「笑いは健康にいい」という言葉を、単なる格言と思ってはいませんか。
スペイン・ハエン大学(University of Jaén)の研究チームが行った最新調査によれば、笑いを意図的に取り入れる「笑い療法」メソッドは、不安レベルを大きく下げ、生活満足度を高める効果があることが示されました。
中でも、呼吸法と笑いを組み合わせた「ラフターヨガ」では、その効果が特に顕著だったのです。
研究の詳細は2025年7月25日付で学術誌『Journal of Happiness Studies』に掲載されています。
目次
- 笑い療法の効果を科学的に検証
- ラフターヨガとは?
笑い療法の効果を科学的に検証
研究チームは今回、1991年から2024年までに世界各国で行われた33件の無作為化比較試験(RCT)を統合し、合計2,159人(約74%が女性)の成人を対象に分析しました。
参加者は医療現場の患者から地域社会の住民まで幅広く、比較対象として「何もしない群」や「通常ケアのみを受ける群」も設定されました。
笑い療法とは具体的に、お笑い番組やコメディ映画を観て笑ったり、専門の笑い療法士に対面でサポートしてもらったり、自ら面白いことを考えたり、作り笑いをすることなどが挙げられます。

その結果、笑い療法を受けた人は、不安レベルが大幅に低下し、メンタルヘルスの大きな改善が示されたのです。
その効果は日常生活で体感できる大きな変化であり、以前より落ち着きやすくなり、緊張や心配事が軽く感じられるレベルとされています。
また生活満足度も有意に向上していました。
これは「毎日の生活に対する満足感がはっきり高まった」と感じられる程度で、日常に充実感や前向きな気持ちを取り戻す人が多かったことを意味します。
さらに手法別に分析すると、「ラフターヨガ」を行ったグループでは、不安軽減がさらに大きく低下し、生活満足度はより向上していました。
では、大きな効果を見せたラフターヨガとはどのようなものでしょうか?
ラフターヨガとは?
ラフターヨガ(Laughter Yoga)は、1995年にインド・ムンバイの医師マダン・カタリアと妻マドゥリーによって考案されました。
ユーモアやジョークに頼らず、呼吸法(ヨガのプラナヤーマ)と自発的な笑いを組み合わせるのが特徴です。
典型的なセッションでは、まず手拍子やリズムに合わせて「ハッハッハ」と声に出す作り笑いから始まり、アイコンタクトや遊び心のある動作で本物の笑いへと移行します。
最後には「笑い瞑想」と呼ばれる時間を取り、横になって心身を落ち着かせます。
こちらがラフターヨガを紹介した映像です。(※ 音量に注意して、ご視聴ください)
脳は「作り笑い」と「自然な笑い」を区別できないため、どちらでも同じように心身をリラックスさせます。
深呼吸によって血流や酸素供給が促進され、幸福感をもたらすエンドルフィンやセロトニンといった脳内物質が分泌されるため、ストレスの軽減や気分の向上が期待できます。
今回の研究でも、ラフターヨガは他の笑い療法より高い効果を示し、特に対面での実施が効果的であることが裏付けられました。
この研究は、「笑い」が単なる気分転換ではなく、科学的に裏付けられた心理的治療法になり得ることを示しています。
不安に悩むときや、人生の満足度を高めたいとき、特別な道具も費用も必要ありません。
必要なのは、ただ笑うこと。
ラフターヨガのように、意識的に笑いを取り入れる習慣は、心の筋トレのように精神的な柔軟性と回復力を鍛えてくれます。
「笑う門には福来る」という古いことわざは、どうやら科学的にも正しかったようです。
参考文献
Is laughter a form of therapeutic medicine?
https://medicalxpress.com/news/2025-08-laughter-therapeutic-medicine.html
元論文
The Role of Laughter Therapy in Adults: Life Satisfaction and Anxiety Control. A Systematic Review with Meta-Analysis
https://doi.org/10.1007/s10902-025-00934-z
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部