地球上の生命は、過去に何度も絶滅の危機にさらされてきました。
その原因として有名なのは隕石の衝突や巨大火山の噴火です。
しかし今回、スペイン・アリカンテ大学(University of Alicante)らの最新研究で、まったく別の要因が2度の大量絶滅を引き起こしていた可能性が浮上しました。
それは「超新星爆発」です。
超新星は巨大な星が寿命を迎えて爆発する現象で、莫大なエネルギーを放出します。
この爆発が地球に影響を及ぼし、生命を大量に死滅させた可能性があるというのです。
研究の詳細は2025年3月11日付でプレプリントサーバ『arXiv』に公開されています。
目次
- 超新星爆発は「大量絶滅」を引き起こしたのか?
- 超新星爆発が「2度の大量絶滅」を引き金になっていた可能性
超新星爆発は「大量絶滅」を引き起こしたのか?

太陽の8倍以上の質量を持つ巨大な恒星は、その寿命の終わりに超新星爆発を起こします。
この爆発では、強力な放射線や宇宙線が放出され、近くの惑星に影響を及ぼす可能性があります。
では、実際に地球に影響を与えるほど近い超新星爆発はあったのでしょうか?
研究者らは、約4億4500万年前のオルドビス紀後期と、約3億7200万年前のデボン紀後期に実際に起きた大量絶滅に注目しました。
オルドビス紀の大量絶滅では、生命の大半が海に生息していた時代に、海洋無脊椎動物の60%が死滅。
一方、後期デボン紀の絶滅では、全生物種の約70%が絶滅し、当時の海や湖に生息していた魚類の種類が大きく変化しました。
これらの時期にはオゾン層の大幅な減少が起こっていたことが地質学的な証拠からわかっています。
オゾン層が破壊されると、地球表面に降り注ぐ紫外線の量が増え、生命に甚大な影響を与えます。
そこで研究チームは今回、超新星爆発がこれらの大量絶滅に関与していたかどうかを調べました。
超新星爆発が「2度の大量絶滅」を引き金になっていた可能性
オルドビス紀とデボン紀の大量絶滅はこれまで気候変動や火山活動が原因と考えられていましたが、今回の研究では、超新星爆発がオゾン層の破壊を引き起こした可能性があると判明しています。
研究チームは、太陽から1キロパーセク(約3260光年)以内にある大質量星(OB型星)の分布を調査し、過去の超新星爆発の発生率を算出しました。
OB型星は寿命が短いため、その数を調査することで、超新星爆発の頻度を推定することができます。
調査の結果、この範囲内には2万4706個のOB型星が存在し、天の川銀河全体での超新星発生率が100万年あたり15〜30回であることが分かりました。
さらに地球に影響を与えるには、超新星爆発が65光年以内で起こる必要があります。
この条件を満たす超新星の発生頻度を計算したところ、10億年あたり2.5回の割合で近傍超新星爆発が発生していることが明らかになりました。
そして、この頻度はオルドビス紀後期とデボン紀後期の大量絶滅とタイミングが一致しており、超新星爆発が生物の絶滅に関与した可能性を強く示唆されたのです。

これまで、隕石衝突が恐竜絶滅の主な原因とされてきたように、大量絶滅の原因として「宇宙からの脅威」は十分に研究されてきました。
しかし今回の研究は、超新星爆発という新たな視点から地球環境の変動を説明しようとするものであり、宇宙と生命の関係をより深く理解する手がかりとなります。
幸いなことに、現在のところ地球近傍には超新星爆発の危険がある星は存在していません。
ただし、宇宙は常に変化しており、今後数百万年の間に新たな超新星爆発が発生する可能性はゼロではありません。
今回の研究は、地球と宇宙の関係を知る上で重要な一歩であり、今後のさらなる研究が期待されます。
参考文献
Violent Supernovae Could Have Triggered at Least 2 Extinction Events
https://www.sciencealert.com/violent-supernovae-could-have-triggered-at-least-2-extinction-events
Violent supernovae ‘triggered at least two Earth extinctions,’ study suggests
https://phys.org/news/2025-03-violent-supernovae-triggered-earth-extinctions.html
元論文
A census of OB stars within 1 kpc and the star formation and core collapse supernova rates of the Milky Way
https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.08286
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部