宇宙には、私たちの想像を超えた造形美が数多く隠れています。
そんな中、南米チリに設置された巨大な「ジェミニ南望遠鏡」が、新たな“宇宙の蝶”をとらえました。
その姿はまるで、星の終焉が生み出した壮麗なアート作品のようです。
目次
- 星の最期が描く「蝶」のシルエット
星の最期が描く「蝶」のシルエット
この“宇宙のバタフライ”の正体は「バタフライ星雲」と呼ばれる双極性星雲です。
地球からおよそ2500〜3800光年、さそり座の方向に位置し、NASAなどの研究チームが最新の観測画像を公開しました。
バタフライ星雲は、年老いた恒星がその生涯の終わりに外層のガスを宇宙空間へ放出することで生まれるものです。
中心には、かつて輝いていた星の残骸である白色矮星があり、そこから両極方向に“羽”のようなガスのローブが広がります。
まさに蝶が羽ばたくかのような優雅な姿は、星雲が双極構造を持つ「双極性星雲」であることを象徴しています。
このガスのローブは、恒星の内部で生まれたエネルギーやジェットが、星の両極方向に噴き出すことで形成されるのです。
【実際の画像がこちら】
なぜ「蝶」のような形になるのか?
双極性星雲が蝶のような形状をとる理由は、いまだに天文学者たちの興味を引き続けています。
主な仮説として、恒星が外層を吹き飛ばす際に、まわりのガスや塵、または伴星(連星)が存在することで、放出される物質が両極に偏る現象が挙げられています。
このような構造は「惑星状星雲」と呼ばれる天体で多く見られますが、双極性星雲はその中でも特に派手で対称的なローブを持つ点が特徴です。
バタフライ星雲以外にも、「ひょうたん星雲」や「砂時計星雲」など、様々な“形”の双極性星雲が発見されています。
宇宙のアートは星の一生の物語
今回撮影された「宇宙のバタフライ」は、私たちに星の一生がいかにドラマチックで美しいものであるかを教えてくれます。
遠く約3000光年の彼方から届いた光が、地球の望遠鏡によって鮮やかな姿に変わり、宇宙の壮大なアートとして私たちの心を魅了し続けているのです。
参考文献
Telescope in Chile captures stunning new picture of a cosmic butterfly
https://phys.org/news/2025-11-telescope-chile-captures-stunning-picture.html#goog_rewarded
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
