「AI分身の美人コンテスト」がミス・イングランドで導入!自分のデジタルクローンで競い合う!

今やAI画像やアバターは、リアルな人間と見分けがつかないレベルにまで進化しています。

そんな時代の象徴ともいえる出来事が、イギリスの伝統ある美人コンテスト「ミス・イングランド」で起こりました。

2025年、同大会で初めて「AI分身(アバター)」を使った新たな審査ステージが導入され、参加者たちが自分自身のデジタルクローンを競わせることになったのです。

目次

  • 伝統と革新が交錯するミス・イングランドにて、「AI分身ステージ」が誕生
  • 「本物らしさ」とは?広がる議論とAI分身社会のインパクト

伝統と革新が交錯するミス・イングランドにて、「AI分身ステージ」が誕生

「ミス・イングランド」は、1928年に始まったイギリスを代表する美人コンテストです。

単なる外見だけでなく、知性や社会貢献、個性も重視されるよう進化してきました。

2009年には水着審査を廃止し、才能やボランティア活動、社会問題への関心を評価する新たな部門も追加されています。

そんなミス・イングランドが2025年に導入したのが、AIモデルのステージである「Business Avatar Round」です。

このステージでは、参加者自身の姿やしぐさ、表情を2時間かけて撮影し、そのデータをもとに本人そっくりのAI分身(デジタルクローン)が作られます。

作成されたAI分身は、主催者を通じてブランドや企業に紹介され、どれだけ多くの仕事(契約)を獲得できるかを競います。

そして最も多くの契約を獲得した参加者が、決勝ラウンドに進むことができます。

この新しい審査を企画した背景には、ファッションや広告業界全体で急速に進む「AIモデル」や「バーチャル化」の波があります。

今やAI技術によって、実在の人物そっくりのモデルがバーチャル空間で活躍し、人間の仕事を置き換えつつあります。

ミス・イングランド主催者は「現代のデジタル社会に適応する力や、新しいビジネスの形を学ぶ場にしたい」と語っています。

AIを使った自己表現やブランド発信力も、次世代の女性像の一つとして評価する意図があるのです。

では、実際にこの新たな取り組みへの反響はどのようなものでしょうか。

「本物らしさ」とは?広がる議論とAI分身社会のインパクト

この画期的なAIステージには、参加者や業界関係者の間でさまざまな反応が広がっています。

実際にAI分身を作成したモデルの一人、23歳のジェシカ・プリスキンさんは、物理学を専攻した現役モデルです。

彼女は「変化に適応しないと時代に取り残されます。AIの力を活用することは、新しい世界で生き残るために必要です」と前向きに語っています。

一方で、「AIアバター参加は断固拒否」という声もあります。

セミファイナリストのフィービー・マイカリデスさんは、「コンテストの核心は“本物であること”です。人々にはリアルな私自身とつながってほしいです」と述べ、ディープフェイクや偽情報のリスクについても強い懸念を表明しました。

また、モデル業界の広報担当者ハリエット・ウェブスター氏は「AIクローンは個性を消し去り、人間ならではの存在感や魅力を奪う」と批判しています。

こうしたAIモデルやアバターが広告やファッション業界に登場する動きは急速に拡大しています。

2023年、2024年にはLevi’sやH&MといったファッションブランドがAI生成モデルを広告に起用したとで激しい反発を受けました。

また2025年8月にはGuessがVogue誌でAIモデルをフィーチャーし、やはり論争を呼びました。

さらに、ハリウッドでも俳優の肖像権や声の無断AI利用をめぐりストライキが起き、音楽業界でもAIによる著作権侵害問題が表面化しています。

企業にとってAI分身の導入は「休みも給料も要らず、無限に働ける」合理的な選択とされる一方で、実際の人間モデルやクリエイターの仕事や価値が脅かされる現実も見えてきたようです。

今回のミス・イングランドAIステージは、こうした「デジタル社会における人間とAIの共存」「本物らしさの意味」「自己表現と社会的価値」を問う、最前線の取り組みと言えます。

AI分身とリアルな人間が共存し、ときに置き換わる時代。

「美しさ」とは何か、「個性」とは何か。

これからは誰もが、「本物らしさ」とどう向き合うのか問われることになるのでしょう。

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参考文献

Miss England Contestants Are Now Competing With AI Versions of Themselves
https://www.zmescience.com/future/miss-england-contestants-are-now-competing-with-ai-versions-of-themselves/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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