「生きた肉を食らうウジ虫」に寄生されていた米国女性が発見される

ハエの幼虫であるウジと言えば、普通は死体や腐敗した肉に群がるものというイメージがあるかもしれません。

ところが自然界には、生きた哺乳類の肉に寄生し、傷口から侵入して肉を食い進むウジ虫が存在します。

そんな悪夢のような寄生虫に、米国メリーランド州のある女性が実際に感染していたという、極めて稀で衝撃的な症例が2025年8月、明らかになりました。

この寄生虫の正体は「ラセンウジバエ(学名:Cochliomyia hominivorax)」。

数十年前にアメリカ本土では根絶されたはずのこのハエが、再び脅威として浮上しています。

目次

  • 生きた肉に寄生する「ラセンウジバエ」とは?その恐るべき生態
  • アメリカで「ウジ虫に感染した女性」が発見される!

生きた肉に寄生する「ラセンウジバエ」とは?その恐るべき生態

ラセンウジバエ(学名:Cochliomyia hominivorax)は、ウジ虫(幼虫)の形で生きた哺乳類に寄生し、内部から組織を食い荒らす極めて特殊な寄生性のハエです。

このハエの成虫は一見すると普通のハエに似ており、特段目立つ外見ではありません。

しかし問題はそのライフサイクルにあります。

メスのハエは、哺乳類の開いた傷口やへその緒、目元などに200〜300個の卵を産みつけます。

卵は12〜24時間で孵化し、ウジ虫が生まれるとすぐに宿主の肉に食い入り、生きた組織をエサにして成長していきます。

幼虫は体を螺旋状にねじ込みながら進み、まるで生体を内側から削り取るように侵食します。

この様子から“Screwworm(スクリューワーム)”と呼ばれており、日本語ではラセンウジバエと訳されます。

この寄生行動は動物にとって非常に致命的で、成牛であっても1〜2週間以内に死亡することがあるとされます。

対象は家畜(牛、馬、豚)にとどまらず、犬や猫、そして人間も例外ではありません。

この恐るべき寄生虫を米国から根絶するため、1950年代〜1980年代にかけて大規模な防除作戦が展開されました。

主な方法は「不妊虫放飼法」と呼ばれるものです。

放射線で不妊化したオスのハエを大量に人工繁殖し、散布します。

これにより野生のメスと交尾させ、次世代が生まれなくなることで個体数を減らしていく方法です。

この方法は驚くほど効果的で、1982年には米国本土での駆除が完了し、それ以降も再侵入を防ぐための国際的な監視体制が維持されてきました

しかし、2023年以降、この寄生虫がメキシコ南部で検出されており、北上の兆しが見られています。

そしてこの度、アメリカ在住の女性が、このラセンウジバエに寄生されていたことが分かりました。

アメリカで「ウジ虫に感染した女性」が発見される!

今回確認されたケースは、メリーランド州に住む女性が中央アメリカのエルサルバドル旅行後に発症したものでした。

2025年8月4日、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とメリーランド州保健局によって正式にラセンウジバエの感染が確認されました。

症状は、皮膚の違和感から始まり、傷口には不自然な動きが見られ、医師の診察によりウジ虫の寄生が発見されたのです。

検査の結果、ラセンウジバエであると確定。

女性はすでに治療され、現在は回復済みです。

これは米国で報告された、旅行に起因するラセンウジバエ感染の人間症例としては、公式に確認された最初のケースです。

米国保健福祉省(HHS)は「現時点ではヒトへの国内感染拡大のリスクは非常に低い」と発表しています。

その一方で感染が広がっている中米地域では数百件の人間感染が報告されています。

例えば2025年7月の米国大使館の健康警報によれば、ニカラグアでは過去1年間に124件の人間感染が確認されており、重篤な症例が複数存在しています。

中には「脳にまでウジが達していれば命を落としていた」という医師の証言も報告されています。

こうした背景から、アメリカ合衆国農務省(USDA)は1億ドルを超える予算を投じて、不妊ハエの製造施設をテキサス州に新設し、週3億匹のハエを製造できるよう計画しています。

今回の事例は、単なる”珍しい寄生虫ニュース”にとどまらず、再定着による数十億円規模の畜産業被害や、国際間の防疫連携の必要性を改めて浮き彫りにする警鐘となっています。

ラセンウジバエは、ほんの小さな傷口から感染が始まり、自覚症状が乏しいまま進行するため、発見が遅れるなら命取りになり得る寄生虫です。

気候変動によってラセンウジバエの生息可能域が北上し、さらに国際的な人や動物の移動が増えている現代では、こうした“過去に封じられた脅威”が再び牙をむく可能性が高まっているのです。

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参考文献

Rare, Flesh-Eating Parasite Confirmed in US in Concerning Development
https://www.sciencealert.com/rare-flesh-eating-parasite-confirmed-in-us-for-first-time-in-decades

USDA Announces Sweeping Plans to Protect the United States from New World Screwworm
https://www.usda.gov/about-usda/news/press-releases/2025/08/15/usda-announces-sweeping-plans-protect-united-states-new-world-screwworm

Health Alert: Screwworm in Nicaragua
https://ni.usembassy.gov/health-alert-screwworm-in-nicaragua/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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