激レアすぎる「紫色のカニ」をタイで発見

動物

タイの深い森に、まるで宝石のように輝く紫色のカニが見つかりました。

その姿は「まさか作り物では?」と思わせるほど鮮やかで、美しく、そして希少です。

2025年7月、タイ最大の自然保護区・ケーンクラチャン国立公園にて、レンジャーたちによってこの伝説のようなカニの撮影に成功したことが発表されました。

このカニの正体とは何なのでしょうか・

目次

  • 王女にちなんで命名されたカニ
  • ただ美しいだけじゃない、環境の“健康診断”を担う存在

王女にちなんで命名されたカニ

今回目撃されたのは、地元で「プリンセス・クラブ(Princess Crab)」あるいは「シリントーン・クラブ(Sirindhorn Crab)」と呼ばれている希少種のカニです。

本種は通常、白と黒のコントラストが目を引く見た目をしており、その様子から和名で「パンダクラブ(学名:Lepidothelphusa cognetti)」とも呼ばれています。

成体になると、甲羅の長さは約2.5センチに達します。

今回カエンクラチャン国立公園で発見された紫色の個体は非常に珍しいタイプであり、通常の白黒模様とは異なる“色変わり”のような個体と見なされています。

この「紫色」の出現が突然変異なのか、あるいは自然な色彩のバリエーション(色彩多型)の一種なのかは、現時点で十分な研究データがないため不明ですが、これまでに報告されている紫色個体の目撃例は非常に少ないため、「激レア」として注目を集めているのです。

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Credit: Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation via Facebook

呼び名の一つであるシリントーン・クラブは、タイ王室のマハ・チャクリ・シリントーン王女にちなんでつけられました。

紫色は、王女の誕生日である土曜日を象徴する色とされており、自然と王室のつながりを感じさせるネーミングです。

プリンセス・クラブの姿が最後に確認されたのは、公園の観光シーズン終了直前の今年7月。

レンジャーたちが定期的に行っている野生動物のモニタリング活動の中で、パノーントゥン観察地点にて偶然撮影されたのです。

ただ美しいだけじゃない、環境の“健康診断”を担う存在

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Credit: Department of National Parks, Wildlife and Plant Conservation via Facebook

プリンセス・クラブは、見た目が美しいだけでなく、実は非常に重要な「生物指標種(バイオインジケーター)」としての役割も果たしています。

これは、その生き物が棲んでいるという事実そのものが、「その場所の自然環境が健全である証拠」であることを意味します。

つまり、このカニが姿を見せたということは、ケーンクラチャン国立公園が今も高い生態系のバランスと環境の質を保っていることを示しているのです。

この国立公園は、タイ最大規模を誇り、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

ヒョウやクマ、ヤイロチョウ、キングコブラなど、絶滅危惧種を含む多様な動物たちが共存する重要な保護区域です。

国立公園・野生動物・植物保全局の発表では、今後もこのカニを含む希少生物の個体数や周囲の環境モニタリングを継続していくとのことです。

生物多様性の保存に向けた努力は、今も現地で静かに続けられています。

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参考文献

Rare purple crabs spotted in Thailand
https://www.popsci.com/environment/purple-crabs-thailand/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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