ブルーベリーの青色は「構造色」だった

リンゴ

みなさんの目に、ブルーベリーは何色に見えているでしょうか。

そう、名前にもある通り、ブルーベリーは「青色」に見えますよね。

ところがブルーベリーに青い色素は含まれておらず、果実を搾って得られるのはダークレッド(暗色系の赤色)の色素だけです。

では、どうして青色に見えるのでしょうか?

英ブリストル大学(University of Bristol)の2024年研究によると、ブルーベリーを含む実が青く見える果実の皮表面を構成するワックス層が青い光を散乱させる微細構造でできていることが明らかになったのです。

つまり、ブルーベリーの青はいわゆる構造色で、皮自体に青の色素は存在せず、表面の構造により青色が生み出されていたようです。

研究の詳細は2024年2月7日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

目次

  • ブルーベリーの皮に青色色素は存在しない
  • ブルーベリーの青色は「構造色」だった!

ブルーベリーの皮に青色色素は存在しない

よく知られているように、私たちが見ている物の色はその物体が反射する光の色によって決まります。

例えば、リンゴは赤色の光を反射し、それが目に入ってくるので赤色に見えるのです。

またリンゴの皮を調べると、ちゃんと赤色色素である「アントシアニン」が含まれており、これが赤色の光を反射することでリンゴの表面が赤く見えています。

ではブルーベリーはどうでしょう?

見た目に青色に見えているということは、皮の中に青い光を反射する色素が含まれているはずです。

ところが、ブルーベリーの皮に青い色素は存在しません。

研究主任のロックス・ミドルトン(Rox Middleton)氏も「ブルーベリーの青色は果実を搾って得られる果汁の中には存在せず、いくらつぶしても抽出できないのです」 と話します。

ブルーベリーの内側の表皮細胞から実際に得られるのは赤色の色素。Cはブルーベリー表面を拡大してみたものだがやはり赤色をしている。
ブルーベリーの内側の表皮細胞から実際に得られるのは赤色の色素。Cはブルーベリー表面を拡大してみたものだがやはり赤色をしている。 / Credit: ROX MIDDLETON et al., Science Advances(2024)

ブルーベリーが持つ本当の色はダークレッド(暗色系の赤色)の色素であり、実際にリンゴの皮にもあるアントシアニンが含まれています。

ではどうしてブルーベリーは青色に見えるのか。

ミドルトン氏らはその謎を明らかにすべく、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてブルーベリーの皮を調べてみました。

ブルーベリーの青色は「構造色」だった!

ブルーベリーの他に、ブドウやプラムなどの青い実は表面に白い粉のようなものが付いています。

これはブルーム(またはワックスブルーム)と呼ばれていて植物の表面を守る保護バリアのようなものです。

ブルーベリーなどの皮表面は、このツルツルした薄いワックス層のブルームで覆われており、水を弾く撥水(はっすい)性を持っています。

ワックス層の撥水性はブルーベリーの自己洗浄として機能しており、水滴が染み込まずに表面を滑り落ちることで、汚れや虫、病原菌を洗い流してくれるのです。

チームは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、このワックス層に電子ビームを照射し、表面の構造を調べてみました。

その結果、ブルーベリーのワックス層は、青い光と紫外線(UV)の波長を特異的に反射・散乱させる微細構造を持っていることが判明したのです。

この構造によって青色色素はなくても、私たちの目には青く見えるようになっていました。

さらにこれと同じ特性は、ブルーベルーの他に似たような質感の表皮を持つプラムやスピノサスモモ、ジュニパーベリーなどの皮にも見られています。

本来は固有の色素を持たないにも関わらず、表面の微細構造が特定の波長の光を反射することで特定の色を持つように見える作用を構造色と呼びます。

構造色としてよく目にする例は、CDの裏面やシャボン玉、モルフォ蝶の翅(はね)などがあります。

これらは表面の微細構造によって特定の波長の光が反射・散乱することで鮮やかな色を生じさせており、そこに色素は存在しません。そのためモルフォ蝶はひっくり返すと何も色がついていないことがわかります。

鮮やかなモルフォ蝶。しかしひっくり返すと色がないことがわかる
鮮やかなモルフォ蝶。しかしひっくり返すと色がないことがわかる / Credit:Bio-Inspired Bright Structurally Colored Colloidal Amorphous Array Enhanced

ブルーベリーなども同様に表面に青色がついているわけではなく、皮表面の微細な構造が青色を生んでいたのです。

そこでチームはブルーベリーなど表面にワックス層を持つ青い果実から薄いワックス層だけを除去し、四角いカードの表面上に再結晶させてみました。すると、果実の表面と同じ青色光と紫外線を反射するコーティングが得られたのです。

上:マホニア アクイフォリウムの皮の微細構造と光の反射率、下:再結晶化させたコーティングの微細構造と光の反射率
上:マホニア アクイフォリウムの皮の微細構造と光の反射率、下:再結晶化させたコーティングの微細構造と光の反射率 / Credit: ROX MIDDLETON et al., Science Advances(2024)

このコーティングは厚さ約2ミクロンという極薄ですが、研究チームは新たな青色反射塗料として応用できる可能性があると期待しています。

加えて、紫外線も反射できることから食材を保護するためのコーティング(食品包装フィルム)にも利用できるかもしれません。

ミドルトン氏は今回の結果を受けて、こう話しました。

「私たちが日常的に食べている人気の果物に、未知の着色メカニズムがあるという事実は本当に興味深い発見です。

またブルーベリーのワックス層から誰も見たことのない新しい青色コーティングを作り、その色を再現できたことはさらに驚くべきことです。

この天然ワックスのあらゆる機能性を人工的に加工した材料に組み込むことができれば、まさに夢のような出来事となるでしょう」

ブルーベリーの色の謎から始まったこの研究は、新たな工業的価値を生み出しそうです。

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参考文献

Scientists reveal why blueberries are blue
https://bristol.ac.uk/news/2024/february-/blueberries.html

Scientists Uncover How Blueberries Appear Blue
https://www.technologynetworks.com/tn/news/scientists-uncover-how-blueberries-appear-blue-383605

Scientists have finally discovered what makes blueberries blue
https://interestingengineering.com/science/scientists-discover-what-makes-blueberries-blue

元論文

Self-assembled, disordered structural color from fruit wax bloom
https://www.science.org/doi/full/10.1126/sciadv.adk4219

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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