2300年前の「頭蓋に穴をあける手術器具」を発見、ポーランド

ポーランド・ワルシャワ大学(UW)の考古学チームが、同国の大地から驚くべき発見を報告しました。

現代医学から見るとぞっとするような「頭蓋骨に穴を開ける手術」に使われていたとされる、2300年前の鉄製手術器具がケルト人の集落跡から見つかったのです。

ヨーロッパ大陸の片隅に、驚異の古代医療技術と不思議な文化の痕跡が埋もれていました。

目次

  • 古代ケルト人が残した「頭の手術」の証拠
  • 集落と鉄の痕跡、ケルト人たちの多彩な営み

古代ケルト人が残した「頭の手術」の証拠

今回、ポーランド中東部のマゾフシェ地方に位置する「ウィサ・グラ」という遺跡で、鉄製の非常に珍しい手術用器具が発掘されました。

この道具は、紀元前4世紀から3世紀のケルト人が使っていたもので、に用いられていた可能性が高いとされています。

トレパネーションとは、頭蓋骨に人為的に穴を開ける医療行為で、世界中の多くの文化で行われてきた歴史ある技術です。

研究者によれば、この器具は一方が刃、もう一方が突起状になっており、もともとは木製の柄に固定されていた古代のスカルペル(メス)型だと考えられています。

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ケルト遺跡で同様の手術器具が見つかるのはごく稀で、これまで南ヨーロッパ(ルーマニア、クロアチア、オーストリアなど)の数カ所からしか報告がありませんでした。

「この地に到達したケルト人グループの中には、当時の医学に精通した人物や、道具を製作できる鍛冶職人が含まれていた可能性があります」と研究者は話します。

ただし、現時点でウィサ・グラからは実際にトレパネーション手術を受けた人骨は発見されていません。

チームは「こうした道具の持つ象徴的・呪術的な意味合いも大きかったのではないか」と指摘しています。

集落と鉄の痕跡、ケルト人たちの多彩な営み

さらに今回の発掘では、トレパネーション器具だけでなく、多くのケルト起源の遺物も見つかっています。

青銅板製の珍しいヘルメット、装飾用の留め具(ブローチ)、槍の穂先、四角断面の鉄斧、そして馬具の細かな部品などです。

注目すべきは、遺跡の北東部から発見された鉄鋳造の痕跡です。

鍛冶用ハンマーで小道具を加工した跡がある鉄の金床や、製鉄時に生じるスラグ(鉱滓)が見つかっており、現地で鉄製品の一部が作られていたことが裏付けられました。

「ケルト人の一団は、医術に携わる者だけでなく、独自の鍛冶技術を持つ職人も連れていたと考えられます」と研究者は述べています。

また、ウィサ・グラ集落はケルト人到来以前から要塞化されていたことも判明しています。

南側の高台は大きな堀で囲まれ、住民の生活の中心地となっていました。

一方、北側は野生動物よけの簡素な囲いしかなく、防御システムの違いも集落の機能分担を示しています。

この地は当時、地中海世界で高価な交易品だった琥珀の重要な拠点だった可能性もあります。

ケルト人たちは交易や技術、そして不思議な医術の知識をもって、この地に拠点を築いていたのです。

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参考文献

2,300-year-old tool used for skull surgery unearthed at Celtic settlement in Poland
https://www.livescience.com/archaeology/2-300-year-old-tool-used-for-skull-surgery-unearthed-at-celtic-settlement-in-poland

Mazowsze/ Celtyckie narzędzie do trepanacji czaszki odkryte na Łysej Górze
https://naukawpolsce.pl/aktualnosci/news%2C110123%2Cmazowsze-celtyckie-narzedzie-do-trepanacji-czaszki-odkryte-na-lysej-gorze

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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