ダイエットを続けていると、ある時点で体重が減りにくくなる「停滞期」に直面することがあります。
多くのダイエッターにとって、この停滞期は挫折の原因となりがちです。
しかし、新しい研究で、この停滞期を打破するかもしれない新たな発見がありました。
南デンマーク大学(SDU)の研究チームは、肝臓細胞における「PLVAP」遺伝子が、糖と脂肪の燃焼に対するスイッチのような役割を持っていることが明らかになったのです。
この発見を応用するなら、「肝臓を騙して」停滞期を無くすことができるかもしれません。
この研究の詳細は、2025年4月1日付の『Cell Metabolism』誌に掲載されました。
目次
- 停滞期を打破する秘訣は、「PLVAP遺伝子」にあり!?
- PLVAP遺伝子を操作してマウスの肝臓を「騙す」
停滞期を打破する秘訣は、「PLVAP遺伝子」にあり!?
ダイエットを続けていると、ある時点で体重が減りにくくなる「停滞期」に直面することがあります。
この現象は、体が飢餓状態に適応し、エネルギー消費を抑えることで脂肪をできるだけ温存しようとするために起こります。
その結果、食事を減らし続けても、なかなか体重が落ちないという状態に陥ってしまいます。

では、ダイエッターにとって大きな問題となるこの現象に、どのように対処できるでしょうか。
南デンマーク大学の研究は、私たちに希望を示すかもしれません。
ラヴンスケア博士のチームは、もともと代謝における肝臓の役割を調べていました。
その際、肝臓の細胞に関与している「PLVAP」遺伝子が、燃焼の鍵を握ることを偶然発見しました。
これまで、PLVAP遺伝子は内皮細胞の機能だけに関連すると考えられてきました。
しかしこの研究では、PLVAP遺伝子が、糖と脂肪の燃焼に対するスイッチような役割を持っていると分かりました。
もしPLVAPの働きを調整できれば、ダイエット停滞期の原因となる代謝の低下を防ぐことができるかもしれません。
PLVAP遺伝子を操作してマウスの肝臓を「騙す」
研究チームは、マウスを用いた実験を行い、PLVAP遺伝子の役割を詳しく調べました。
通常、断食(摂取カロリーの減少)により、PLVAPは炭水化物を燃焼するのではなく、脂肪酸を燃焼するよう肝臓に働きかけます。
しかし、PLVAPを欠損させたマウスでは、この切り替えが停止し、肝臓は変化なく炭水化物(糖)を消費し続けます。
これは、代謝が活発な状態を意味しており、減量に不可欠な「燃料を使い果たす」よう促していることになります。

しかも、この調整による悪影響は今のところ見られておらず、肝臓に「いつも通り」だと信じ込ませる方がダイエットには効果的であることを示しています。
つまり、PLVAP遺伝子を調整すれば、肝臓(代謝)を騙して停滞期を打破できるかもしれないのです。
この研究結果が応用されれば、ダイエットにおける停滞期の克服だけでなく、肥満や代謝障害の治療にも役立つかもしれません。
とはいえ、現段階ではマウス実験が行われただけに過ぎず、この効果を人間に当てはめるまでには遠い道のりがあります。
それでも、「肝臓を騙して」停滞期を打ち破る、そんな新しい解決策が生まれるかもしれないことを考えると、今後に期待したくなります。
参考文献
New Mouse Study: How to Trick the Body’s Metabolism
https://www.sdu.dk/en/om-sdu/fakulteterne/naturvidenskab/nyheder/fedt-stofskifte-kim-ravnskjaer
元論文
Hepatic stellate cells regulate liver fatty acid utilization via plasmalemma vesicle-associated protein
https://doi.org/10.1016/j.cmet.2025.01.022
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部