いまや出会いの場はネットやアプリの中が多くなっています。
スワイプひとつで恋が始まる時代ですが、「どこで出会ったか」が恋愛の満足度に影響を与えるとしたらどうでしょうか。
ポーランド・ヴロツワフ大学(University of Wrocław)による最新研究で、オフラインで出会ったカップルは、オンラインで出会ったカップルよりもわずかに高い「恋愛満足度」を示す傾向が明らかになりました。
研究は50か国、1万人以上を対象に行われた大規模調査。
アプリ全盛の現代においても、意外にも「昔ながらの出会い方」に優位性が見られるのです。
研究の詳細は2025年8月8日付で学術誌『Telematics and Informatics』に掲載されています。
目次
- 世界50か国を対象とした大規模調査
- オフラインで出会った方が満足度は高い
世界50か国を対象とした大規模調査
今回の調査では、50か国から1万人以上の成人を、年齢・性別・居住地(都市か地方か)といった条件に合わせて抽出。
そのうち恋愛関係にある6,646人を対象に、出会いの経緯や関係の質について詳細に分析しました。
参加者は、パートナーとの出会いが「オンラインかオフラインか」を答えた上で、恋愛における満足度、そして「親密さ」「情熱」「コミットメント(関係を続けたい意志)」という3つの愛の要素について回答しました。
これらは心理学でよく用いられる「三角理論の愛の尺度」で測定されています。
調査の結果、全体の16%が「オンラインで出会った」と回答。
2010年以降に始まった関係では21%に上昇し、特にアメリカでは2023年に始まった恋愛の約半数がオンライン発でした。
また、オンラインで出会ったカップルは新しい関係である傾向が強く、社会経済的地位がやや低いという特徴がありました。
ただし年齢や性別、学歴、都市と地方の違いでは差が見られず、オンラインデートはすでに幅広い層に定着していることも確認されました。
興味深いのは、「若者ほどオンラインで出会う」という想定が当てはまらなかったことです。
コワル博士によれば、年齢層を問わずほぼ同じ割合でオンラインデートが利用されており、世界的に広く浸透していることが示されました。
オフラインで出会った方が満足度は高い
では、オンラインとオフラインで恋愛の質にどのような違いがあるのでしょうか。
分析の結果、オフラインで出会ったカップルは、関係満足度が高く、愛の3要素である「親密さ」「情熱」「コミットメント」の全てで優位を示しました。
特に「コミットメント」において差が大きく、関係を維持しようとする強い意志がオフライン出会い組に多く見られたのです。
この傾向は50か国の大半で確認され、特に男性と33歳以上の参加者において顕著でした。
一方、女性や若年層では差が小さいことが分かっています。
なぜオンラインで出会った関係はやや満足度が低い傾向にあるのでしょうか。
研究チームは明確な因果を断定していませんが、いくつかの可能性を指摘しています。
ひとつは「背景の違い」です。
オンラインで出会うカップルは、教育や宗教、民族などバックグラウンドが異なることが多く、共通性が少ないことが関係の質に影響している可能性があります。
心理学ではこれを「ホモガミー(類似性)」と呼び、類似性が低いほど関係満足度が下がる傾向が報告されています。
もうひとつは「選択肢の多さ」です。
アプリでは無数の候補者から選べる一方で、その豊富さが逆に迷いや後悔を生みやすく、最終的な満足度を下げてしまうことがあります。
さらに、アルゴリズムによるマッチングが不透明であったり、プロフィールに誤った情報が含まれていたりする点も信頼や満足度を損なう要因とされています。
ただし、これはあくまで平均的な傾向であり、オンライン出会いが必ず不利というわけではありません。
コワル博士自身も「オンラインで出会って強く幸せな関係を築いているカップルは数多く存在する」と強調しています。
今回の調査は「オンラインかオフラインか」というシンプルな分類に基づいており、出会い系アプリとSNS、オンラインゲームなど細かい区別はされていません。
また横断調査であるため、長期的に追跡したわけではなく、今後は縦断研究が必要とされています。
それでも、この国際調査が示すメッセージは明快です。
出会いの場所がどこであれ、恋愛の質を左右するのはその後の関係をどう築き上げるかにかかっています。
オンラインの普及によって出会いの可能性は広がりましたが、「出会い方」以上に「どう育てるか」が、恋を長続きさせる最大のカギとなるのです。
参考文献
Couples who meet offline tend to have more satisfying relationships
https://www.psypost.org/couples-who-meet-offline-tend-to-have-more-satisfying-relationships/
元論文
Meeting partners online is related to lower relationship satisfaction and love: Data from 50 countries
https://doi.org/10.1016/j.tele.2025.102309
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部