お盆休みに入り、ついつい調子に乗って飲んでしまった人は多いかもしれません。中には二日酔いに苦しんだ人もいるでしょう。
しかし不思議なのは、同じ分量を飲んでも二日酔いになる人とならない人がいることです。
なぜ、このような違いが出るのでしょうか?
英ブリストル大学(University of Bristol)の科学的心理学者クレイグ・ガン(Craig Gunn)氏は、二日酔いに影響を与える酒量以外の原因について解説しています。
目次
- 二日酔いにかかわる酒量以外の原因とは?
- 二日酔いを予防するために
二日酔いにかかわる酒量以外の原因とは?
ガン氏があげる最初の原因は、言わずもがなではありますが個人の体質による生物学的メカニズムです。
まず、摂取されたアルコールは、酵素によって「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。
このアセトアルデヒドこそ二日酔いの原因物質であり、これが多く蓄積されるほど、二日酔いの症状も強くなるのです。
アセトアルデヒドは肝臓の働きによって無害な酢酸に変化し、酢酸は最終的に水と二酸化炭素へと分解され、二日酔いの症状を和らげます。
ところが、ALDH2という遺伝子に変異がある人は、アセトアルデヒドの分解が制限され、より体内に蓄積しやすくなるのです。
これは残念ながら遺伝的な要因であり、単に生まれつきお酒に弱い体質の人というだけなので個人では改善のしようがありません。
もし友人と同じ酒量を飲んで、自分だけ二日酔いの症状が強いのなら、ALDH2遺伝子に変異がある可能性が考えられます。

また、年齢や性別も二日酔いの程度に影響すると言われています。
オランダのある研究によると、二日酔いの重症度は、年齢が低いほど高くなるという。
加えて、男女間でも差があり、特に若い(18〜25歳)男性は、同年代の女性に比べて、同じ飲酒量でも二日酔いの重症度が高くなることが分かっています。
しかし、なぜこのような年齢差や性差が出るのかは、今のところ分かっていません。
若い男性は仲間と集まると無茶な飲酒をすることも多いため、注意が必要です。

しかし、それほど自分はお酒に弱くないと思っている人でも、日によって二日酔いになってしまう場合があるでしょう。
そこで次にガン氏が挙げるのが、心理的要因です。
ここでは、不安症や抑うつ、ストレスレベルの高さが、深刻な二日酔いと関連するといいます。
心理的特性はそれぞれ、自分の身の周りの世界を否定的に解釈する傾向とつながっています。
このネガティブバイアスが二日酔いと連動した結果、同じ酒量を飲んだ友人よりも気分が落ち込んだり、悪くなりやすいのです。
同様に、日頃直面する問題やタスクに否定的に対処する人(たとえば、痛みに対して大袈裟であったり、極端に痛がりな人)も二日酔いの際の気分をより低下させやすいことが分かっています。
では、二日酔いを予防する、あるいは症状を軽減させるにはどうすればよいのでしょうか?
二日酔いを予防するために
ガン氏はこれについて、「対処法はたくさんあるため、あなたにとって最良の方法はあなた自身が決めることだ」と話します。
誰にでも効果的なのは言うまでもなく、お酒を飲みすぎないことですが、友人や仕事相手との飲みの席では酒量のコントロールがかなり困難でしょう。
そこで重要なのは、飲む前の体調を万全に整えておくことです。
健康状態に異常がないか、疲労やストレスが溜まっていないか、ちゃんと睡眠が取れているかを確認してください。
体調が整っていないと肝臓の働きが悪く、アルコールも分解されにくくなります。

また、これもよく聞く対処法ですが空腹の状態での飲酒を避けるべきです。
お腹に何もない状態でお酒を飲むと、胃の粘膜が直接アルコールを吸収するので、その分だけ酔いが早く回ってしまいます。
飲む前に軽く食事を摂っておくことで、アルコールがゆっくり吸収され、二日酔いの防止に繋がります。
具体的に何を食べればいいのか迷うかもしれませんが、乳製品が良いと言われています。
乳製品については、胃に膜を張ってアルコール吸収を抑えるみたいな言い方を聞くこともありますが、牛乳などが膜を作るわけではなくチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は比較的胃に長く留まるため、胃が稼働していることで胃酸を防ぐ膜がアルコール吸収も抑えることが理由です。
またタンパク質が肝臓の働きを助けるという点も、飲酒時の乳製品が推奨される理由です。
それから飲みの最中でも、食事を摂ったり、合間に水を挟んだりすることで、飲むペースを調整することが重要です。
これらはどれも、酔いの回りをゆっくりにするのに効果的です。
また、お酒の種類によるアルコール度数を、意識することも重要です。
例えばこれもよく聞く話ですが、ワインは意外とアルコール度数が高いお酒です。
ビールのアルコール度数が約4~6度である一方、ワインのアルコール度数は約10~15度もあります。
普段食事の際にワインを愛飲している人は、飲み会でもついついワインを頼んで飲んでしまうかもしれませんが、食事と同じノリで頻繁に飲み会の続く時期に毎回ワインを飲んでしまうと、思わぬ負担を肝臓にかけてしまう可能性があります。
またアルコールには利尿作用があり、お酒ばかり飲んでいると脱水症状を引き起こしやすいので、それを防ぐためにも水の摂取は大切です。
身内だけの席なら、ノンアルコールを選ぶのもよいでしょう。
お酒を楽しむ時は、自分の体質や健康状態と相談しながら、楽しいひとときをお過ごしください。
参考文献
There’s More to a Brutal Hangover Than Just How Much You Drank
https://www.sciencealert.com/theres-more-to-a-brutal-hangover-than-just-how-much-you-drank
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部