AIエージェントを組み込んだ新たなRAG「エージェンティックRAG」を解説

WEELのノウハウ

押さえておきたいポイント
  • エージェンティックRAGはAIエージェントを組み込んだRAG
  • RAGの課題を解決
  • 正確性、信頼性が向上

近年、LLMの成長に伴い、Retrieval-Augmented Generation(RAG)の導入を進めている企業が増えてきました。しかし、LLMのみでは正確な情報が提供できない・ハルシネーションを起こしてしまうといった問題があります。

そこで、RAGの登場です。RAGはLLMに外部のデータソースを提供することで、より正確な回答を生成するための1つの手法です。

2025年になり、新たなRAGの形が注目されています。それが「エージェンティックRAG」です。

本記事では、エージェンティックRAGの概要や仕組み、既存RAGとの違いについて解説をします。本記事を最後まで読むことで、新たなRAGの形「エージェンティックRAG」の理解が進みます。

ぜひ最後までお読みください。

エージェンティックRAGとは

エージェンティックRAGとは、AIエージェントをRAGに組み込み、情報の検索・回答の生成精度を向上させる技術です。

エージェンティックRAGは、2024年にAIエージェントが発展したことに伴い、急速に成長を遂げています。AIエージェントは、自律型AIと言われたりもしますが、人の介入なしに特定のタスクを遂行可能なAIです。

AIエージェントとしてわかりやすいのは、本記事執筆時点(2025/01/11)でメジャーになっている、Browser useでしょうか。目的を入力すると、あとは勝手にAIがパソコンを操作して、目的遂行に必要な情報を集めてきてくれます。

エージェンティックRAGはこのようなAIエージェントをRAGシステムに組み込んだ手法です。

参考:https://medium.com/scisharp/understand-the-llm-agent-orchestration-043ebfaead1f

なお、AIエージェントとRAGの違いについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

エージェンティックRAGの仕組み

エージェンティックRAGは、LLMをベースに処理を行うほかに、メモリ機能やプランニング、外部データソースへのアクセスといった機能を有しています。

エージェンティックRAGに導入されるAIエージェントとして代表的なものに「ReAct」があります。

ReActはReasoningとActionの造語で、論理的な推論や考察過程・実際の行動全般を指します。なので、考えて行動しながら学ぶというイメージがわかりやすいと思います。

従来の方法では、推論だけ・行動だけ、という特徴があり、ハルシネーションを生み出す原因になってしまったり、推論が十分に行えないという課題がありましたが、ReActを利用することで従来の課題を解決することが可能です。

ReActの概要

ReActは従来のLLMにおける推論だけ、行動だけという課題を解決するための手法。※1

推論と行動を相互に行うことにより、モデルはより柔軟かつ効率的にタスクを解決可能になります。また、ReActは、質問応答や事実検証といった知識集約型の推論タスクだけではなく、テキストベースのゲームやWebナビゲーションなどの対話型タスクにも活用が可能です。

参考:https://arxiv.org/pdf/2210.03629

知識集約型タスクでは、外部データソースを参照することで、誤った情報の流布やハルシネーションを防ぎ、最新情報にアクセスができます。対話型タスクでは、タスク目標を細分化することにより、推論のみに比べ、タスクを正確に把握できます。

このように、ReActを活用することで、従来に比べより柔軟に、より効率よくタスクへの対応が可能です。画像のように、ReActを活用することで、より高いパフォーマンスを発揮します。

