリラックス効果が生じることが示されています(Yoshida et al., 2020)。

一方、見知らぬ女性と赤ちゃんでは同じ効果が得られませんでした。

つまり、「誰とハグするか」こそが、最高のハグの真価を左右する最大のポイントなのです。

ここまで考慮してきたように、科学は、ハグに“しっかりとした圧力”や“ちょうどいい長さ”、“相手に合わせる気遣い”が大切だと教えてくれます。

そして、信頼できる人とのハグには特別なリラックス効果があることも分かっています。

もし大切な誰かがそばにいるなら、ぜひ一度、科学が後押ししてくれる“最高のハグ”を試してみてください。

きっと、あなたの心にも温かな変化が生まれるはずです。

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参考文献

6 Rules for a Perfect Hug, According to Science
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-asymmetric-brain/202509/6-rules-for-a-perfect-hug-according-to-science

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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