「注文した料理に髪の毛が入っていた」
そんな体験をしたことのある人は意外と多いのではないでしょうか?
しかし、こんな“あるある”のトラブルも今後は完全になくなるかもしれません。
なぜなら、人間ではなくロボットが料理を作る時代が、本格的に始まったからです。
2025年、スイスに本社を置くロボティクス企業ABB社と、アメリカ・シリコンバレーのスタートアップBurgerBots(バーガーボッツ)社が共同で、ロボットが調理するバーガー店舗をカリフォルニア州ロスガトスにオープンさせました。
それはまるでSFのような話ですが、ついに現実のものとなったのです。
目次
- ロボットが調理するハンバーガー店がオープン
- 1個27秒で提供するハンバーガーロボット
ロボットが調理するハンバーガー店がオープン

ロボットが私たちの生活に本格的に入り込んできたのは、今に始まったことではありません。
かつては工場の組み立てラインで部品を扱ったり、溶接をしたりするのは人間の仕事でしたが、今ではロボットに任されています。
1980年代以降、製造業の現場では「人間の代わりに働く存在」として、ロボットは急速に普及していきました。
21世紀に入り、ロボットは工場の外へ進出します。
倉庫で荷物を仕分けたり、ホテルで客室案内をしたり、家庭で掃除や話し相手をしたりと、その活躍の場はどんどん広がっていきました。
そして今、ロボットの活躍舞台がついに「厨房」にまで到達しました。

ABB社は世界中の工場で使われる産業用ロボットの開発・提供で知られる大手企業です。
またBurgerBots社は、飲食業の人手不足や業務効率化の課題を解決することを目的に設立されたスタートアップです。
この2社が手を組んで誕生したのが、今回のロボットによるハンバーガー店舗です。
この店の厨房ではロボットが働いており、調理のほとんどの工程をロボットだけで行ってしまいます。
では、SFのようなこの店舗で、ロボットはどのようにハンバーガーを作っているのでしょうか?
1個27秒で提供するハンバーガーロボット

BurgerBotsの厨房では、ABB社のロボットアームが活用されています。
調理のほとんどの工程が自動化されており、ロボットによってハンバーガーが完成します。
注文を受けると焼きたてのパティがバンズにのせられ、QRコード付きトレイと共にコンベアを流れます。
これらがコンベアを流れる間、高速かつ適切なトッピングが行われ、最終的に注文通りのハンバーガーが出来上がります。
しかも、このプロセス全体にかかる時間は、ハンバーガー1個当たり僅か27秒だというのだから驚きです。

タマネギやトマト、レタス、調味料などの各材料のストックもリアルタイムで追跡できるため、人間のように忘れていて、「注文が入ってから材料を補充する」なんてこともなくなるでしょう。
このようなハンバーガーロボットを採用することにはさまざまな利点があります。
まず、毎回同じクオリティの味と見た目を安定して保証できるという点です。
ロボットとAIによって調理が標準化されるため、人によるミスやばらつきがありません。
さらに、人の手が触れないので、髪の毛など人間由来の異物が混入するリスクがほとんどゼロになります。
「髪の毛に関するクレーム」「バイトテロ」とも無縁なわけです。
そして、このお店で働く従業員は、体力や気力の大部分を接客に注ぐことができ、より高いサービスを提供できる可能性があります。

では、人々はどんな反応を示しているでしょうか。
ABB社が実施した調査によると、飲食業界のマネージャーの89%がロボットの導入に前向きであると答えています。
また、現場で働く従業員の73%も、ロボットによる業務自動化を受け入れています。
この結果は、ロボットが人間の味方として社会に受け入れられつつあることを示しています。
銀色のアームが動き、次々とハンバーガーを仕上げていく――。
それは、未来のレストランではなく、今この瞬間にすでに始まっている現実なのです。
参考文献
Robots are taking our jobs, leaving us with less hair in our food
https://newatlas.com/robotics/burgerbots-robot-fast-food-los-gatos/
ABB and BurgerBots unveil robotic burger-making to revolutionize fast food prep
https://new.abb.com/news/detail/125513/prsrl-abb-and-burgerbots-unveil-robotic-burger-making-to-revolutionize-fast-food-prep
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部