手放すべきものとは?―”人生の重り”を見極め気持ちよく捨てる方法

「なんだか生きづらい」「過去に縛られている」なんて感じているでしょうか。

そうであれば、あなたの人生には“手放すべきもの”があるのかもしれません。

米国の医療ソーシャルワーカーであり、50年の臨床経験と300本以上の執筆歴をもつボブ・タイビ(Bob Taibbi)氏は、過去に縛られる原因となる4つの“重荷”と、その手放し方を心理学的に解説しています。

目次

  • 手放すこととは何か?4つの「今の自分に不要なもの」
  • 感情にどう向き合い、どう手放すか?

手放すこととは何か?4つの「今の自分に不要なもの」

「手放す」というと、持ち物を整理する“断捨離”のようなイメージを持つ人が多いかもしれません。

しかしタイビ氏が語る「手放す」こととは、心理的に不要なものを削ぎ落とし、人生を今の自分にアップデートすることです。

私たちは、知らず知らずのうちに過去の価値観や人間関係、感情や行動パターンに縛られて生きています。

それがストレスや生きづらさの正体かもしれません。

タイビ氏は、「人が手放すべきもの」として、次の4つを挙げています。

1. 所有物

クローゼットや押入れの中、あるいは実家に残されたままの段ボール箱。

何年も見ていない写真アルバムや、再生できないレコード、使われないベビーベッド。

これらは単なるモノではなく、「いつかの自分」が大切にしていた過去の断片です。

こうしたモノを捨てられないのは、「失うこと」への恐怖、あるいは「過去の自分とのつながり」を切ることへのためらいからです。

しかし、それが今のあなたにとって不要であるなら、人生の空間と時間を奪っている可能性があります。

2. 人間関係

長年の友人との関係や、過去の恋愛相手とのつながり。

「昔は大切だったけど、今は話すことも合わないし、なんとなく続いている」という関係はないでしょうか?

こうした関係は、実は心のどこかで「義務感」や「罪悪感」で繋がっていることが多いです。

共通の話題が“思い出話”だけになったとき、その関係はすでに役目を終えているかもしれません。

3. 後悔

「もしあのとき別の選択をしていたら……」という後悔は、過去への執着の最たるものです。

タイビ氏は、後悔を手放すにはまず「『もう手放す』と自分に言い聞かせ、そう決断する」ことが重要だと述べています。

そして、「そのときの自分は最善を尽くしていた」と信じることです。

後悔がいつまでも心に残るのは、「自分を罰し続けなければならない」とどこかで感じているから。

しかし、それは事実とは異なる見方を強化し、現在の判断力を鈍らせる要因にもなります。

過去を責める物語を、学びの物語に書き換えることで、前に進むことができるのです。

4. 悪習慣

やめたいけどやめられない習慣。

それは飲酒かもしれないし、寝る前のSNSチェックかもしれません。

あるいは、会話中に人の話を遮ってしまう癖、衝動買い、時間管理の問題でしょうか。

こうした習慣は、脳に染みついた「自動運転」の行動パターンであり、意志の力だけでは変えにくいといわれます。

だからこそ、手放すポイントは「止める」ではなく、「置き換える」ことです。

新しい行動を事前に計画し、反復することで、脳に新しい神経回路を作ることが可能です。

いくらか時間が必要ですが、取り組む価値はあります。

では、こうした4つの点を自己吟味して「手放すべき」ものが分かったなら、どうすべきでしょうか?

手放した時の感情を理解し、実際に手放すためのステップに入りましょう。

感情にどう向き合い、どう手放すか?

何かを手放すとき、必ず出てくるのが「感情」です。

特に、喪失感・寂しさ・罪悪感は避けられません。

たとえば、ベビーベッドを処分することは、単なる家具の処分ではなく、「孫が生まれる未来」への期待を手放すことになるかもしれません。

旧友との関係を終わらせることは、自分の青春時代を閉じるような感覚かもしれません。

これらの感情を感じることは自然なことです。

重要なのは、その感情を正しく「ラベリング」して、自分の行動を妨げないようにすることです。

タイビ氏は、「罪悪感」には2種類あると指摘しています。

1つ目は、合理的な罪悪感です。

これは自分の価値観や信念を裏切ってしまったときに生じる、健全で自然な感情です。

こうした感情は、自分自身を省みるきっかけになったり、行動を改める動機づけにもなったりします。

そのため、無視するのではなく、しっかりと向き合うことが大切です。

2つ目は、非合理的な罪悪感です。

これは、他人の期待や「〜すべき」といった社会的ルールに従えなかったときに感じることが多いものです。

多くの場合、こうした罪悪感は自分自身の価値観とは一致していません。

そのため、「これは本当に自分の望む姿なのか?」と自分に問い直してみることが大切です。

もし一致していないと感じたならば、その感情から距離を取ることも必要になります。

そして手放すには、感情だけでなく行動の設計も必要です。

タイビ氏は、何をどう手放すかについて、事前に計画を立てることが重要だと述べています。

まず、どのような形で手放すのが自分にとって最も効果的なのかを見極めることが求められます。

思い切って一気に処分するのが向いている人もいれば、少しずつ時間をかけて減らしていく方が合う人もいます。

たとえば、関係を終わらせたい相手がいる場合、その人との関係を段階的にフェードアウトしていくのか、それとも自然と距離ができるのを待つのか、選び方は人それぞれです。

悪習慣を変えたい場合には、自分自身でチャレンジ目標を立てて取り組むのか、専門家や周囲のサポートを受けた方が効果的なのかを検討する必要があります。

大切なのは、「これを変えたい」と思ったなら、それをどう実行に移すかという具体的な道筋を描くことです。

「手放す」という行為は、「これからの自分を迎え入れるためのスペースを空ける作業」と言えるでしょう。

今、あなたの人生を曇らせているものは何ですか?それを手放す準備はできていますか?

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参考文献

What Do You Need to Let Go Of?
https://www.psychologytoday.com/us/blog/fixing-families/202508/what-do-you-need-to-let-go-of

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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