「やりたいこと」「やらなきゃと思っていること」が頭の中で停滞して、なかなか進まない…そんな経験は誰にでもあるものです。
たとえば、部屋の片付け、健康づくり、新しいスキルの習得、仕事や勉強のタスク。
気がつけば、「いつかやろう」と思いながら何週間、何か月も経ってしまった、という人も多いのではないでしょうか。
そんな“停滞状態”から一歩踏み出すための実践的なアドバイスをまとめたのが、認知行動療法と社会心理学の専門家であるアリス・ボイズ博士(Alice Boyes, Ph.D.)です。
博士は、「行動することで生まれる新たな可能性や、考えているだけでは気づけなかった自分の力」に注目し、それを5つのコツとして紹介しています。
目次
- 「まずは小さく始めてみる」ことの大切さ
- 「人とのつながり」と「完璧主義を手放す」ことが前進のカギ
- 「行動」で見えてくるもの
「まずは小さく始めてみる」ことの大切さ
「どこから手をつければいいのか分からない」というときでも、まずは“今、頭の中で止まっている目標を1つだけ選ぶ”ことが大切です。
そしてボイズ博士が紹介するいくつかのコツを当てはめてみましょう。
コツ① 思いついたことを「とりあえずやってみる」
多くの人は「どうせなら完璧にやりたい」「失敗したくない」と考えてしまいがちです。
でも、実際には「これ、ちょっと試してみようかな」と思ったことをまずやってみるだけで、前に進むことができます。
たとえば、「部屋を片付けなきゃ」と思ったら、本棚の一段だけ整理してみる。
「筋トレしたい」と思ったら、動画を見ながら一回だけやってみる。
そんな“小さな一歩”でも、やってみると「案外すぐできた」「意外と楽しかった」と思えることが多いのです。
たとえうまくいかなかったとしても、「この方法は合わないな」と分かれば、それだけで頭の中で悩んでいた状態から抜け出せます。
もっと良いアイデアを待ち続けるのではなく、今ある最高のアイデアを試してみましょう。
コツ② 週1回、“実行する時間”を決めてみる
次に紹介したいのは、「毎週同じ曜日・同じ時間に、その目標のために“何かを実行する”時間を確保する」という方法です。
ここで大事なのは、「考える」時間ではなく、実際に手を動かす“行動する時間”を持つことです。
たとえば、「健康のために生活習慣を見直したい」と思っているなら、毎週月曜日の夜に30分だけ“やることを決めて行動する”。
博士自身も、健康に不安があったとき、4週連続で月曜日ごとに「自宅検査キットの注文→検査→血液検査→専門家への連絡」と、少しずつ具体的な行動を進めました。
このように“週1回の実行”をあらかじめ決めておき、それを続けることで、モヤモヤした不安もだんだんと現実的な行動に変わっていきます。
「人とのつながり」と「完璧主義を手放す」ことが前進のカギ
「やろうと思ってもサボってしまう」「最初の一歩は踏み出したけど続かない」
そんなときに役立つのが、人とのつながりと、“完璧”を求めすぎないことです。
目標を素早く進めるための別のコツを見てみましょう。
コツ③ 誰かに「進捗報告」をする
博士が勧めるのは、「毎週月曜日、誰か1人だけに進捗を報告する」というシンプルな方法です。
相手は友人や家族、同僚、上司など、特別に厳しい管理役でなくても大丈夫です。
たとえば、「今週は本を5ページ読みました」「家の片付けで、キッチンだけやりました」とLINEやメールで伝えるだけ。
それだけで“来週もまた少し進めよう”という気持ちになれます。
「相手に迷惑かな?」と心配しすぎる必要もありません。
普段の会話の中で軽く伝えるだけでも、サボりづらくなる“仕組み”ができるのです。
コツ④ 「絶対うまくいく方法」を探さず、とりあえず試してみる
多くの人は、「どうせやるなら失敗したくない」「一番良い方法を見つけてからやりたい」と考えてしまいがちです。
でも博士は、「確実な方法を待つ」よりも、「実験的にやってみる」ことの方が前進につながると強調しています。
たとえば、家電が壊れたとき、「買い替えるべきか」「安い部品の交換だけで直るのか」判断に悩むかもしれません。
そんな時は、延々と調査し続けたり、悩んだりしなくてもよいかもしれません。
「部品は安いのだから、まず部品だけ交換して、もしダメだったら次の方法を考える」といった柔軟な考え方が役立ちます。
勉強や仕事も、「一部だけ新しい方法を試してみる」「失敗したらやり方を変えればいい」という気持ちで十分です。
やってみて初めて「効果的だった」と分かる場合も少なくないので、それを見逃さずに試してみましょう。
「行動」で見えてくるもの
最後のコツは、「計画を立てることより、まず“やる場所”や“現場”に身を置くこと」です。
コツ⑤ 計画より「とりあえず体験や探索」を優先する
新しいことを始めるとき、「どのやり方が一番いいのか」「本当に続けられるか」と悩みすぎてしまい、なかなか始められないことがよくあります。
でも、まずは自分をその環境に置いて、少しだけやってみるだけでも大きな変化が生まれます。
たとえば、「AIを学びたい」と思うなら、最初から目標ややり方を決めずに「10時間だけAIツールを触ってみる」ことができます。
筋トレなら、「どの運動が一番効率的か」を悩むより、ジムに10回通っていろいろな器具を試してみることも良いでしょう。
実際にやってみると、「このやり方は自分に合いそう」「案外楽しく続けられそう」といった発見が生まれ、目標に向かって前進します。
「計画」に時間をかけるより、「まずは体験してみる」こと自体が、次の行動へのスイッチになるのです。
まとめ:「行動すれば、世界も自分も変わる」
どのコツにも共通するのは、「行動してみて初めて、自分にできることや、思いがけない解決策が見えてくる」という点です。
やりたいこと、やらなきゃいけないことが頭の中で止まっているときこそ、小さな一歩でもいいので実際に動き出してみてください。
アリス・ボイズ博士の提案する5つのコツから、自分に合いそうなものを1つ選んで試してみましょう。
きっと、“停滞”が“前進”に変わる瞬間を実感できるはずです。
参考文献
5 Tips to Make Fast Progress on Any Goal
https://www.psychologytoday.com/us/blog/in-practice/202509/5-tips-to-make-fast-progress-on-any-goal
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部