130年間見つかっていない「幻のカエル」をチリで再発見!

カエル

「130年もの間、一度も見つかっていなかったカエルをついに見つけた!」

そんなロマンあふれる報告をしたのは、チリ・コンセプシオン大学(UdeC)の生物学研究チームです。

このカエルは1902年に新種として科学的に記載されて以来、発見例がなく、専門家の間では「幻のカエル」として扱われていました。

しかし今回の最新調査により、南米チリ・アラウカニア州のアンデス山脈の麓で生存が確認されたとのこと。

研究の詳細は2025年3月6日付で学術誌『ZooKeys』に掲載されています。

目次

  • なぜ130年間も見つからなかったのか?
  • 130年ぶりに再発見!意外な新事実も発覚

なぜ130年間も見つからなかったのか?

「もし130年間、誰も見たことがない生物が、ひっそりと生き延びていたとしたら?」

そんな疑問を抱かせる今回の発見は、単なる生物学の話にとどまらず、自然の神秘を象徴するものです。

今回の話の主役となるのは「アルソデス・ヴィタトゥス(Alsodes vittatus)」というカエルで、最初の個体が見つかったのは1893年のこと。

フランス人の昆虫学者、フィリベール・ジェルマンによって発見されました。

その後、その模式標本をもとに詳細な調査が進められ、1902年に新種のカエルとして科学的に記載されています。

本種は背中に白または黄色の縦線があることが特徴で、複数回の目撃例が報告されました。

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背中の縦線が特徴/ Credit: Edvin Riveros(2025)

しかし次第に目撃例が途絶えていき、ついには全く見つからなくなったのです。

1995年から2002年にかけて複数の研究者が本格的な捜索を試みましたが、いずれも失敗に終わり、専門家らは「絶滅した可能性が高い」と考えるようになりました。

こうしてアルソデス・ヴィタトゥスが姿を消してから130年が経過することになります。

では、なぜこれほど長い間、このカエルは見つからなかったのでしょうか?

大きな理由の一つは、最初の模式標本が採取された「場所」の情報があまりにも曖昧だったことです。

当時の記録には、本種が正確にどこで採取されたのかが書かれておらず、チリ中南部という漠然とした広い範囲を手当たり次第に探すしかなかったのです。

しかし、その努力はついに報われることになります。

130年ぶりに再発見!意外な新事実も発覚

研究チームは、この問題を解決するために、19世紀の博物学者フィリベール・ジェルマンが記した記録を精査しました。

ジェルマンは1893年に、チリ中部のラ・アラウカニア州にあるハシエンダ・サン・イグナシオ・デ・ペメウエという広大な私有地を探検し、そこで標本を採取したことがわかりました。

そこでチームは、彼が通った可能性のあるルートを歴史的資料をもとに推察して再構築し、その経路上でカエルを探すことに。

そして2023年から2024年にかけて、再構築したルートを辿る形で調査を実施。

すると、アラウカニア州を流れるロルコ川とポルタレス川の流域で、ついにアルソデス・ヴィタトゥスの2つの個体群を発見したのです。

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再発見された場所/ Credit: Edvin Riveros(2025)

発見されたカエルは、見た目の特徴からすぐに「アルソデス・ヴィタトゥスだろう」と推測されましたが、より確実な証拠を得るためにDNA解析を行いました。

その結果、正式にアルソデス・ヴィタトゥスであることが確認されました。

それと同時に意外な新事実も判明します。

個体群のDNAを調べたところ、アルソデス・ヴィタトゥスに必ずあると思われた背中の縦線は、全ての個体に見られるものではなく、個体によってあったりなかったりする「多型」であったことが判明したのです。

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背中に縦線のないアルソデス・ヴィタトゥス/ Credit: Edvin Riveros(2025)

これは「縦線があることがアルソデス・ヴィタトゥスの決定的な特徴である」とされていた過去の認識を覆す発見でした。

今回の発見は、ただ一種のカエルを再発見したというだけではなく、他に姿を消したままの生物種についても「まだどこかで生きているかもしれない」という希望を与えてくれます。

そして、失われた生物を探し出すためには、過去の記録を丁寧に調べ、自然の中に残るわずかな手がかりを読み解くことが大切であることを改めて教えてくれています。

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参考文献

Rare frog rediscovered after 130 years
https://phys.org/news/2025-03-rare-frog-rediscovered-years.html

元論文

Lost for more than a century: the rediscovery of Alsodes vittatus (Philippi, 1902) (Anura, Alsodidae), one of the rarest and most elusive amphibians from Chile
https://doi.org/10.3897/zookeys.1230.135523

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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