不眠症を逆に悪化させてしまう5つの習慣

カフェイン

よく眠れた翌朝は、とても気分がいいものです。

科学的にも、高品質な睡眠は心臓や脳の健康、免疫機能、そして感情の安定にも役立つことが示されています。

そのため、多くの人が睡眠を改善しようと努力しており、「睡眠衛生」と呼ばれる習慣づくりが勧められています。

睡眠衛生とは、良質な睡眠を促す生活習慣や環境づくりのことです。

これらは健康な人にとっては理にかなったアドバイスとなりますが、一方で、不眠に悩む人にとっては逆効果になる場合もあり、眠れない状態を解決するどころか悪化させてしまうこともあるのです。

ここでは、不眠に悩む人にとってマイナスに働く可能性がある5つの睡眠習慣を紹介します。

目次

  • 不眠が悪化するかもしれない習慣とは?
  • 「しっかり寝なきゃ」と気にしすぎるのもNG?

不眠が悪化するかもしれない習慣とは?

その1:ベッドにいる時間を増やすこと

眠れないとき、「早く寝てみよう」「朝はもっと長く寝よう」と考えるのは自然なことです。

しかし、この作戦は逆効果になる場合が多くあります。

起きたままベッドにいる時間が長くなると、脳は「ベッド=眠る場所」という関連付けを弱め、「ベッド=イライラして目が覚めている場所」という認識を強めてしまうのです。

その代わりに、ベッドにいる時間を少し制限してみてください。

普段より遅く寝て、毎朝同じ時間に起きるようにすると「睡眠欲求(眠気を促す体の自然な力)」が強まり、ベッドを「眠る合図」として再び認識しやすくなります。

その2:画面を完全に避けること

よく「寝る前にスマホやパソコンを見ないように」と言われます。

ブルーライトが「メラトニン」という睡眠を調整するホルモンを抑えてしまうからです。

ですが、このアドバイスは少し単純化されすぎているかもしれません。

実際には、不眠に悩む人は「眠れないから仕方なくスマホを見る」ことが多いのです。

真っ暗な中で眠れずにじっとしていると、不安や考えすぎが加速して、ますます眠れなくなることもあります。

画面を完全に禁止するのではなく、上手に活用することを考えましょう。

落ち着いた内容のポッドキャストやドキュメンタリーを夜間モードで流すなど、頭をリラックスさせる手段として使うこともできます。

「しっかり寝なきゃ」と気にしすぎるのもNG?

画像
Credit: canva

その3:カフェインを完全に断つこと

カフェインは眠気をもたらす神経伝達物質「アデノシン」の働きをブロックします。

しかし、カフェインの代謝スピードは人によって大きく異なります。

中には、朝のコーヒーを飲むことで寝起きのだるさを和らげ、日中の活動が活発になり、その結果として夜の睡眠リズムが整いやすくなる人もいます。

一方で、カフェインに敏感な人は午後や夜に摂ると眠れなくなることもあるため、遅い時間の摂取を控えることは有効です。

ただし、必ずしも完全に断つ必要はなく、自分の体がどう反応するかを理解することが大切です。

その4:「睡眠を最適化しよう」と頑張りすぎること

近年、ウェアラブル端末や特別なマットレス、眠りを促すアロマスプレーなどを含む「睡眠経済」は、世界で4000億ポンド(約80兆円)規模の市場に成長しています。

これらの製品は役立つこともありますが、「完璧に眠らなければならない」というプレッシャーを生み、かえって眠れなくなる不安症状を招くこともあります。

睡眠は本来、自律的に体が調整する働きであり、消化や血圧と同じように意識的に完全にコントロールできるものではありません。

睡眠にこだわりすぎることで逆に眠れなくなるパラドックス(逆説的な現象)が起きるのです。

ときには「気にしすぎない」ことが、かえって自然な眠りを呼び戻す最良の方法になる場合もあります。

その5:毎晩同じ時間だけ眠ろうとすること

健康的な睡眠は「1日〇時間」と決まっているわけではありません。

私たちの眠りはストレス、体調、年齢、環境、子育てなどの責任によって日々変化するものです。

例えば、赤ちゃんは数時間ごとに授乳が必要であり、母親の睡眠パターンもそれに合わせて柔軟に変化します。

こうした柔軟性こそが、進化の中で生き延びるための重要な特性でした。

毎晩同じ時間眠ろうと期待することは、かえって現実的ではなく不安を高めることがあります。

眠りの質は日によって揺れ動くものであり、良い日もあればそうでない日もあるのが普通です。

現代人は睡眠不足になりがちで、不眠症を訴える人も多いでしょう。

それを解決するために、いろんな睡眠促進方法を試すこともあるはずです。

しかしきっちりとした睡眠ルールを立てて、それに従うよりも、「眠くなったら寝る、眠くないなら無理に寝ようとしない」ことが逆に適切な睡眠を促してくれるのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

These 5 Common Sleep Tips Can Make Insomnia Worse, Expert Warns
https://www.sciencealert.com/these-5-common-sleep-tips-can-make-insomnia-worse-expert-warns

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

タイトルとURLをコピーしました