参考:https://arxiv.org/pdf/2210.03629

また、ファインチューニングを行うことでReActが最大の性能を発揮し、より高度なタスクにReActが向いていることがわかります。

参考:https://arxiv.org/pdf/2210.03629

エージェンティックRAGのフロー

エージェンティックRAGの大まかなフローとしては次のようになります。

  1. ユーザーからクエリを受け取る:ユーザーが質問や指示を入力し、このクエリがフレームワーク全体のスタートになります。
  2. AIエージェントがクエリの意図を理解しながら、必要なタスクを特定する:AIエージェントが自然言語処理を使って、クエリ内容を分析、タスクの明確化を実施します。ここは、AIが「次に何をするべきか」を考える推論部分です。
  3. データベースなどの外部データソースから関連情報を検索:必要な外部データベースにアクセスして、関連情報を取得します。この過程では、「何を検索するべきか」を考えながら進んでいきます。
  4. ReActフレームワークを用いて、思考し行動を行い観察する、という過程を繰り返す:推論と検索、行動の結果をもとに、さらなる推論を行います。必要に応じて追加の検索を行ったり、新しいタスクを定義したりします。この繰り返す過程がエージェンティックRAGで最も重要な部分です。
  5. 収集した検索結果をもとに最終的な回答を生成:必要な情報が揃った時点でLLMが回答を生成。ここでは、RAGの「Generation」が活用され、ReActの推論・行動履歴を参考にして、一貫性のある回答を生成します。

ここではReActについて触れましたが、エージェンティックRAGの手法としては、REAPERもその一つです。ReActは推論・行動・観察を繰り返す手法であるのに対して、REAPERは最初に全体の検索プランを立案してから実行する手法です。

エージェンティックRAGのメリット

エージェンティックRAGのメリットとして、一つ目は情報検索の繰り返しです。エージェンティックRAGでは、必要な情報が不足している場合や検索条件を変更する場合など、情報の検索を何度も繰り返し行います。

従来のRAGでは、単一クエリで情報を取得し、それをもとに回答を生成しますがエージェンティックRAGでは必要に応じて検索を繰り返すので、より充実して・より正確な情報を収集できます。

次に検索と回答生成の精度向上です。従来の手法では、推論と行動が別々に行われており、それによってハルシネーションや誤った情報が生成されていました。しかし、推論と行動が相互に働きかけることで、誤った情報やハルシネーションが減少します。

情報を繰り返し検索し、推論と行動が相互に働きかけることで、より信頼性の高い情報を取得でき、より正確な回答を生成できます。

既存のRAGとの違い

従来のRAGでは、クエリを一度に外部のデータソースに投げて、関連情報を取得、取得した情報をもとに回答を生成していました。しかし、従来の方法では情報検索が固定的であり、タスクに応じた柔軟な検索や推論を行うことはしていません。

また、クエリが複雑になると、対応しきれず、単調な回答が生成されるだけであり、ユーザーのニーズを満たす回答ができないという課題がありました。

一方で、エージェンティックRAGでは、必要に応じて複数回の検索を実行し、検索結果に基づいて次の検索を計画する、という過程を繰り返します。また、ユーザーからのクエリの意図を理解し、必要な情報を作成、推論に基づき外部データソースにアクセスしてデータを取得します。

そのため、複雑なクエリに対しても対応可能であり、最新の情報にもアクセスができるため、より正確で柔軟性の高い回答を生成可能です。

エージェンティックRAGの活用方法

エージェンティックRAGは従来のRAGに比べて、より複雑なクエリを回答できるようになりました。そのため、複雑なタスクや意思決定を必要とする場面で活用ができそうです。

例えば、医療分野で患者の症状を聞き取り、聞き取り結果をクエリとして投入。患者の症状に基づき、考えられる病気を段階的に検索して適切な回答を提供、といった使い方ができそうです。

また、学術分野でも効果的に活用ができると思います。複数の文献データベースから関連する検索結果を取得して、ユーザーのクエリに回答するということもできます。

そのほかにもカスタマーサポートやチャットボットとしても活用が考えられるでしょう。パーソナライズされた質問に対して、推論と行動を繰り返すことで、ユーザーのニーズを満たす回答が可能です。

まとめ

本記事ではエージェンティックRAGについて概要から従来のRAGとの違い、活用方法についてお伝えしました。LLMの発展に伴いRAGの導入ハードルが低くなってきています。しかし、従来のRAGにはまだまだ課題が残っており、エージェンティックRAGは従来のRAGの課題を解決してくれる、新たなアプローチになりそうです。

ぜひ本記事を参考に、エージェンティックRAGを導入してみてください!

最後に

いかがだったでしょうか?

エージェンティックRAGの導入により、検索精度の向上やハルシネーションの抑制が可能になります。柔軟で信頼性の高いAIシステムの構築を目指すなら、適切な導入戦略を検討しましょう。

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