40光年先に「第二の地球」を発見した可能性

NASA

地球からわずか40光年先にある恒星系「TRAPPIST-1」で、生命が存在できる可能性を秘めた惑星が見つかったかもしれません。

その惑星の呼称は「TRAPPIST-1e」

地球とほぼ同じサイズで、生命が生まれる条件に近い「ハビタブルゾーン(液体の水が存在できる領域)」を公転しています。

そして今回、米ジョンズ・ホプキンズ大学(JHU)らの最新研究で、この惑星に地球の大気に似た成分がある可能性が示されたのです。

もし確認されれば、これまでで最も「地球らしい」系外惑星の発見になるかもしれません。

研究の詳細は2025年9月8日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

目次

  • なぜ系外惑星「TRAPPIST-1e」が注目されるのか
  • ウェッブ望遠鏡がとらえた大気の手がかり

なぜ系外惑星「TRAPPIST-1e」が注目されるのか

太陽系の外に生命が住める世界を探すとき、天文学者が目安にするのはいうまでもなく「地球」です。

宇宙の広大な領域を見渡しても、確実に生命が存在しているとわかっているのは地球だけだからです。

生命が成立する条件として特に重要なのは「液体の水」が存在できることです。

水は(地球環境に適応する生命体を前提として)すべての生物活動に欠かせない化学反応の舞台を提供するため、天文学者たちはまず「恒星(地球でいうところの太陽)から適度な距離にあり、水が凍らず蒸発もしないゾーン」にある惑星を探してきました。

この領域は「ハビタブルゾーン」と呼ばれています。

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Credit: canva

そして2016年に初めて観測された恒星系TRAPPIST-1は、そうした意味で大きな注目を集めました。

中心の恒星となるTRAPPIST-1は太陽よりも小さく冷たい「赤色矮星」で、その周囲には7つもの地球サイズの岩石惑星が存在します。

そのうちいくつかはハビタブルゾーン内に位置しており、理論的には液体の水が表面に存在し得ると考えられています。

中でもTRAPPIST-1eは、太陽系の地球に最も近い条件を持つとされる惑星であることが示唆されていました。

ただし、「水がある可能性がある」ことと「実際に水がある」ことは別問題です。

液体の水を安定して保つには、大気が欠かせません。真空の宇宙空間では水はすぐに蒸発してしまうからです。

ところがTRAPPIST-1はフレアを頻発する活動的な星で、強い放射線によって惑星の大気を吹き飛ばしてしまった可能性があります。

実際、同じ系にあるTRAPPIST-1dを観測したところ、大気の痕跡はまったく見つかりませんでした。

つまり、TRAPPIST-1eが本当に「地球らしい」惑星なのかどうかは、これまで決定的にわかっていなかったのです。

ウェッブ望遠鏡がとらえた大気の手がかり

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Credit: canva

そこで登場したのが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)です。

研究チームは、JWSTに搭載された赤外線観測装置「NIRSpec」を用い、TRAPPIST-1eが恒星の前を通過する瞬間の光を観測しました。

もし惑星に大気があるなら、恒星の光の一部が大気中のガス分子によって吸収され、スペクトル(光の波長のパターン)に特徴的な暗い線として表れます。

観測を繰り返すことで、その大気の有無や成分を探ることができます。

今回解析されたのは4回分の通過データです。

結果は「決定的」とは言えないものの、いくつかの重要な示唆を与えました。

まず、TRAPPIST-1eが形成初期に持っていた「一次大気(主に水素やヘリウム)」は、恒星からの強烈な放射線によってすでに失われている可能性が高いとされました。

これは予想通りの結果です。

次に問題となるのが「二次大気」の存在です。

地球もそうであったように、一次大気を失った後、火山活動などによって二酸化炭素や窒素といった重いガスからなる新たな大気を再形成することがあります。

研究者たちは、TRAPPIST-1eにこの二次大気が存在するかどうかを探りました。

観測結果は、金星のように二酸化炭素が非常に濃い大気や、火星のように希薄な二酸化炭素大気ではない可能性を示しています。

また、水素が豊富な大気モデルも支持されませんでした。

その一方で、窒素を主体とし、少量の二酸化炭素やメタンを含む大気というシナリオと一致する兆候が見られたのです。

窒素主体の大気といえば、まさに地球の特徴そのものです。

地球の大気の約78%は窒素で占められています。

今回の結果はまだ曖昧で、追加の観測が必要ですが、もし確認されればTRAPPIST-1eはこれまでで最も「地球に似た」系外惑星となるかもしれません。

さらに、もし大気が存在し液体の水を保持しているなら、TRAPPIST-1eの表面には地球の海のような環境が広がっている可能性もあります。

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参考文献

Most Earth-Like Planet Yet May Have Been Found Just 40 Light Years Away
https://www.sciencealert.com/most-earth-like-planet-yet-may-have-been-found-just-40-light-years-away

NASA Webb Looks at Earth-Sized, Habitable-Zone Exoplanet TRAPPIST-1 e
https://science.nasa.gov/missions/webb/nasa-webb-looks-at-earth-sized-habitable-zone-exoplanet-trappist-1-e/

元論文

JWST-TST DREAMS: NIRSpec/PRISM Transmission Spectroscopy of the Habitable Zone Planet TRAPPIST-1 e
https://doi.org/10.3847/2041-8213/adf42e

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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