様々な分野で活躍するドローンの最大のネックは、「飛行時間」と「バッテリーの限界」です。
どんなに高性能な機体でも、バッテリーが切れるなら、空にとどまることはできません。
「もしバッテリーに頼らず、太陽光だけでドローンが飛び続けられたら?」
そんな夢のような挑戦を現実にしたのが、南アフリカのエンジニア、ルーク・ベル氏と父親のマイク・ベル氏です。
彼らはYouTubeチャンネル「Luke Maximo Bell」で、自作ドローンの数々を公開しています。
今回はなんと「バッテリーを一切使わず、太陽光発電だけで浮かび続けるドローン」を飛行させ、その様子を動画で公開しました。
目次
- 「バッテリーなしの太陽光ドローン」の難しさ
- バッテリーなしドローンが太陽光だけの飛行に成功!
「バッテリーなしの太陽光ドローン」の難しさ
今やドローンは、空撮、測量、農業、防災、物流など、幅広い分野で活躍しています。
しかし、共通してつきまとうのが「バッテリー問題」です。
高性能なリチウムイオンバッテリーを搭載しても、数十分から1時間程度で電池切れ。
長距離飛行や連続運用には、複数バッテリーの持ち歩きや頻繁な交換、あるいは予備機の準備が不可欠となっています。
こうした限界を突破する技術の一つとして、これまでにも「ソーラードローン」の研究開発が進められてきました。
とはいえ、従来のソーラードローンのアイデアは、「太陽光で発電した電力をバッテリーに一旦ため、その電力で飛行する」というものがほとんどです。
つまり「バッテリーありき」の設計であり、バッテリーの重量が大きな壁となってしまいます。
一方、今回ベル親子が開発したドローンは、「バッテリーが一切なし」という極めて斬新な設計です。
「太陽光で生まれた電力でそのまま飛行する」というアイデア自体はシンプルですが、これでも技術的なハードルは非常に高いです。
ドローン(特にクアッドコプター型)は、その場で静止(ホバリング)するだけでも多くの電力を消費します。
また、太陽光発電には天候や太陽の角度といった不安定要素がつきまとい、発電量も刻々と変化します。
「バッテリーなしのドローン」を実現させるには、発電量を高めつつ、システム全体の無駄を極限まで削り必要があるのです。
だからこそ今回の挑戦は、「バッテリーがなければドローンは飛べない」という“常識”に、見事に一石を投じました。
次項では、実際に飛行している様子を確認できます。
バッテリーなしドローンが太陽光だけの飛行に成功!
では、実際にどのような工夫がなされたのでしょうか。
機体は超軽量のカーボンファイバー製Xフレームで組まれ、Antigravity製の高効率モーターと、T-Motor社の18インチカーボンプロペラが使われています。
この「軽量化」と「パワー効率」の追求が、まず第一のポイントです。
そして最大の特徴は、機体の上に載せられた27枚の超軽量ソーラーパネルです。
パネルはシリーズ接続で最大約150Wの出力を実現していますが、そのぶん非常に壊れやすく、テスト中に家猫が乗ってパネルが割れるという一幕もあったそうです。
パネルの取り付けや配線も、少しでも重量を減らすため、徹底的にシンプルな構造になっています。
そして、いよいよ実地テスト。
機体にはバッテリーを一切搭載せず、太陽光発電だけで離陸が試みられました。
その結果、晴天の野外で、リアルタイム発電のみを動力源としたドローンは、見事に浮上し、その場でホバリング飛行を成功させました。
YouTubeコメント欄でも、「まさかクアッドコプターで実現するとは思わなかった」「完全リアルタイム発電だけで飛ぶのは世界初だ」といった驚きと称賛の声が多数寄せられました。
また、「フレーム補強には釣り糸が使えそう」「スマホ用フィルムでパネルを補強できるのでは」など、多数の実践的アドバイスや改良案も集まっています。
一方で、太陽が隠れるだけで即失速する「安全性」の問題や、壊れやすいパネル、突発的な電力変動への備え(最小限のキャパシタや緊急着陸用バッファ)など、課題も多いのが現実です。
とはいえ、太陽光だけで飛ぶ「バッテリーなしドローン」の実現は、ドローン工学の歴史に残る快挙です。
空に飛び続ける機体の未来像に、ひとつ新しい道が示されました。
今後も改良と挑戦が続けば、「太陽が照っている時にだけ飛ぶドローン」だけでなく、「バッテリー切れの心配なく空を舞うドローン」も夢ではないのかもしれません。
参考文献
Battery-free drone designed to fly as long as the sun shines
https://newatlas.com/drones/luke-mike-bell-solar-powered-drone/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

