地球上で最も長く姿を変えずに残り続けている生物種とは?

動物

地球上で最初の生命は約38億年前に生まれたとされています。

それから10億年以上の歳月をかけて単細胞生物から多細胞生物が誕生し、さらに約5億4000万年前のカンブリア爆発によって、現在見られる動物の祖先たちが出そろいました。

以来、すべての動物は進化と絶滅を繰り返し、その中から無数の種が生まれては消えていき、今日へと至ります。

では、この絶えず変転する世界の中で、最も長く姿を変えずに残り続けている種は何なのでしょう?

それはどれくらい前から存在しているのでしょうか?

目次

  • 最も長く生き残っている動物種「ビッグ3」
  • 単一の種は数百万年以上は生きられない?

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最も長く生き残っている動物種「ビッグ3」

まず、最も長く生きている動物の筆頭に挙げられるのは、カブトエビです。

2010年11月に、ギネスワールドレコードは”現生する最古の生物(Oldest living creature)”の称号を「ヨーロッパカブトエビ(学名:Triops cancriformis)」に授与しています。

ヨーロッパカブトエビ
ヨーロッパカブトエビ / Credit: canva

記録では、三畳紀(約2億5190万年~2億130万年前)にまで遡る化石が見つかっており、それと比較すると、今日まで全く姿を変えていないことが分かっています。

カブトエビは水たまりの底を掘るのに適したスコップのようなボディをしており、このデザインがうまく機能しているために、2億年以上の間この形を保っているのです。

では、ヨーロッパカブトエビが三畳紀から何も変わっていないかというとそうではありません。

実はここ十数年のDNA研究で、ヨーロッパカブトエは微々たる進化を続けており、人の目では確認できないようなアップデートを繰り返していることが明らかになっています。

2013年に科学雑誌『PeerJ』に発表された研究では、現存するヨーロッパカブトエビは、三畳紀にいた祖先の子孫に過ぎず、少なくとも2500万年前より以前には出現していないことが分かったのです。

それでも、たった一つの種が変わらず2500万年も生き延びているのは驚くべきことでしょう。

続いての候補は、おそらく”生きた化石(living fossils)”と呼ばれる中で最も有名なシーラカンスです。

シーラカンスの保存標本
シーラカンスの保存標本 / Credit: ja.wikipedia

シーラカンスは1800年代に初めて化石が発見された古代魚で、その後の調査により、約3億6000万〜4億年前に出現し、約6600万年前に恐竜たちと共に絶滅したと考えられていました。

ところが1938年に、南アフリカ沖で漁師たちが生きたシーラカンスを引き上げたことで、生き残っていたことが判明したのです。

しかし彼らも化石上に見られる祖先とは違っています。

2010年に発表されたDNA研究では、今日存在するシーラカンスは約2000万〜3000万年前に出現した種であることが示されました。

そしてビッグ3の最後を飾るのは、カブトガニです。

カブトガニ
カブトガニ / Credit: canva

カブトエビとよく混同されがちですが、両者は分類されるグループが違います。

「節足動物」という大枠では一緒ですが、その中でカブトエビはエビやカニと同じ「甲殻類」に分類され、カブトガニはクモやサソリと同じ「鋏角(きょうかく)類」に分類されます。

カブトガニ自体の起源は約4億8000万年前に遡りますが、こちらも科学雑誌『Molecular Phylogenetics and Evolution』に掲載された2012年の研究で、現存する最古のカブトガニは約2500万年前に生まれた種であることが判明しています。

よって専門家らは、単一の種として最も長く生きているのは、約2000万〜3000万年前に出現した「今日の」カブトエビやシーラカンス、カブトガニと見ています。

種より大きなグループとしてなら他にも、クラゲやオウムガイ、ハイギョやチョウザメ、カゲロウやトンボなど、数億年前に起源を持つ現生生物はたくさんいるでしょう。

しかし、これらはどれも長い歴史の中で進化を繰り返し、最初と同じ種としては残っていないのです。

単一の種は数百万年以上は生きられない?

英ハル大学(University of Hull)の進化生物学者であるアフリカ・ゴメス(Africa Gómez)氏は「単一の種が数百万年以上も生きながらえているという証拠はほとんどない」と話します。

ゴメス氏によると、あらゆる種の生存期間は、誕生から種分化するか絶滅するまでに平均50万〜300万年ほどであるという。

先のビッグ3のように、2000万年以上も一つの種が変わらず存続するケースは極めて稀です。

なぜなら、地球の気候変動や生息環境、食物ネットワークの変化に応じて、それぞれの生物種も常にアップデートしなければならないからです。

地球の変化の中では何者も不変ではいられない
地球の変化の中では何者も不変ではいられない / Credit: canva

たとえば、気候変動によってある種の生物が消えると、それを餌としていた生物種は獲物を変えるか、他の場所に移住する必要に迫られます。

その適応の中で、種の遺伝子はどうしても変異せざるを得ないのです。

周囲のあらゆるものが盛衰を繰り返すのであれば、ある特定の種のみがまったく変わらずにいることは不可能でしょう。

ただその中で、進化のスピードが非常に遅い種だけが、”生きた化石”の称号を得られるのです。

豪シャーク湾のストロマトライト
豪シャーク湾のストロマトライト / Credit: ja.wikipedia

余談ですが、”現存する最古の生命体”として、ストロマトライトの存在がしばしば言及されます。

ストロマトライトは、単細胞のシアノバクテリア(藍藻)が寄り集まってできた集合体であり、約23億年前に誕生し、葉緑素を使って光合成をすることで、地球に初めて酸素をもたらしました。

世界各地で化石が見つかっていますが、オーストラリアのシャーク湾には今もストロマトライトが現生しているという。

カブトガニやシーラカンスのような動物とは違いますが、これほど古い生命体が今も生きているのは驚きでしょう。

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参考文献

Which animal species has existed the longest?
https://www.livescience.com/oldest-surviving-species

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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