金曜日に手術を受けるのは避けた方がいいのかもしれません。
このほど、米ヒューストン・メソジスト病院(HMH)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)らの最新研究で、休み前の金曜日に手術を受けた患者は、休み明けの平日に手術を受けた患者に比べて、手術による合併症や再入院、および死亡リスクが有意に高くなっていることを見出しました。
研究の詳細は2025年3月4日付で医学雑誌『JAMA Network Open』に掲載されています。
目次
- 週末は医療の質が下がる「週末効果」とは?
- 金曜日と祝日前の手術は避けた方がいい?
週末は医療の質が下がる「週末効果」とは?

一般的に、手術の成功は医師の技術や病院の設備によるものだと考えられています。
しかし、これまでの研究でも「週末効果(Weekend Effect)」と呼ばれる現象が報告されてきました。
週末効果とは、週末に提供される医療の質が平日に比べて低下する現象を指します。
実際に過去の研究で、週末に手術を受けた患者は他の平日に手術を受けた患者に比べて、死亡リスクが高まることが示唆されていました。
ただ、この相関関係はまだ明確なものではなく、信頼できるデータに乏しいのでした。
そこで研究チームは今回、金曜日の手術後に起こる具体的なリスクの増加を大規模なデータをもとに調査することにしました。
金曜日と祝日前の手術は避けた方がいい?
研究チームは、2007年から2019年にカナダ・オンタリオ州で行われた25種類の一般的な外科手術を対象に、合計で42万9691人分の患者データを分析しました。
患者は次の2つのグループに分類されました。
・週末前に手術を受けたグループ(金曜日・祝日前)
・週末後に手術を受けたグループ(月曜日・祝日後)
そして、30日後、90日後、1年後の死亡率・再入院率・合併症発生率を比較しました。
分析の結果、金曜日や祝日前に手術を受けた患者は確かに、月曜日や祝日後の平日に手術を受けた患者よりも、術後の死亡率や再入院率、合併症の発生率が有意に高いことが判明したのです。
具体的には、
・30日以内の死亡率 → 金曜日の手術で9%高い
・90日以内の死亡率 → 金曜日の手術で10%高い
・1年以内の死亡率 → 金曜日の手術で12%高い
・入院期間の延長 → 金曜日の手術は入院期間が長くなる傾向にある
などの結果が見られました。
特に事前に予定されていた計画手術ほど、週末前に行われるとこれらのリスクが増加することが示されました。
ところが意外なことに、予定外の緊急手術に関しては、週末前に行われた方が治療結果が良い傾向も見られたのです。

なぜ金曜日や祝日前になると、医療の質が落ちる傾向が見られるのか?
これについて研究者らは「休み前の金曜日には熟練した経験豊富な病院スタッフが少なくなり、専門医の確保が難しく、患者の緊急時の的確な対応などが遅れる可能性がある」ことを指摘しました。
実際に本研究でも、金曜日に手術を担当した医師は、平日に手術を担当した医師に比べて、全体的に実務経験年数が短い傾向(金曜日に手術を担当した外科医が平均14年、月曜日に手術を担当した外科医が平均17年)が見られたのです。
これらを踏まえてチームは、週末の医療体制の強化や専門医の確保を改善する必要があると述べています。
ただし、今回の調査はカナダの病院を対象としたものであり、日本にも同じことが当てはまるかどうかは分かりません。
それでも、もし手術を受ける機会があるなら、信頼できる担当医のスケジュールも考慮しながら、慎重に術日を選んだ方がいいのかもしれません。
参考文献
Do weekends really affect surgical outcomes?
https://medicalxpress.com/news/2025-03-weekends-affect-surgical-outcomes.html
元論文
Postoperative Outcomes Following Preweekend Surgery
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.58794
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部