女性はお酒を飲むと惚れっぽくなり、男性は冷める傾向がある

アルコール

良い雰囲気のバーやレストランで、お酒を飲みながらデートを楽しんでいた時は相手のことが魅力的に見えたのに、お酒を飲まずにデートしてみたら急に気持ちが冷めてしまった

恋愛でみられるこのようなシチュエーションは、人間に限った話ではないかもしれません。

アメリカにあるスクリプス研究所(The Scripps Research Institute)のアリソン氏ら(Allison M. J. Anacker)の研究では、一夫一妻制で知られているプレーリーハタネズミにアルコールを飲ませると、メスのオスへの嗜好性が高まることが示されています。

このことは、アルコールがつがい形成に影響を及ぼす可能性があることを示しています。

本結果は、2014年4月に『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載されています。

目次

  • お酒とコミュニケーション
  • アルコールを摂取すると、メスは惚れっぽくなり、オスは冷める

お酒とコミュニケーション

Credit:canva

SNSや出会い系アプリの普及に伴って、初対面の人と1対1で飲みに行く機会が一般的になっています。

初対面のデートでは、男性、女性共にデート先にお酒を飲む場を選ぶことが多いようです。

初対面の人と会う時に、緊張を和らげたい、場を和ませたいという思いから、お酒の力に頼る人も多いのではないでしょうか。

お酒に含まれるアルコールは、適量であれば気持ちをリラックスさせたり、逆に高揚させることで、コミュニケーションを円滑にする効果があります。

多くの場合、初対面のデートで好印象を感じた相手とは、2回目のデートに進みます。

一方で、2回目のデートでお酒を飲まずに会ってみたら、盛り上がっていた気持ちが急に冷めてしまう、ということがあります。

実際にそのシチュエーションに遭遇しても、相手の何がいけなかったのか言葉で具体的に説明するのは難しいことが多いでしょう。

実はその現象には、アルコールが関係しているかもしれません。

アルコールを摂取すると、メスは惚れっぽくなり、オスは冷める

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スクリプス研究所のアリソン氏らの研究チームでは、北米原産の毛の長い小型げっ歯類であるプレーリーハタネズミを使って、アルコールがつがい形成に影響を及ぼすのかを検証しました。

プレーリーハタネズミは、一夫一妻制のパートナー様式を持つことから、男女の社会的な絆のメカニズムを明らかにするためのモデルとして一般的に使用されています。

本研究では、アルコールを10%混ぜた飲み水のある環境で、プレーリーハタネズミのオスとメスを24時間一緒に過ごさせ、つがい形成、交尾、運動、攻撃などの行動に影響があるかを検証しています。

その結果、アルコールを摂取したメスのプレーリーハタネズミは、オスへの嗜好性が増強したのに対し、オスのプレーリーハタネズミではむしろ嗜好性が下がることがわかりました。

このことは、アルコール摂取によりメスは異性のことが魅力的に見え惚れっぽくなるのに対し、オスは逆に冷静になる可能性があることを示唆しています。

また、アルコール摂取後の交配行動、運動量、攻撃行動など、その他の行動に変化があるかも検証しましたが、これらに影響はありませんでした。

アルコールはオスでは緊張をほぐす作用がある

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アルコール摂取時のメスとオスのつがい形成行動の違いには、脳のニューロペプチドY(NPY)という神経伝達物質が関与しているようです。

NPYは、抗不安薬に似た作用を持つことが知られています。

アルコールを摂取したプレーリーハタネズミのオスでは、脳のNPYの量が一時的に増加していることが観察されました。

この現象はオスでのみ見られ、メスではみられませんでした。

つまり、適量のアルコール摂取は、男性では緊張をほぐしてコミュニケーションを取りやすくするような効果があることになります。

この結果は、デートで相手を冷静に見極めたい場合、女性はアルコールを飲まない方が良い、男性は普段通りの自分を見せたいのであれば、アルコールを飲まない方が良い、といった解釈にもつながるかもしれません。

いずれにしても、アルコールの影響には性差があることを理解して、効果的にデートに利用する方がよさそうです。

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元論文

The Prairie Vole (Microtus ochrogaster): An Animal Model for Behavioral Neuroendocrine Research on Pair Bonding
https://doi.org/10.1093/ilar.45.1.35
Drinking alcohol has sex-dependent effects on pair bond formation in prairie voles
https://doi.org/10.1073/pnas.1320879111

ライター

高橋 実可子: 大学では農学を専攻し、産業動物の研究をしていました。 現在は医療系の企業でメディカルライターとして働いています。 動物が好きで、猫3匹、小鳥1匹と生活しています。 生き物の身体の仕組み、感情や行動の変化に興味があり、本サイトでは医療と生物の記事を担当します。

編集者

ナゾロジー 編集部

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