経験人数が多い人は“本命”になりにくい?

心理学

恋愛の経験人数が多い人というのは、どういう印象を持たれるのでしょうか?

まったく恋愛経験がないというのはマイナスイメージを持たれそうで、恋愛経験がないのに過去に恋愛経験があったかのように振る舞ったという人は多いかもしれません。

しかし、逆に恋愛経験が多すぎるとやはりマイナスイメージを持たれそうで、控えめな振りをしたという人もいるでしょう。

またネット上では「処女厨」というスラングあったりしますが、「童貞厨」というのはあまり聞いたことがないので、男性側が特に女性の経験人数にこだわっているイメージもあります。

恋愛においては、「経験人数なんて関係ない」という人もいますが、実際、多くの人はパートナー候補の「過去の経験人数」にどんな印象を抱いているのでしょうか?

この疑問に、進化心理学の視点から国際的な大規模調査で答えたのが、英スウォンジー大学(Swansea University)のアンドリュー・トーマス(Andrew G. Thomas)氏らの研究チームです。

この研究では、11カ国の成人5331人を対象に、「ある人の性的履歴を図で示した画像」を見せ、その人と「本命の恋人(結婚相手)にしたいか」を9段階で評価してもらいました。

その結果は興味深いもので、特に調査の結果、経験人数に対する評価で男女差が見られなかったといいます。

この研究の詳細は、2025年7月24日付けで科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • 人類はなぜ「相手の過去」が気になるのか?
  • 実は男女差がない恋人の選び方

人類はなぜ「相手の過去」が気になるのか?

Credit:canva

恋愛や結婚において、相手の「過去」が気になるのは、単なる嫉妬や好奇心ではありません。進化心理学の観点では、それはリスク管理の一環と考えられています。

たとえば、過去に多くの性的パートナーがいる人は、「浮気しやすいのでは?」「病気を持っているかもしれない」「他にも恋敵がいそう」など、長期的な関係におけるリスクを連想させます。

こうした判断は、子育てや生活をともにする上で不利益を避けるために、人類が進化の過程で獲得してきた心理的メカニズムの一部と考えられています。

研究チームは、15の独立サンプルを使い、世界各地の成人にオンラインで調査を行いました。

参加者には、架空の「恋愛候補者」の性的履歴を示す画像(棒グラフのような視覚図)を見せ、その人と「長期的でコミットした関係(long-term committed relationship)を築きたいと思うか」を9段階で評価してもらいました。

この「長期的関係」とは、結婚を明示したものではありませんが、少なくとも一時的な交際ではなく、結婚を前提にした本命のパートナー関係を想定しています

評価された架空の相手は3パターンあり、それぞれ過去のパートナー数が「4人」「12人」「36人」と設定されています。加えて、性的関係が「時間とともに増えている」「均一」「減ってきている」という、頻度の“分布パターン”も操作されていました。

つまり、「どれくらいの人数」と「どんなタイミングで関係を持ったか」が評価にどう影響するかを精密に測定したのです。

実は男女差がない恋人の選び方

Credit:canva

結論から言えば、「過去のパートナー数が多いほど、長期的関係への意欲は下がる」傾向が明確に確認されました。

4人→12人→36人と増えるごとに、「この人と付き合いたい」という気持ちが段階的に減っていきます。特に、4人から12人への増加で評価が大きく下がり、12人から36人ではやや緩やかな下がり方でした。

つまり、「多すぎる経験」は多くの人にとってリスクのサインとして受け止められていることがわかります。

タイミングによって印象が変わる

さらに興味深いのは、「いつ関係を持ったか」も評価に影響したという点です。

たとえば同じ12人の経験があっても、それが若い頃に集中し、その後は落ち着いている人は、比較的好意的に評価されました。反対に、最近になって急激に関係が増えている人は「今もまだ落ち着いていない」と見なされ、評価が低くなる傾向が見られました。

このような「分布パターン」による影響は、特に経験人数が多い条件で強く現れており、人々は単に「何人と関係を持ったか」ではなく、「どのように経験が積まれてきたか」を重視していることがうかがえます。

男性も女性もほぼ同じ傾向を示す

恋愛における調査では「性的ダブルスタンダード(男性と女性で評価基準が違う)」という問題もよく取り上げられますが、この研究では性別による評価の違いは最小限でした。つまり、「経験人数が多い相手を本命にしづらい」という傾向は、男性にも女性にも共通して見られたのです。

また、ソシオセクシュアリティ(カジュアルな性に対する開放性)の指標が高い人ほど、経験人数への評価が緩やかでしたが、それでも「極端に多い場合は警戒される」傾向は共通していました。

この研究が示したのは、「経験人数の多さ」が恋愛において実際に影響を与えているということ、そしてそれが単なる偏見ではなく、人類が進化の中で培ってきた判断基準の一部である可能性があるということです。

しかし同時に、「数」だけで判断しているわけでは、最近の傾向も考慮されていました。その人が今、どんな価値観を持ち、どんな生き方をしているのか──その手がかりとして、過去の恋愛の流れやパターンを人は無意識に読み取っているのかもしれません。

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参考文献

It’s not just how many – it’s when: global study reveals people judge a potential partner’s sexual history by timing, not total number
https://www.swansea.ac.uk/press-office/news-events/news/2025/08/its-not-just-how-many–its-when-global-study-reveals-people-judge-a-potential-partners-sexual-history-by-timing-not-total-number-.php

元論文

Sexual partner number and distribution over time affect long-term partner evaluation: evidence from 11 countries across 5 continents
https://doi.org/10.1038/s41598-025-12607-1

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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