不快な「片頭痛の前兆」から解放してくれる頭痛薬が明らかに!

片頭痛で日々悩んでいる人にとって、片頭痛の前兆は「またか」と苦しめ、がっかりさせるもの。

でもその前兆の症状すら軽減できる頭痛薬が判明しました。

英国のキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)を中心とした研究チームは、ウブロゲパント(ubrogepant)という薬剤が片頭痛の前兆の症状を効果的に軽減できる可能性を実験で示しました。

この研究結果は2025年5月12日付の『Nature Medicine』誌で公開されています。

目次

  • 血管系への影響が少ない片頭痛の新薬「ゲパント系」とは?
  • 「首や肩のこわばり」「ギザギザの光」片頭痛の前兆とは?
  • ウブロゲパントは片頭痛の前兆にも効果があると判明

血管系への影響が少ない片頭痛の新薬「ゲパント系」とは?

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片頭痛患者を助けてくれる頭痛薬 / Credit:Canva

頭痛は日常的に多くの人を悩ませる症状であり、中でも「片頭痛」は非常に辛く、生活の質を大きく低下させることが知られています。

片頭痛は、ズキズキと脈打つ激しい痛みを特徴とし、しばしば吐き気や光・音への過敏さを伴います。

その発作は数時間から数日にわたり、人によっては日常生活が著しく制限されることも少なくありません。

片頭痛の薬として主流だったのはトリプタン系薬剤ですが、血管収縮作用を伴うため心血管疾患を持つ患者には使いづらいという問題がありました。

そこで近年、新たなタイプの薬剤である「ゲパント系薬剤」が登場しました。

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ゲパント系薬剤は、片頭痛の原因の1つであるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを直接ブロックします。

CGRPは血管の拡張と炎症反応を引き起こすことで片頭痛を生じさせますが、ゲパント系薬剤はこれをブロックして片頭痛を抑えることができるのです。

しかも血管収縮を起こさないため、トリプタン系薬剤に比べて心血管系への影響は小さいと考えられています。

そして、ゲパント系薬剤の1つに、「ウブロゲパント(ubrogepant)」があり、今回の研究ではこの薬剤に焦点が当てられました。

「首や肩のこわばり」「ギザギザの光」片頭痛の前兆とは?

片頭痛の発作には、実際に痛みが現れる前に「前兆」が現れることがあります。

よくある症状には疲労感、集中力の低下、光や音への過敏さ、首や肩のこわばりがあります。

また視野の中心あるいは周辺から、キラキラとした光のようなものが現れ、その範囲が徐々に大きくなったりします。

さらには、感覚が鈍くなったり言葉が出なくなったりする場合もあります。

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不快な片頭痛の前兆 / Credit:Canva

このような前兆には個人差がありますが、しばらく続くことが多く、その後ズキズキとした片頭痛が生じます。

これらの前兆は、頭痛が起きることを知らせる「サイン」として認識されており、患者たちを大いに悩ませてきました。

しかし、これまで前兆の軽減に焦点を当てた治療法はほとんどありませんでした。

たとえ、前兆の期間に服用するよう作られた薬であっても、その目的は、前兆における症状を軽減ではなく、片頭痛の予防でした。

前兆の症状に対する薬剤の効果は、十分に検証されてこなかったのです。

そこで今回、研究チームはウブロゲパントが前兆が生じた段階で服用された場合、どの程度その症状を軽減できるかを検証することにしました。

研究には片頭痛の前兆を自覚できる18歳から75歳の患者438名が参加し、患者自身が前兆を感じた時点で、薬を100mg服用する方法で試験が行われました。

ちなみに、いずれの参加者も前兆が生じた時点で、「頭痛が1〜6時間以内に来る」と確信していました。

この研究で参加者は、一定期間を空けて、偽薬(プラセボ)とウブロゲパントの両方を試しています。

では、結果はどうなったでしょうか。

ウブロゲパントは片頭痛の前兆にも効果があると判明

実験の結果、ウブロゲパントを服用した患者群では、多くの前兆の症状が偽薬群に比べて有意に改善しました。

具体的には、服用後1時間で集中力が改善し、2時間後には光過敏の症状改善が報告されました。

また3時間後には、倦怠感、首の痛みやこわばりが改善。

さらに4時間後には、めまいや音過敏の症状の改善しました。

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ウブロゲパントは片頭痛の前兆の症状を軽減してくれる / Credit:Canva

これらの結果は、ウブロゲパントを含むCGRPを対象にした薬剤が、片頭痛だけでなく、片頭痛の前兆として現れる症状の治療にも効果的であることを示唆しています。

もちろん今回の研究だけでは、ウブロゲパントの可能性を示しただけに過ぎません。

今後の追加研究によって、より詳細な点まで調査される必要があります。

それでも今回の研究結果は、片頭痛で悩む多くの人にとって明るい未来を予感させる重要な一歩となりました。

片頭痛の前兆が現れたなら、「またか」とがっかりする前に、その症状を軽減できる薬が無いか確かめることができるでしょう。

※2025年5月時点では、ウブロゲパント(商品名:Ubrelvy)は日本において未承認です。

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参考文献

Migraine drug can also help with symptoms that occur before the actual headache begins
https://medicalxpress.com/news/2025-05-migraine-drug-symptoms-actual-headache.html

This Drug Reduces Symptoms Before a Migraine Strikes, Study Shows
https://www.sciencealert.com/this-drug-reduces-symptoms-before-a-migraine-strikes-study-shows

元論文

Ubrogepant for the treatment of migraine prodromal symptoms: an exploratory analysis from the randomized phase 3 PRODROME trial
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03679-7

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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