集中力は「ゲームとテレビ視聴で上昇」「SNSでは低下する」と判明

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スマホやテレビ、ゲーム機は、今や日常の一部であり、現代人にとって欠かせないツールとなっています。

ですが、たった3分間の利用でも、脳の働きや集中力に違いが出るとしたらどうでしょうか。

豪スウィンバーン工科大学(SUT)の研究チームが若者を対象に行った実験で、テレビやゲームは集中力を高める一方で、ソーシャルメディア(SNS)は逆に集中力を下げるという結果が明らかになりました。

しかも、その変化は脳の活動にもはっきり表れていました。

研究の詳細は2025年8月1日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • 何を調べた研究なのか
  • 3分間で見えた脳と集中力の違い

何を調べた研究なのか

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Credit: canva

研究の対象としたのは18〜25歳の若者27人

参加者は、次の3つの活動をそれぞれ3分間行いました。

1.テレビ視聴:コメディ番組と自然ドキュメンタリー

2.ゲーム:テトリスとアングリーバード(頭を使うタイプのゲーム)

3.SNS利用:普段よく使うアプリ(InstagramやTikTokなど)を自由に操作

活動の順番はランダムにし、前後には1分の休憩を入れました。

脳の活動は、おでこの奥にある「背外側前頭前野」という部分で測定しました。

ここは感情のコントロールや注意力、判断に深く関わる場所です。

測定には近赤外線を使って血の流れを調べる装置(fNIRS)を使用し、脳に送られる酸素の量や使い方をリアルタイムで記録しました。

加えて、「集中できたか」「元気か」「緊張しているか」「楽しい気分か」を0〜10点で自己評価してもらいました。

3分間で見えた脳と集中力の違い

結果は明確でした。

・集中力の自己評価は、テレビとゲームで上昇、SNSでは低下。

・脳の酸素の流れ(酸素化血流)は、SNSで最も増え、次いでゲーム、テレビが最小。

・酸素の使われ方(脱酸素化血流)は、ゲームで大きく増え、SNSとテレビでは減少。

特にゲームでは、脳に多くの酸素が送られ、それを活発に使っている様子が見られました。

これはゲームが頭を使い、戦略や判断を必要とするためと考えられます。

テレビは受け身の活動のため脳の変化は小さいものの、集中力はやや高まりました。

一方、SNSでは酸素の流れは増えているのに、集中力が下がるというちぐはぐな反応が見られました。

研究チームは、SNSが通知や短い動画など多くの刺激を連続して与え、注意をこま切れにしてしまうことが原因ではないかと推測しています。

また、実験前にストレスが高い人ほど、SNS利用後の酸素化血流が少なくなる傾向も見られました。

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Credit: canva

この研究は、スクリーン利用の影響が一律に「良い」または「悪い」ではなく、コンテンツや利用の仕方によって大きく変わることを示しています。

わずか3分という短時間でも、テレビ、ゲーム、SNSはそれぞれ異なる脳活動と集中力の変化を引き起こしていました。

もし「集中して作業したい」と思うなら、SNSを開く前にゲームや番組を楽しむ方が、意外にも脳に良い準備運動になるかもしれません。

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参考文献

Young adults’ brain activity shows TV and gaming boost focus, while social media hinders it
https://medicalxpress.com/news/2025-08-young-adults-brain-tv-gaming.html

元論文

Changes in prefrontal hemodynamics and mood states during screen use: a functional near-infrared spectroscopy study
https://doi.org/10.1038/s41598-025-09360-w

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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