「突然、心臓が痛くなる」「ある日、急に手足が動かなくなる」
そんな心臓発作や脳卒中は、誰にとっても他人事ではありません。
実は最近、アメリカと韓国在住の900万人以上を対象にした韓国・延世大学校(Yonsei University)らの大規模調査から、こうした重大な発作が起こる前には、ほぼ必ず4つの危険サインのいずれかが潜んでいることが明らかになりました。
その確率は、なんと99%。
つまり、ほとんどの人の心臓発作や脳卒中は、この「4つの危険因子」が先に現れていたのです。
では、その4つとは一体何なのでしょうか。
研究の詳細は2025年9月29日付で科学雑誌『Journal of the American College of Cardiology』に掲載されています。
目次
- 心臓と脳の健康を脅かす「4つの危険因子」とは?
- なぜ「リスクゼロ発作」はほとんど存在しないのか?
心臓と脳の健康を脅かす「4つの危険因子」とは?
研究で特に注目された4つの危険因子とは、「高血圧」「高コレステロール」「高血糖」、そして「喫煙(過去も含む)」です。
たとえば血圧が高い状態(高血圧)は、血管に常に強い圧力がかかるため、心臓や脳の血管が傷つきやすくなり、発作や脳卒中の引き金となります。
実際、今回の調査では、心臓発作や脳卒中などを起こした人の93%以上が、その前に高血圧の状態だったことがわかりました。
また、「高コレステロール」や「高血糖」も見逃せません。
コレステロールや血糖値が高いと、血管の壁が傷つきやすくなったり、血液がドロドロになって詰まりやすくなったりします。
これが続くと、知らず知らずのうちに心臓や脳の血管がダメージを受けて、ある日突然“発作”として現れるのです。
さらに、タバコを吸っていた人(現在も過去も)は、そうでない人に比べて血管の病気を起こしやすい傾向が知られています。
今回の研究でも、心臓や脳の病気を起こした人の多くが、過去または現在、喫煙習慣を持っていました。
つまり、これら4つの危険因子のいずれか、もしくは複数が重なることで、私たちの心臓や脳は知らないうちに「危険ゾーン」に近づいていくのです。
なぜ「リスクゼロ発作」はほとんど存在しないのか?
「何の前ぶれもなく健康な人が心臓発作や脳卒中になることが増えている」という話題を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし今回の大規模調査では、ほぼすべての発作や脳卒中の前に、何らかの危険因子が存在していたことがはっきり示されました。
特に注目すべきなのは、心血管イベントのリスクが最も低いと言われていた60歳未満の女性です。
このグループでも、心臓発作や脳卒中の95%以上が4つの危険因子のいずれかと結びついていたのです。
なぜ「リスクゼロ」発作がほとんどないのでしょうか?
その理由は、診断基準より少し低い値や、見逃されがちな軽度の異常でも、体にはすでに負担がかかっていることが多いからです。
たとえば、まだ「高血圧」とは診断されないレベルでも、血圧が高めの状態が続けば、体はじわじわとダメージを受けていきます。
このため、発作を予防するためには、今からでも4つの危険因子をしっかり管理し、できるだけ早く健康な状態に戻すことが大切です。
たとえ症状がなくても、「自分は大丈夫」と油断せず、日々の健康チェックや生活習慣の見直しが、未来の大きな安心につながるのです。
参考文献
Huge Study Links 99% of Heart Attacks And Strokes With Four Risk Factors
https://www.sciencealert.com/huge-study-links-99-of-heart-attacks-and-strokes-with-four-risk-factors
元論文
Very High Prevalence of Nonoptimally Controlled Traditional Risk Factors at the Onset of Cardiovascular Disease
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.07.014
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部