シベリアの戦士の姿が4000年の時を経て、現代に蘇りました。
ロシア・北東連邦大学(NEFU)の研究チームは、シベリアで発掘された人骨、および盾や鎧などの埋葬品をもとに、生前の姿を3D復元することに成功。
この戦士は一体どんな姿をしていたのでしょうか?
目次
- 発掘された古代戦士はどんな人物だったのか?
- 4000年の時を経て、復活した古代戦士
発掘された古代戦士はどんな人物だったのか?

今回復元されたのは、今から約4000年前にシベリアで生きていた弓兵戦士です。
研究チームは2004年、ロシア北東部のサハ共和国・ケルデュゲン地域にて地中から墓地を発掘し、そこに驚くほど保存状態の良い人の遺骨が眠っているのを発見しました。
遺骨の周囲には、100枚以上の骨製プレートで構成された大きな盾、骨でできた鎧、矢じり、斧、道具袋などが一緒に副葬されており、戦士の生前の生活がそのまま封じ込められたかのようでした。
中でも盾には、複数の矢の貫通痕や折れた矢じりが刺さったままで、激しい戦闘の痕跡を今に伝えています。

研究主任のリリヤ・アレクセーエワ(Liliya Alexeyeva)氏は「これほど保存状態の良い古代戦士の墓はシベリア全土でも例がない」と語ります。
この戦士は「イミヤフタフ文化(Ymyyakhtakh culture)」と呼ばれる、狩猟と採集を生業とした新石器時代の人々の一員とみられています。
平均寿命の短いこの時代にあって、推定40〜50歳で亡くなったとされる彼は、長く厳しい戦いの日々を生き抜いた人物だったようです。
骨には過去の骨折の痕も多く、特に右半身の筋肉や骨格が発達していたことから、彼は右利きの弓兵だった可能性が高いとのことです。
こうした豊かな情報源をもとに、チームは古代戦士の在りし日の姿を3D復元しようと考えました。
4000年の時を経て、復活した古代戦士
この研究の背景には「物言わぬ骨から、その人の人生を復元したい」という考古学者たちの願いがありました。
ただ骨を年代測定するだけでなく、その人の顔立ち、道具、体格や生活までをできる限り明らかにしたい─それは過去と現在をつなぐ「人間の物語」を浮かび上がらせる試みでもあります。
そこでチームは3D技術を駆使し、この古代戦士の顔や武具までを含めた全身を再構築することに挑みました。
400点以上の細かな出土品をすべて3Dスキャンし、骨格、盾、鎧、副葬品をデジタル化。
顔の復元には、ソ連の著名な人類学者ミハイル・ゲラシモフが開発した「頭蓋骨復顔法」をベースに、現代のフォトグラメトリ技術を組み合わせて使用しました。
盾はヘラジカなど大型動物の中空骨から作られており、接着剤を使って革の土台に貼り合わせていたと推定されています。
右側はげっ歯類による損傷があるものの、左側は良好に残っており、6枚の骨板には実際に矢じりが突き刺さったままの状態で発見されました。
また、身体の損傷(手足の骨折や関節の圧迫骨折)も、過酷な戦闘経験を物語っており、単なるハンターではなく、訓練を受けた「戦士」であったことが裏付けられました。
こうして復活を遂げたのが、こちらの姿です。

今回の復元によって、「4000年前の誰か」が単なる名前のない骨ではなく、表情を持つ“人”として私たちの前に立ち現れました。
今や、高度な技術と科学を組み合わせることで、私たちは時間を超えて過去の人々と「顔を合わせる」ことができるようになったのです。
参考文献
Stunning reconstruction reveals warrior and his weapons from 4,000-year-old burial in Siberia
https://www.livescience.com/archaeology/stunning-reconstruction-reveals-warrior-and-his-weapons-from-4-000-year-old-burial-in-siberia
Находка мирового уровня. Как в Якутии “оживили” воина-лучника, жившего 4 тыс. лет назад
https://tass.ru/arktika-segodnya/23274515
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部