都市の明かりがなかったら「地球の夜空」にはどれくらい星が見えるのか?

地球

今住んでいる場所から夜空を見上げてみてください。

さて、どれくらいの星々が目に見えるでしょうか?

もし2〜3個の明るい星や月しか見えないのなら、きっと大都会にお住まいなのでしょう。

現代の都会は照明技術の発達と普及によって、夜でも煌々と明るい街並みが広がっています。

天体観測を楽しもうと思えば、田舎か山の方まで足を運ばなければなりません。

このように、都会の夜景はそれ自体美しいとはいえ、もう一つの”天上の夜景”を覆い隠してしまいました。

その光害のレベルを表す尺度として、「ボートル・スケール(Bortle Scale)」というものがあります。

これを見れば、私たちが普段いかに夜空の星が見えていないかが分かるはずです。

目次

  • 9段階にランク付けされた「夜空の見え方」

9段階にランク付けされた「夜空の見え方」

「夜空の見え方」を9段階でランク付け
「夜空の見え方」を9段階でランク付け / Credit: Stargazer Milan – What is Bortle Scale ? & How to find the Bortle Scale of any location ?(youtube, 2022)

「ボートル・スケール」は、アメリカのアマチュア天文家ジョン・ボートル(John Bortle)氏によって2001年に発表されました。

これは簡単に言うと、場所ごとの光害レベルに応じて「夜空の見え方」を1〜9段階にランク付けしたものです。

ボートル・スケールを用いれば、光害の悪影響がどれくらいかを評価したり、どの程度の明るさの星なら肉眼で見えるかが分かります。

ちなみに、こちらの「lightpollutionmap.info」を見れば、自分が住んでいる場所のボートル・スケールが検索できます。

では実際に、各ランクにはどういった夜空の特徴があるのでしょうか?

レベル9:都心部の空

レベル9の夜空
レベル9の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

レベル9は最も光害が深刻な夜空を指し、全域に広がった光害のせいで、夜空はオレンジ色っぽく光っています。

ほとんどの星が肉眼には映らず、かろうじて月といくつかの明るい恒星が見える程度です。

このレベルだと、光害が人体の健康に影響を及ぼす可能性もあります。

たとえば、夜間に明るい光を浴びて体内時計が乱れると、睡眠障害や不安症、肥満、うつ病を発症するリスクが高まります。

肉眼での限界等級は4.0等以下です。

※ 限界等級(Naked-Eye Limiting Magnitude, NELM)とは、夜空の環境において、裸眼で見られる最も暗い星の等級を示したもの。1等星が最も明るく、数字が大きくなるほど星の光度は落ちる。

レベル8:都市部の空

レベル8の夜空
レベル8の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

このレベルでも光害は非常に強く、夜空はオレンジ色か白っぽい灰色に輝きます。

空の明るさで、手元の本や新聞の文字も楽々と読めるほどです。

レベル9よりは肉眼で見える星もちらほら増えますが、まだほとんどの天体が見えません

肉眼での限界等級は4.1〜4.5等です。

レベル7:郊外と都市部の境

レベル7の夜空
レベル7の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

光害にともなう強い光源が天上の四方八方にはっきり現れており、夜空全体がぼんやりと灰白色に染まっています。

雲は明々と照らされており、星もあまり見えません

肉眼での限界等級は4.6〜5.0等です。

レベル6:明るい郊外の空

レベル6の夜空
レベル6の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

ここでは、光害が地平線から35°までの空を灰白色に照らし出します。

雲は空のどこにあってもはっきり見て取れ、地上でも身の周りの環境が容易に見えます

先ほどに比べると、目に見える星や星座も増えますが、まだ光害の影響は強く残っています。

肉眼での限界等級は5.1〜5.5等です。

レベル5:郊外の空

レベル5の夜空
レベル5の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

光害による強い光源が全方位ではないものの、ある程度の広い範囲に存在します。

夜空の大部分にわたって、雲が背景の空そのものよりも明るく目立っています。

天の川が地平線近くで非常にかすかに見え始めますが、頭上では押し流されたように見えます。

現在、私たちのほとんどは、このレベル5の環境で生活しているそうです。

肉眼での限界等級は5.6〜6.0等です。

レベル4:田舎と郊外の境

レベル4の夜空
レベル4の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

いくつかの方角に目に見えるドーム状の光害がありますが、目に見える夜空はだいぶ暗くなります。

夜空の雲は光源のある方向では照らし出されますが、頭上では暗く見えづらいでしょう。

地上の周辺環境は距離が多少あっても目に見えますが、そろそろ懐中電灯や照明器具が必要です。

夜空に見える星々もかなり増えています。

肉眼での限界等級は6.1〜6.5等です。

レベル3:田舎の空

レベル3の夜空
レベル3の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

地平線状に光害の痕跡がかすかに残っていますが、頭上の空は真っ暗です。

雲も地平線に近いところなら見えますが、頭上やその周辺ではもはや見えません。

ここまで来ると、さそり座にあるM4、ペガスス座にあるM15、いて座にあるM22などの球状星団が肉眼で見え始めます。

肉眼での限界等級は6.6〜7.0等です。

レベル2:代表的な真に空が暗い土地

レベル2の夜空
レベル2の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

ここまで来ると、光害の影響はほぼ皆無で、燦然と輝く星々が夜空に広がります。

夜空に雲がかかっていても、明るい星空の中にポッカリ開いた暗い穴や空洞にしか見えません。

多くの球状星団やメシエ天体(銀河や星雲)が肉眼で見え、望遠鏡を持ってすれば、本格的な天体観測ができるでしょう。

肉眼での限界等級は7.1〜7.5等です。

レベル1:優れた光害フリーの土地

レベル1の夜空
レベル1の夜空 / Credit: Glacier Breeze / Bortle Scale – Measuring Sky Brightness(youtube, 2021)

そしてレベル1が、地球上で最も暗い夜空を指します。

光害の影響がまったくなく、大気光(地球の大気が放つ微弱な発光現象)も容易に見ることができます。

夜空が明るい星や銀河、球状星団で輝くのに対し、地上はほとんど真っ暗です。

木立に囲まれた草原で観測すれば、望遠鏡も手持ちの荷物、乗ってきた車や近くにいる観測仲間も見えないでしょう。

これぞ、天体観測家にとっての”涅槃(ニルヴァーナ)”と呼べる境地です。

肉眼での限界等級は7.6〜8.0等です。

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参考文献

This graphic shows how many more stars you can see under truly dark skies vs. city, suburban, and rural areas
https://www.businessinsider.com/what-dark-skies-look-like-how-many-more-stars-than-cities-suburbs

GAUGING LIGHT POLLUTION: THE BORTLE DARK-SKY SCALE(2006)
https://skyandtelescope.org/astronomy-resources/light-pollution-and-astronomy-the-bortle-dark-sky-scale/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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