普段、何気なく使っている職場のトイレ。
その快適さが、実は私たちの「仕事の満足度」や「生活全体の幸福感」にまで影響している。
そんな驚きの結果が、横浜市立大学と株式会社LIXILの共同研究で明らかになりました。
今回の大規模な調査では、トイレという小さな空間が働く人の心と生活を支える「縁の下の力持ち」になっていることが、データで示されたのです。
目次
- トイレ満足度→仕事満足度→生活満足度の連鎖
- どんなトイレがいいのか?男女で違うニーズ
トイレ満足度→仕事満足度→生活満足度の連鎖
研究グループは、LIXILと共同で、職場のトイレ環境とウェルビーイング(主観的幸福感)の関係について調査を行いました。
このウェブ調査には、全国の働く男女1957名が参加。
解析には、グループ間の差を明らかにする手法の一つ「変量効果モデル」が用いられ、トイレ環境が働き手の心にどのような影響を与えているのかが、定量的に明らかにされました。
注目すべきは「職場のトイレ満足度」が「仕事の満足度」に有意な影響を与えていた点です。
さらに仕事の満足度が高まると、生活全体の満足度(SWB: Subjective Well-being)も高くなる傾向が示されました。
つまり、オフィスのトイレが快適になることで、働く人の心にゆとりが生まれ、それが仕事のやりがい、さらには日々の幸福感へと波及する「連鎖」が実証されたのです。
この影響の強さは男女でほとんど差がなく、性別に関係なく「トイレ環境」が仕事の充実に重要な役割を果たすことが明らかとなりました。
一見、ささやかな設備改善が、職場全体のウェルビーイング向上の鍵となるかもしれません。
どんなトイレがいいのか?男女で違うニーズ
では、どんなトイレが「満足度の高いトイレ」なのでしょうか?
今回の調査では、男女ともに「空間のゆとり」や「臭いの低減」が共通して重視されていることが判明しました。
しかし、そのほかの要素には男女で明確な違いも見られました。
男性では「嫌なにおいがしない」が最も重視され、次に「空間のゆとり」や「洗面台の広さ」「明るさ」などの機能性や視覚的な快適さも評価されています。
一方、女性は「清潔さ」「空間のゆとり」に加えて、「手荷物スペース」や「コートを掛ける場所」「室温」など、より細やかな配慮と快適性が求められていました。
この結果は、単に「きれい」「広い」だけでは十分とは言えず、利用者それぞれのニーズに応じた設計や設備投資が、真の満足度につながることを示しています。
「全員一律」の設備改善から、「ジェンダーや個人に寄り添った」きめ細やかな対応への転換が、今後の職場づくりの新たな指針となりそうです。
参考文献
ウェルビーイングと職場のトイレ環境の関係について調査を実施 ~職場トイレの快適性が仕事の満足度ひいてはウェルビーイングにつながることを示唆~
https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251110nishii_lixil.html
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

