恋人に「あること」を期待すると、仲が冷めやすくなると判明

心理学

「こちらはこんなに尽くしているのに、どうして返してくれないんだろう?」

恋人とのやり取りで、そんなモヤモヤを感じたことはありませんか。

人は誰しも「フェアでいたい」という思いから、つい「自分がした分だけ、相手にも返してほしい」と考えてしまいがちです。

しかしカナダ・トロント大学(UofT)の最新研究で、「見返りを期待する」気持ちこそが、恋人同士の絆を静かに壊してしまう意外な原因になっていることが示されました。

研究の詳細は2025年5月6日付で学術誌『Personality and Social Psychology Bulletin』に掲載されています。

目次

  • 恋愛で「見返り」を求めるとどうなる?
  • 似た者同士ならうまくいく?

恋愛で「見返り」を求めるとどうなる?

恋愛関係や夫婦関係が長続きするには、「お互いに思いやる気持ち」が大切だとよく言われます。

この思いやりには2つのタイプがあることが心理学で分かっています。

ひとつは「共同志向(コミュナル・オリエンテーション)」と呼ばれるもので、これは相手の幸せや困りごとに、見返りを求めず自然に手を差し伸べるスタイルです。

例えば「疲れているみたいだから、今日は私が食事を作ってあげよう」と思えるような、無償のやさしさです。

もうひとつは「交換志向(エクスチェンジ・オリエンテーション)」という考え方。

これは「自分がこれだけやったから、あなたも同じだけ返してね」と“貸し借り”を意識する姿勢です。

友人同士で割り勘にする時などは健全な感覚かもしれませんが、恋愛関係でもこの損得勘定を持ち込みすぎると、思わぬ“落とし穴”があるようです。

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Credit: canva

実際、ドイツの7,000組以上のカップルを対象に13年にわたり追跡調査を行った最新研究では、「恋人に対して見返りを強く期待する人」ほど、年月とともに恋愛満足度が下がる傾向が見られました。

これは、たとえば「私ばかり我慢しているのに、相手は何もしてくれない」といった“損得リスト”を心の中に作るほど、関係に不満や冷めた気持ちが生じやすくなることを示しています。

一方で、この「見返りを求める姿勢」は、関係が長く続くほど自然と薄れていく傾向があることも判明しました。

つまり、多くのカップルは時間とともに“無償のやさしさ”を身につけていくのですが、逆にいつまでも損得勘定にこだわる人ほど、パートナーとの間に壁ができやすいのです。

似た者同士ならうまくいく?

では、「私も相手も同じくらい“見返りを期待するタイプ”なら、かえってうまくいくのでは?」

そんな素朴な疑問が浮かびますが、研究結果は違いました。

調査では「お互いに損得勘定が強いカップル」と「どちらかだけが強いカップル」と「両方ともあまり気にしないカップル」を比較しましたが、満足度が最も高かったのは「両方とも“見返りにこだわらないカップル」だったのです。

驚くべきことに、「似たもの同士」だからといって関係が必ずうまくいくわけではありませんでした。

むしろ、どちらか一方でも損得勘定が強い場合は、パートナーの性格に関係なく、関係の満足度が低下しやすい傾向が見られたのです。

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Credit: canva

また、この「見返り意識」は関係の初期だけでなく、年月が経っても満足度にネガティブな影響を与え続けることが分かっています。

さらに「不満がたまったから損得勘定が強くなる」のではなく、「損得勘定が強いから不満が生まれる」――つまり原因と結果が逆であることも長期調査によって確認されました。

この研究結果は、「どちらか一方が頑張ればいい」わけでも、「似ていればうまくいく」わけでもなく、「お互いが自然に思いやる気持ち」を持つことこそが、恋愛関係を長続きさせるポイントだと示しています。

恋人やパートナーに「こんなにしてあげたのに」とつい思ってしまうことは、誰にでもあるかもしれません。

ですが、心の中で“貸し借りリスト”を作り続けてしまうと、それが気づかぬうちに温かさや信頼をむしばんでしまうかもしれません。

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参考文献

“Love doesn’t thrive on ledgers”: Keeping score in relationships foreshadows decline, study finds
https://www.psypost.org/love-doesnt-thrive-on-ledgers-keeping-score-in-relationships-foreshadows-decline-study-finds/

元論文

“Pay Me Back”: Testing the Implications of Long-Term Changes and Partner Similarity in Exchange Orientation Within Intimate Relationships
https://doi.org/10.1177/01461672251330700

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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