最後に大笑いしたのは、いつだったでしょうか?
大人になると、仕事や家庭、さまざまな責任を背負い、自然と「笑うこと」が少なくなっていきます。
けれども、笑いは単なる気晴らしではなく、科学的にも私たちの心と体を支える「大切な生活習慣」だと言われています。
米ウースター大学(The College of Wooster)の心理学者 Gill Harrop 博士は、心理学の研究や自身の知見を元に「人生に笑いを増やす5つの方法」を紹介しています。
目次
- なぜ大人は笑わなくなるのか? 大人にも笑いが必要な理由とは?
- “笑い”は鍛えられる! 今日からできる5つの習慣
なぜ大人は笑わなくなるのか? 大人にも笑いが必要な理由とは?
子どもの頃は、どんな小さなことでも面白がって、自然にケラケラ笑っていたかもしれません。
しかし大人になると、どうしても笑いが減ってしまいます。
この背景にはいくつかの理由が隠れています。
たとえば、私たちが「成熟している」「真面目だ」と見られることが重要だと感じてしまい、
つい“笑い”や“遊び心”を後回しにしてしまうことがあります。
責任や忙しさに追われるなかで、自然と笑う機会が減ってしまうことも少なくありません。
また、「何を面白いと感じるか」は人それぞれ異なります。
ある心理学の研究によると、「ユーモア(humor)そのもの」と「個人のユーモアのセンス(sense of humor)」を区別しています。
前者は出来事や物事自体の面白さを指し、後者はそれをどれだけ楽しめるか、という個人の資質です。
だからこそ、同じ「ユーモアのセンス」を持つ人が近くにいるかどうかで、笑う頻度は大きく変化します。
自分と「同じ笑いのツボ」をもっていて、笑いを共有できる人と出会うのは、実はとても幸運なことなのです。
周囲との関係や場の雰囲気にも大きく影響されるため、大人になるほど、笑いが「つい後回し」になってしまうのは自然なことかもしれません。
ですが、だからといって“笑うことの重要性”が小さくなるわけではありません。
笑いの効能についても、多くの科学的な研究がなされています。
例えば、笑いはエンドルフィンやドーパミンなどの脳内物質を分泌し、ストレスを軽減したり、筋肉の緊張をほぐしたり、自律神経を整えたりする効果があります。
さらに、Dunbar ら(2021)の研究では、「人と一緒に笑うこと」で社会的な絆が強くなり、孤独感やストレスへの耐性が高まることが示されました。
つまり、笑いは私たちが健やかに生きていくための“心のビタミン”でもあるのです。
では、大人になった私たちの人生に、どうやって笑いを増やすことができるでしょうか。
“笑い”は鍛えられる! 今日からできる5つの習慣
「最近、心から笑ったことがない……」そんな人も心配はいりません。
笑いの力は使わないと鈍ることはあっても、なくなってしまうことはありません。
ちょっと意識して練習すれば、またすぐに戻ってきます。
Gill Harrop 博士が紹介する「人生に笑いを増やす5つの方法」を見てみましょう。
1. 意識的にユーモアを探しに行く
笑いは受け身で待つものではなく、「自分から取りに行く」ことが大切です。
コメディ番組やお笑いライブ、面白いポッドキャスト、友人との飲み会など、笑いやすい環境に自分を置いてみましょう。
自分の“笑いのツボ”がまだ分からない場合は、いろんなジャンルの笑いに触れてみるのもおすすめです。
また、誰かと一緒に過ごすだけでも自然に笑いが増えることが多いので、身近な人と過ごす時間を大切にしてみてください。
2. 日常の小さな出来事に“笑い”を見つける
人生は大事件や大爆笑の連続ではありません。
むしろ、日々の中にある小さなハプニングやちょっとした不条理、ペットのイタズラ、家族のドジなど、気づけば笑える瞬間はあふれています。
たとえば、愛犬が仕事用のストラップを盗んだため、庭じゅうを走り回らなければいけないときなどです。
「つまらない」「イライラする」と受け流すのではなく、「これはネタになるかも」と少し視点を変えるだけで、日常がもっと楽しく感じられるはずです。
3. バカバカしさや遊び心を恥じない
大人になると「くだらないことをするのは恥ずかしい」と感じがちですが、実はこうした遊び心こそが笑いの原動力です。
もちろん場面を選ぶことは大切ですが、ちょっとしたおふざけやジョークで自分も周囲もリラックスできる空気を作ることができます。
たとえば家で思いきり変なダンスを踊ってみたり、友人同士で子どもの頃の遊びを再現してみたり、時には真面目な自分を手放してみましょう。
4. 他人と「一緒に」笑う
誰かと一緒に笑うと、不思議と距離が縮まり、心が明るくなります。
以前の研究では「一緒に笑った人たちは、お互いをより親しい存在と感じる」と実証されています。
また、Provine & Fischer(1989)の研究でも「一人よりも他人といる方が30倍も笑う」と示しています。
この効果を得るには、「相手を笑いものにする」のではなく、お互いに楽しめるユーモアで「一緒に」笑うことが大切です。
仲間や家族、職場の同僚と“共通の笑い”を探してみましょう。
5. つらい時こそ、笑いを忘れずに
「人生が順調になったら笑おう」と思いがちですが、実は笑いは困難な時こそ必要です。
辛い現実が消えるわけではありませんが、ちょっとしたユーモアや“笑える話”が、心のバッファとなって自分を守ってくれます。
暗いニュースが多い時代ですが、だからこそ「苦しい中にも“笑い”を持ち込む」ことを忘れないでください。
これら「笑いを増やす5つの方法」を日常生活で意識してみるのはどうでしょうか。
大人になっても、私たちの中に“笑いの力”は眠っています。
今日からほんの少し意識を変えるだけで、人生はもっと楽しく、そして私たち自身が「もっと強く」なれるはずです。
参考文献
5 Ways to Add More Laughter to Your Life
https://www.psychologytoday.com/us/blog/bystander-intervention-in-action/202510/5-ways-to-add-more-laughter-to-your-life
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部