水中のマイクロプラスチックを一網打尽!投入するだけで集めて浮かせるクリーナーが登場【そのメカニズムとは?】

プラスチック

「水の中にもマイクロプラスチックが入っている」と聞くけれど、実際にはどれくらい入っているのでしょうか?

例えば、ペットボトルの水や海の水には、一杯の水に数百から数千個もの小さなプラスチックが混ざっているという調査もあります。

これだけ身近な水にプラスチックが入っているのは驚きです。何とかして取り除くことはできないのでしょうか。

ノースカロライナ州立大学の研究チーム(North Carolina State University)は、水に入れるだけでマイクロプラスチックを集めて回収できる「マイクロクリーナー」を開発しました。

研究の詳細は、2025年3月25日付の『Advanced Functional Materials』に掲載されています。

目次

  • 水の中に潜む「マイクロプラスチック」を回収する方法とは?
  • 投入するだけで、マイクロプラスチックを「集めて」水面に「浮かべる」マイクロクリーナー

水の中に潜む「マイクロプラスチック」を回収する方法とは?

マイクロプラスチックとは、直径が5ミリ以下の小さなプラスチックの破片のことです

その中には中には1ミリ未満の顕微鏡サイズのマイクロプラスチックも存在します。

これらは、プラスチック製品が海や川で割れたり風化したりしてできます。

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ドイツの河川の堆積物に含まれているマイクロプラスチック(白色のバーは1mmを示す) / Credit:Wikipedia Commons

そして魚や貝がこのプラスチックを食べてしまうと、それを食べた人間にも影響が出る可能性があります。

また、プラスチックは生き物の体に入り込むだけでなく、化学物質を吸い込んで濃縮することもあります。

近年、プラスチック製品の使用が増えるとともに、分解されにくいマイクロプラスチックの量も急増し、環境や健康への不安が深まっています。

私たちの生活に欠かせないあらゆる水に「目に見えないマイクロプラスチック」が潜んでいることを考えると、多くの人が不安に感じるのも無理はありません。

では、これらマイクロプラスチックを水の中から取り除くことは可能でしょうか。

研究チームは「水に投げ込むだけ」で浮遊するプラスチックをまとめて集め、簡単に回収できるアイテムを作ることを目指しました。

そこで誕生したのが「マイクロクリーナー」です。

次のセクションで、この新しい道具がどんな仕組みで動くのかを見ていきましょう。

投入するだけで、マイクロプラスチックを「集めて」水面に「浮かべる」マイクロクリーナー

マイクロクリーナーは、軟質樹枝状コロイド(SDC)という特殊な粒子を使っています。

この軟質樹枝状コロイド(SDC)は、カニや貝の殻から作った天然高分子キトサンを加工して作られています。

海から得られた天然素材を使用することで、このアイデアをより持続可能なものにしているのです。

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マイクロクリーナーがプラスチックを回収するメカニズム / Credit:Orlin D. Velev(North Carolina State University)et al., Advanced Functional Materials(2025)

このSDCには、マイクロプラスチックを捕まえる力がありますが、ただ水中に入れるだけでは、効率よく回収できません。

そこで研究チームは、まず、小さなSDC粒子を乾燥させ、ペレット状にまとめました。

次に、ペレットの一部に植物由来のオイルを塗布。

これは分散剤として働き、水の表面張力の違いを利用してペレットが自動で水面を動き回りつつ、少しずつ溶けるようにします。

加えてSDCには、ゼラチンでコーティングしたマグネシウム粒子も注入されており、これが「浮輪のような役割」を果たします。

マイクロプラスチックを捕まえたSDCは沈みますが、ゼラチンが水に溶けてマグネシウム粒子が顔を出すと、小さな泡が発生。

この泡がマイクロプラスチックを抱えて水面へ浮かび上がらせるのです。

このようにして作られたマイクロクリーナーは、水に投入するだけで、水中のマイクロプラスチックをからめとり、水面にまとめて浮かべてくれます。

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マイクロクリーナーを水の中に投入するだけで、マイクロプラスチックを集めて水面に浮かべる新アイテム / Credit:Orlin D. Velev(North Carolina State University)et al., Advanced Functional Materials(2025)

そのためユーザーは、浮かんできたマイクロクリーナーとプラスチックの塊をすくうだけで、簡単にプラスチックを回収できます。

大きな機械やポンプを使わずに、誰でも手軽に水中のプラスチックを取り除くことができるのです。

研究チームは今後、より一層使いやすくするための改良を進める予定です。

また、回収したマイクロクリーナーを再利用する仕組みも考案中であり、より多くのマイクロプラスチックの除去を目指しています。

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参考文献

New Water Microcleaners Self-Disperse, Capture Microplastics and Float Up for Removal
https://news.ncsu.edu/2025/03/cleaning-microplastics-in-water/

元論文

Designing of Self-Dispersing Soft Dendritic Microcleaners for Microplastics Capture and Recovery
https://doi.org/10.1002/adfm.202423494

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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